2026.01.08

はぴテク相談室:学生時代の幸福度は、新社会人1年目にどんな影響があるのか?

相談者

来月から社会人になるんですが、正直、仕事に馴染めるか不安で…。大学生活はそこそこ楽しかったと思うんですけど、就職したら自分らしく働けるのかな、って心配です。

はぴテクさん
はぴテクさん

そのモヤモヤ、すごくよく分かります!実はその「自分らしく働けるかどうか」という感覚、研究の世界では『ジョブ・アイデンティティ』と呼ばれていて、大阪公立大学の畑野准教授らが日本の新卒社会人397人を1年以上追跡した研究で詳しく調べられているんです。

相談者

ジョブ・アイデンティティ…?なんですかそれ?

はぴテクさん
はぴテクさん

簡単に言うと、「仕事を通して自分らしさを感じられている状態」のことです。たとえば『この仕事、自分に合ってる』『ここに自分の価値観が活かせてる』と感じられるかどうか、みたいなイメージです。社会人になりたての時期は、このジョブ・アイデンティティをどう育てていくかがとても大事な時期だと研究でも言われています。

相談者

なるほど。でも私、大学時代めちゃくちゃ幸せ!ってほどでもなかったんですよね。それって社会人になったときに不利になるんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

その点も研究が面白いことを示していて、大学時代の人生満足度(幸福度)が高かった人は、就職後にジョブ・アイデンティティ、特に『仕事へのコミットメント(仕事に価値や目標を見出せている感覚)』と『仕事を深く探索する姿勢』の両方が高い傾向があると分かりました。ただ、興味深いのは幸福度が中くらいだった人で、コミットメントが時間とともに低下する傾向が見られたという点なんです。

相談者

中くらいだと下がっちゃうんですか?それ、ちょっと怖いですね…。

はぴテクさん
はぴテクさん

怖く感じますよね。ただここで大事なのは、これはあくまで『傾向』であって、中くらいの人が必ず下がると決まっているわけではありません。この研究は相関関係を見たもので、『幸福度が低いから仕事がうまくいかない』という因果関係を証明しているわけではないんです。むしろ『そういう傾向がある』と知っておくことで、意識的に動けますよね。

相談者

確かに。じゃあ、性格面ではどうなんですか?私、わりと心配性で不安になりやすいタイプで…。

はぴテクさん
はぴテクさん

研究ではビッグファイブという性格の5つの側面も調べていて、その中で『神経症傾向』——つまり不安を感じやすい・心配性という特性——が高い人は、仕事を辞めたいと感じる気持ち(コミットメントの再考)と関連しやすいという結果が出ています。ただこれも傾向の話で、『不安を感じやすい性格だから辞めたくなる』と断言できるものではありませんし、対象者の約8割が女性という点も踏まえて受け取るといいと思います。

相談者

じゃあ、外向的な人は有利なんですか?私は割とどちらでもないタイプで…。

はぴテクさん
はぴテクさん

外向性が高い人はコミットメントのレベルが高い傾向があると示されていました。ただ、外向的じゃないからダメということでは全然なくて、協調性が高い人は『仕事を深く探索する姿勢の変化』に別の影響がみられるなど、それぞれの性格に異なるパターンがあるんです。一つの性格特性だけで就職後が決まるわけじゃないですよ。

相談者

少し安心しました。実際のところ、配属されてからが一番きつくなるって聞くんですが、そこはどうなんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

研究でも、就職後に『仕事を深く探索する姿勢』が時間の経過とともに有意に低下するという結果が出ています。現場でも研修が終わって配属された後に幸福度が下がりやすい、という報告がありますし、ある意味それは多くの新社会人が通る道とも言えます。『自分だけがしんどいわけじゃない』と知っておくだけでも、少し気持ちが楽になりませんか?

相談者

そう言ってもらえると確かに…。じゃあ今から何か意識できることはありますか?

はぴテクさん
はぴテクさん

研究から読み取れることとして、大学時代の人生満足度が高い人がジョブ・アイデンティティを育てやすい傾向があるということは、『今の生活の中で満足感を感じる経験を積むこと』が一つのヒントになりそうです。ただし、これはあくまで関連性の話なので、魔法の処方箋ではありません。社会人1年目は自分の仕事について『これって自分に合っているかな?』と丁寧に向き合う時間を持つこと、それ自体がジョブ・アイデンティティを育てる探索プロセスだと思いますよ。

相談者

なんか、不安だけじゃなくて楽しみな気持ちも出てきました。研究ってこういうふうに使えるんですね。ありがとうございます!

はぴテクさん
はぴテクさん

素敵な気持ちの変化ですね!研究はあくまで『傾向』を教えてくれるものですが、自分を知るヒントとして活用できますよね。新しいステージ、ぜひ自分のペースで歩んでみてください。応援しています!

■ 今日のまとめ

  • 大学時代の人生満足度(幸福度)が高い人は、就職1年目のジョブ・アイデンティティ(仕事を通じた自分らしさ・コミットメント)が高い傾向があると示されています。
  • 就職後、『仕事を深く探索する姿勢』は時間とともに低下しやすく、特に幸福度が中程度の人はコミットメントが下がる傾向も見られました。ただしこれは傾向であり、全員に当てはまるわけではありません。
  • 外向性・協調性・神経症傾向などの性格特性もジョブ・アイデンティティの発達と関連しており、一つの特性だけで結果が決まるわけではなく、それぞれ異なるパターンがあります。

■ 出典・注意事項

  • 【出典】Hatano, K., Hihara, S., Sugimura, K., Nakahara, J., Ikeda, M., Tanaka, S., & Negru-Subtirica, O. (2025). The Big Five, Life Satisfaction, and Job Identity Development: A Longitudinal Study on the School-to-Work Transition. Journal of Adolescence. https://doi.org/10.1002/jad.70079

  • 【紹介記事】大阪公立大学 研究ニュース「大学生から社会人への移行期の環境変化を追跡調査」(2026/1/7) https://www.omu.ac.jp/info/research_news/entry-21871.html

  • 【注意事項①・相関と因果】本研究は縦断的な調査(追跡調査)に基づくものですが、性格・幸福度とジョブ・アイデンティティの『関連』を示したものであり、『AだからBになる』という因果関係を証明するものではありません。

  • 【注意事項②・対象集団の限界】参加者397名のうち約79.3%が女性であり、日本の特定年齢層(平均22歳)を対象にした調査です。結果をすべての人に一般化するには限界があります。

  • 【注意事項③・脱落バイアスの可能性】追跡調査のため、途中で回答をやめた人のデータは含まれておらず、実態とズレが生じる可能性があります。

投稿者によるコメント・補足(1件)
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研究自体の紹介はこちら😊
学生時代の幸福度は、新社会人1年目にどんな影響があるのか?
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2026-01-08-1767909605/

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