2025.10.15

幸せにつながる'美の体験'はどのくらい?

世界22カ国・13万人の大規模研究、GFSより

GFSでは幸せにつながる要素として、

「美しいものを日常的に体験していますか?(自然、音楽、芸術など)」

を聞いています。

そんな美の体験の国際比較とその因子について、ハーバード大学のティムロマス先生の最新研究。

■国別比較

世界で最も美を感じている人が多い国は南アフリカとナイジェリア(90%)

逆に最も低いのは日本(44%)と香港(47%)

なんと2倍以上の差。そして日本は最下位・・・

確かに日本は美術館や博物館への来館率とかで、客観的にも低いので、納得な部分も。

ちなみに他の国は、オーストラリア88%、アメリカ86%、中国83%、ドイツ84%、イギリス73%、インド62%など。

■何が美の体験を増やすのか?

●最も影響が大きかったのは「教育」

・教育年数8年未満:70%

・教育年数9-15年:77%

・教育年数16年以上:83%

●次に「年齢」

・18-24歳:80%

・30代:75%

・60-70代:73%

→若いほど美を感じやすい。「知覚の新鮮さ」が関係?

●「宗教活動」も影響

・週1回以上参加:82%

・参加しない:73%

●意外な発見:幼少期の困難が美への感受性を高める?

驚いたのは、幼少期に虐待を経験した人の方が、わずかに美の体験率が高かったこと(リスク比1.03)。

もちろん虐待は決して良いことではないけれど、

苦難が感情や知覚への感受性を高め、

それが美への開放性につながる可能性があるらしい。

ナイジェリアや南アフリカで美を感じる率が高いのも、

物質的な豊かさがなくても、

「抵抗の美学」「共同体の絆の中の美」という文化的枠組みで

美を感じる力が育まれている可能性がある。

●一方で、パターンは国によって全然違う

面白いのは、全体の傾向が個別の国では当てはまらないこと。

例えば:

・教育年数が長いほど高い→でもアメリカでは逆

・若いほど高い→でも日本では80歳以上が最も高い

・性別は差なし→でも日本では女性が14%高い

つまり「こうすれば美を感じられる」というのは

文化によって全く異なる。

この研究で面白いのは、

「美を感じることは贅沢品ではなく、誰でもできる幸福の重要な要素」だと大規模データで示したこと。

そして、物質的な豊かさよりも、

教育や文化的な枠組みが重要だということ。

あと、年齢とともに美への感受性が下がるというのは、

ちょっと寂しいですが、意識することで防げそうですね。

もっと日常の美を感じる習慣を大切にしたいなと思わされる研究でした😊

もちろん美術館や博物館も良いですし、庭とか近隣の自然とかから美しさを感じられる時間を増やしたいですね😍

ーーー

22カ国における美の経験の普及と予測因子:グローバル繁栄研究における美的評価の国際的評価

The prevalence and predictors of experiences ofbeauty in 22 countries: An international assessmentof aesthetic appreciation in the Global FlourishingStudy

Tim Lomas(ハーバード大学) et al.

2025/10/10,preprint

https://www.researchsquare.com/article/rs-7697881/v1

美の経験(EoB)は、多くの人にとって幸福の重要な側面です。しかし、そのような経験に関連する要因については、特に国境を越えたものについては、比較的理解が進んでいません。その点で、私たちはこのトピックに関するこれまでで最も包括的な国際的な研究を紹介します。これは、世界繁栄調査(GFS)の項目「あなたは、美しいと思うものを定期的に経験していますか?これには、肉体的な美しさ、または音楽、芸術、自然に見られるような抽象的な美しさが含まれます。」を評価しています。GFSは、22か国で繁栄の予測因子を調査する(最低5年間)パネル調査で、この項目は131,487人の参加者で構成される第1波の「中間」調査に含まれています。繁栄に関連する結果を測定することに加えて、GFSの摂取質問票では、人口統計学的要因が4つ、幼少期が8つ、両方のカテゴリに関連する要因が3つ、合計15の繁栄に関連する要因を評価しました。全体として、EoB との関連におけるカテゴリー間の変動の度合いで示される、最も強く関連する人口学的要因は教育であり(16 年以上の教育を受けた人の EoB が最も高く、これは米国を除くすべての場所で当てはまりました)、最も強く関連する幼少期の要因は宗教サービスへの参加(特に毎週)でした。しかし、さらに注目すべきは、EoB と関連する幼少期の要因の中には、特に虐待のように通常は否定的と解釈されるものもあったことです。これは、このような逆境が「良い面」として評価されるべきであるという意味ではありませんが、EoB には複雑なルーツがあり、その 1 つは人々を世界に対してよりオープンで敏感にする可能性のある苦しみの形態である可能性があることを示しています。また、文化間の違いが大きいことも強調する必要があります。ほとんどのパターンは普遍的で必然的なものではなく、地域の社会文化的ダイナミクスの影響を受けます。人間の繁栄におけるこの重要な側面をより深く理解するためには、さらなる研究が必要であり、本論文はそのための基盤と推進力となります。

投稿者によるコメント・補足(4件)
コメント 1

NotebookLMさんに動画解説頂きました。
https://youtu.be/fFDAImwpsjw

コメント 2

■背景
この研究の著者たちがまず指摘しているのは、「美の体験」に関する実証的な研究が驚くほど少ないという事実です。
Google Scholarでの検索結果(2025年9月時点):
・"experience of beauty"(美の体験)というフレーズ:わずか13,600件
・タイトルにこのフレーズを含む論文:わずか133件
しかも、その大部分は実際にデータを収集した科学的研究ではなく、歴史的・哲学的な考察でした。
ーー
●第1の柱:美と芸術が幸福にもたらす価値
【「ポジティブ・ヒューマニティーズ」の台頭】
Pawelski, J. O. (2022). The Positive Humanities. In Tay & Pawelski (Eds.), The Oxford Handbook of the Positive Humanities.
近年、芸術や人文学が人間の幸福に果たす役割を科学的に研究する「ポジティブ・ヒューマニティーズ」という新しい学問分野が登場
美や芸術が単なる娯楽ではなく、人生を豊かにする本質的な要素であることを強調
ーー
【芸術と幸福の関係:実証研究の蓄積】
様々な対象者での研究:

  1. 脆弱な子供たちへの効果
    Khudu-Petersen, K. (2012). The involvement of ethnic minority communities in education through the arts. International Journal of the Arts in Society, 6(6), 193–208.
    民族的マイノリティの子供たちの教育における芸術の役割
    芸術活動が学習意欲と自己肯定感を高める
    Tyson, E. H. (2002). Hip hop therapy: An exploratory study of a rap music intervention with at-risk and delinquent youth. Journal of Poetry Therapy, 15(3), 131–144.
    リスクの高い若者や非行少年に対するラップ音楽の介入研究
    音楽表現が自己表現と問題解決能力を向上させる
    ーー
  2. 精神的に脆弱なグループへの効果
    Argyle, E., & Bolton, G. (2005). Art in the community for potentially vulnerable mental health groups. Health Education, 105(5), 340–354.
    地域における精神保健上の脆弱なグループへの芸術の効果
    芸術活動が孤立感を減少させ、社会的つながりを促進
    Büssing, A., et al. (2014). Experience of gratitude, awe and beauty in life among patients with multiple sclerosis and psychiatric disorders. Health and Quality of Life Outcomes, 12(1), 63.
    多発性硬化症や精神疾患を持つ461人を対象とした研究
    重要な発見:
    美を「全く経験しない」:8%
    「まれに」:28%
    「しばしば」:46%
    「頻繁に」:18%
    病気を持つ人でも約64%が美を「しばしば」または「頻繁に」体験している
    ーー
  3. 社会的に困難な状況にある人々への効果
    Teague, A. K., et al. (2006). Group music therapy with women who have experienced intimate partner violence. Music Therapy Perspectives, 24(2), 80–86.
    パートナーからの暴力を経験した女性への音楽療法
    音楽が感情表現と回復を支援
    Tett, L., et al. (2012). Learning, rehabilitation and the arts in prisons: A Scottish case study. Studies in the Education of Adults, 44(2), 171–185.
    スコットランドの刑務所における芸術と学習の役割
    芸術活動が受刑者の社会復帰を促進
    Schnee, G. (1996). Drama therapy in the treatment of the homeless mentally ill. Health Education, 105(5), 340–354.
    ホームレスで精神疾患を持つ人々へのドラマセラピー
    演劇活動が対人関係のスキルを改善
    ーー
  4. 高齢者への効果
    Swindells, R., et al. (2013). Eudaimonic well-being and community arts participation. Perspectives in Public Health, 133(1), 60–65.
    地域の芸術活動への参加と高齢者の幸福
    「エウダイモニア的幸福(eudaimonic well-being)」=人生の意味や目的を感じる深い幸福
    芸術活動が社会的孤立を防ぎ、生きがいを提供
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それ以降のさまよう心研究
●Smallwood 2013
→さまよう心にもメリットもある。
メリット(特に、外部からの要求が少ない状況下では。要は暇な時は。)
・過去の自分と未来の自分をつなぎ合わせること(自己の時間的統合)
・長期的な計画を立て目標達成に役立てること(将来のプランニング)
・創造的インスピレーションの源となること(創造性の喚起)
https://experts.arizona.edu/en/publications/not-all-minds-that-wander-are-lost-the-importance-of-a-balanced-p#:~:text=The%20waking%20mind%20is%20often,wandering%20may%20be

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それ以降のさまよう心研究
●Gross 2024
頭に浮かぶ内容の快・不快が大事。マインドワンダリングしてても、ポジティブにしてれば問題無し。
※今回の結果でも、別の楽しい事を考えて、心がさまようのは、幸福度高めでしたね😊
https://psycnet.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2Femo0001434
↓解説記事
https://www.psychologytoday.com/us/blog/fulfillment-at-any-age/202411/why-you-should-try-the-mind-wandering-route-to-happiness#:~:text=The%20main%20statistical%20analysis%20was,valence%20of%20the%20thoughts%20themselves

論文紹介 なんとかなるありのままに 主観的幸福・幸福測定文化と幸福・日本的幸福教育とウェルビーイング

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