はぴテク相談室:「ゾーン」を見据えた感性教育プログラムの開発 ― スタンフォード大学における取り
最近、仕事でも趣味でも「なんか没頭できない」「集中が続かない」って感じることが多くて…。スポーツをしていたころは、気づいたら時間が経っていてすごく充実していた感覚があったんですけど、あれってなんだったんでしょう?
それ、すごくよく分かります!その「気づいたら時間が経って充実してた」感覚、もしかしたら「ゾーン」や「フロー」と呼ばれる状態に近いかもしれません。今日はちょうどそのゾーンについて研究した論文をご紹介できますよ。スタンフォード大学での取り組みを参考に、日本の大学でも実践された「ゾーンに入りやすくするための感性教育」についての研究なんです。
ゾーンってよく聞きますけど、フローとは違うんですか?
この研究では、フローはチクセントミハイ博士が提唱した「没頭して充実している状態」として知られていて、ゾーンはそれとよく似た、あるいはさらに深い集中・没入の状態として位置づけられています。ゾーンに入ると感性がとても研ぎ澄まされると言われていて、アスリートが「何も考えずに体が動いた」とか「視野がクリアになった」と語るような体験がまさにそれです。
社会人の自分には関係ない話かな…とも思うんですが。
いえいえ!この研究では「スポーツ以外の分野に関心を持つ人々や、感性に関心を持つ社会人にも適用できる可能性がある」と明記されているんです。元々はアスリート向けに開発されたワークなんですが、感性を磨いたり深い集中状態に近づくための考え方は、幅広い場面で使えそうなんですよね。
具体的にどんなことをするんですか?
6つのワークが紹介されています。まず「感性を磨く準備」として2つ。①「Feel Work(感じるワーク)」は、感性の受け取り・処理・発信を意識的に使うワークです。たとえば華道家の假屋崎省吾さんの生け花を見て、自分が感じたことをそのまま言葉にする、といった実践です。②「オノマトペワーク」は、擬音語・擬態語を使って自分の動きや感覚を表現するもの。「スパッと決まる」「ふわっと力を抜く」みたいな言葉を自分で作って、パフォーマンスを上げる試みです。
オノマトペって面白いですね!言葉にするだけで変わるんですか?
この研究では、オノマトペはスポーツのパフォーマンス向上に効果が期待される「感性語」として紹介されています。自分の狙いに合ったオノマトペを自分で作って使う、というのがポイントで、人から与えられた言葉より自分で作った言葉の方が、自分の感覚にフィットしやすいというわけです。ただ、これが「必ず効果が出る」という因果関係が証明されているわけではなく、あくまで「期待される」という表現が使われています。
残り4つも教えてください!
はい!ゾーンに特化した4つです。③「マーフィー重松式瞑想法」は、スタンフォード大学の心理学の授業でも実践されていたマインドフルネス瞑想です。学生アスリートも受けていたというもの。④「ゾーンの物語(Zone Narrative)」は、トップアスリートがゾーンに入っていたときの映像を見たり、体験談を聞いたりすることで、自分もゾーンに入りやすくなることがある、というアプローチです。⑤「十牛図ワーク」は禅の教えである「十牛図」を使って、自分や著名アスリートの成長ストーリーを構築するもの。⑥「Happy Project」は、デザインシンキングという手法を学んで、周りの人の幸福度を高める取り組みを考える、というプロジェクトです。
「他人の幸福度を高める」のがゾーンや自分の幸せとつながるって、意外でした。
そうですよね、面白いポイントですよね。Happy Projectは「利他性を発揮すること」をゴールにしていて、誰かのために何かを考えることが自己実現にもつながる、という考え方が背景にあります。直接「だからゾーンに入れる」という因果は研究では示されていませんが、幸福感や自己実現の感覚を育む一部として位置づけられているワークです。
自分でもやってみるとしたら、どれから始めるといいですかね?
日常でとっつきやすいのは「オノマトペワーク」か「Feel Work」かなと思います。たとえばオノマトペなら、仕事でプレゼンするとき「スパッと伝える」「ゆったり落ち着いて話す」みたいに、自分で言葉を作ってみるのがおすすめです。Feel Workも、好きな音楽や好きな景色を見て「今どう感じているか」をあえて言葉にしてみるだけでできます。感性を意識的に使う練習として、まずは小さく始められそうじゃないですか?
なんかちょっとやってみようって気になってきました!ゾーン体験した人の話を聞くのもよさそうだなと思いました。
いいですね!「ゾーンの物語」ワークみたいに、体験談を聞くことで自分の中でイメージが育まれていく感覚、あるかもしれませんよ。スポーツ選手のインタビュー動画を見るだけでも近い感覚が得られそうです。ゾーンはいきなり狙って入れるものではないかもしれませんが、こうした感性を磨く積み重ねが「入りやすい状態」を作っていく、というのがこの研究の伝えたいことだと思います。焦らず、楽しみながら試してみてください!
■ 今日のまとめ
- 「ゾーン」はフローに近い深い没入状態で、感性が研ぎ澄まされることが特徴。この状態に近づきやすくするための感性教育が研究されている。
- 6つのワーク(Feel Work・オノマトペ・瞑想・ゾーン体験談・十牛図・Happy Project)はアスリート向けに開発されたが、社会人にも適用できる可能性があると論文に明記されている。
- まずは「自分の感覚をオノマトペで表現する」「感じたことを言葉にする」など小さな実践から始めることで、日常の中でも感性を磨くきっかけを作れる。
■ 出典・注意事項
- 出典:「ゾーン」を見据えた感性教育プログラムの開発―スタンフォード大学における取り組みを参考にして―, 人間健康学研究 : Journal for the study of health and well-being, 2023, 関西大学学術リポジトリ (https://kansai-u.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=24215&item_no=1&attribute_id=19&file_no=1)
- 注意事項①:本研究は教育プログラムの実践報告であり、各ワークの効果について厳密な因果関係が証明された実験研究ではありません。「効果が期待される」という表現が使われている箇所があり、相関・因果を区別してお読みください。
- 注意事項②:対象は主に日本国内の大学生・学生アスリートであり、社会人や他の年齢層への一般化については「可能性がある」と示唆されるにとどまっています。
- 注意事項③:スタンフォード大学での実践を参考にしていますが、本論文が報告しているのはあくまで日本国内の大学での実践内容です。
研究自体の紹介はこちら😊
「ゾーン」を見据えた感性教育プログラムの開発 ― スタンフォード大学における取り
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2023-05-21-1684710005/