2025.10.15

はぴテク相談室:幸せにつながる'美の体験'はどのくらい?

相談者

最近、なんだか毎日が単調で、感動することが少なくなった気がしています。仕事に追われて、きれいな夕焼けを見ても「ああ、きれいだな」で終わってしまって…。もっと豊かな気持ちで生きたいんですけど、どうすればいいんでしょう?

はぴテクさん
はぴテクさん

その感覚、すごく大切なことに気づいていると思いますよ。実はハーバード大学のティム・ロマス先生たちが、世界22カ国・13万人以上を対象にした大規模な研究で、「美しいものを日常的に体験すること」が幸せと深く結びついていることを示しているんです。自然や音楽、芸術などに「美しい」と感じる体験――これを研究では『美の体験』と呼んでいます。この体験が幸福の重要な要素だということが、大規模なデータで確認されているんですよ。

相談者

へえ!美しさを感じることって、幸せと本当につながっているんですね。でも、私って日本に住んでいるんですけど、日本人ってそもそも美を感じにくいとか聞いたことがあって…。

はぴテクさん
はぴテクさん

実は、この研究で日本は調査した22カ国の中で最下位だったんです。日常的に美を体験していると答えた人が44%と、世界平均よりかなり低い結果でした。一番高い南アフリカやナイジェリアは90%なので、その差は2倍以上。でも、これは「日本人は美を感じる能力がない」ということではなくて、文化的・社会的な背景が大きく影響していると研究者たちは考えているんです。

相談者

2倍以上も差があるんですか…。南アフリカやナイジェリアって、物質的には豊かとは言えない国もありますよね。なぜそんなに高いんでしょう?

はぴテクさん
はぴテクさん

そこがこの研究の面白いところで、研究者たちは「物質的な豊かさよりも、文化的な枠組みの方が大切かもしれない」と考察しています。たとえば、共同体の絆の中で美を感じる文化や、困難な状況の中でも美を見出す『抵抗の美学』とでも言うような文化的土台があるのかもしれない、と。つまり、お金や豊かさよりも、どういう目で世界を見るか、という枠組みが関係しているようなんです。

相談者

なるほど…。じゃあ、どういう人が美を感じやすいんですか?何か特徴はあるんでしょうか?

はぴテクさん
はぴテクさん

この研究では、美の体験と関連が強かった要因が複数見つかっています。最も影響が大きかったのは「教育年数」で、16年以上の教育を受けた人は83%が美を体験していると答えたのに対し、8年未満では70%でした。次に「年齢」で、全体的には若いほど美を感じやすい傾向がありました。また「宗教活動への参加」も関連が見られ、週1回以上参加する人は82%と高かった。ただし、これらはあくまで関連が見られた、という話で、原因と結果の関係が証明されたわけではないんですよ。

相談者

教育や宗教が関係しているんですね。でも、私は今さら学校に通い直せないし…。ちょっと複雑な気持ちです。あと、年齢とともに美を感じにくくなるって、なんか悲しいですね。

はぴテクさん
はぴテクさん

その点について、研究データにとても興味深い例外があるんです。全体傾向では「若いほど美を感じやすい」のですが、日本だけは80歳以上の方が最も美を体験していると答えたグループだったんです!しかも日本では女性が男性より14%も高いという特徴もあった。つまり「こういう人が美を感じやすい」というパターンは国によって全く違っていて、普遍的な法則ではないんです。日本にいる私たちにとって、年齢は必ずしも障壁ではないかもしれませんよ。

相談者

それは意外でびっくりしました!日本では高齢の方が美を感じやすいんですね。あと、さっきちょっと気になったんですが、幼少期の困難な体験が美への感受性に関係するという話もあるんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

はい、研究の中で驚くべき発見として報告されているのですが、幼少期に虐待を経験した人の方がわずかに美の体験率が高かったという結果が出ています(リスク比1.03)。研究者たちは「これは虐待が良いということでは決してない」と強調しながら、苦しみの経験が人を世界に対してよりオープンで敏感にする可能性があるのかもしれない、と考察しています。美の体験には複雑なルーツがある、ということですね。ただ、この関連は非常に小さく、解釈には慎重さが必要です。

相談者

複雑な背景があるんですね…。では、普通に日常生活を送っている私が、もっと美を感じるために何かできることはありますか?

はぴテクさん
はぴテクさん

この研究が示す大事なメッセージの一つが、「美を感じることは特別な才能や贅沢品ではなく、誰にでも開かれた幸福の要素だ」ということです。美術館に行くことも一つの選択肢ですが、研究者たちは身近な自然や日常の中の美しさに目を向けることの大切さにも触れています。夕焼けを「ああ、きれいだな」で終わらせるのではなく、少し立ち止まって意識的に感じる時間を作る、というのは一つのアプローチかもしれません。ただし、「こうすれば必ず美を感じられる」という万能の方法は研究でも示されていなくて、文化や個人によって違うことも覚えておいてくださいね。

相談者

「誰にでも開かれた幸福の要素」という言葉、なんか気持ちが楽になりました。特別なことをしなくても、日常の中で意識を向けるだけでいいかもしれないんですね。今日は本当にためになりました!

はぴテクさん
はぴテクさん

お役に立てて良かったです!この研究はまだプレプリント(査読前の論文)の段階で、今後さらに検証が必要な部分もあります。でも、13万人以上という大規模データが「美を感じることは人間の豊かさに関係している」ということを示してくれているのは確かです。毎日の小さな美しさに、少しだけ意識を向けてみてください。近所の植物の色、好きな音楽の一節、空の変化…。それだけでも、日々の感覚が変わってくるかもしれませんよ。

■ 今日のまとめ

  • 世界22カ国・13万人の研究で、日常的に「美の体験」をすることは幸福と関連していることが示された。日本は調査国の中で最下位(44%)だったが、これは文化的・社会的背景が大きく影響していると考えられている。
  • 美の体験と関連が強い要因として「教育年数」「年齢」「宗教活動への参加」が挙げられたが、これらはあくまで関連であり、原因と結果の関係ではない。また、日本では全体傾向と逆に高齢者や女性の方が美を感じやすいなど、パターンは国によって大きく異なる。
  • 美を感じることは特別な才能や贅沢品ではなく、誰にでも開かれた幸福の要素だとこの研究は示している。自然・音楽・芸術など身近なものに意識的に目を向けることが、日常の豊かさにつながる可能性がある。

■ 出典・注意事項

  • 出典:Tim Lomas et al.(ハーバード大学)「22カ国における美の経験の普及と予測因子:グローバル繁栄研究における美的評価の国際的評価」2025年10月10日、プレプリント(査読前)。https://www.researchsquare.com/article/rs-7697881/v1

  • 注意事項①:本研究はプレプリント(査読前の論文)であり、今後内容が修正される可能性があります。

  • 注意事項②:報告されている数値(教育・年齢・宗教活動と美の体験の関係)はあくまで「関連(相関)」であり、原因と結果の因果関係が証明されたものではありません。

  • 注意事項③:対象はGFSの第1波「中間」調査に参加した22カ国131,487人であり、各国の参加者構成や調査方法の違いが結果に影響している可能性があります。国別の結果を解釈する際は注意が必要です。

  • 注意事項④:幼少期の虐待と美の体験の関連(リスク比1.03)は非常に小さく、また虐待を肯定するものでは全くありません。研究者自身も慎重な解釈を求めています。

投稿者によるコメント・補足(1件)
コメント 1

研究自体の紹介はこちら😊
幸せにつながる'美の体験'はどのくらい?
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2025-10-15-1760570641/

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