2025.06.11
チームの心理的安全性の向上に向けたPS-CMMという手法
これは、面白いですね😍
ウェルビーイングなチーム作りにも応用できそう。WB-CMM。
作りたいな😊
●CMM
米国カーネギーメロン大学ソフトウェア工学研究所により提案されたプロセス改善のための枠組み
取り組むべき領域×習熟度
●KPA
組織が取り組むべき取り組み領域(キープロセスエリア)
●PS-CMM
CMMを心理的安全性に適用したもの
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チームの心理的安全性の向上に向けた心理的安全性能力成熟度モデルの提案と有効性の検証
甲谷 勇平先生, 佐藤 優介先生, 白坂 成功先生(慶應義塾大学SDM研究科)
日本創造学会論文誌,2025/6
https://www.jstage.jst.go.jp/article/japancreativity/28/0/28_64/_article/-char/ja
本研究では、心理的安全性の向上を目的とした心理的安全性能力成熟度モデル(PS-CMM)を提案し、その有効性を定量的に検証する。PS-CMMは、能力成熟度モデルの枠組みを参考に、心理的安全性の先行要因から構成されるキープロセスエリアと、成熟度レベルの2つの構成要素から構成される。そして、日本の高校野球5チームにPS-CMMを用いた介入を実施した。介入の効果検証方法として、介入前後でのチームの心理的安全性尺度を用いた定量的検証を実施した。さらに、キープロセスエリアと成熟度レベルの妥当性確認を専門家インタビューの実施を通して、PS-CMMがチームの心理的安全性の向上に有効であることを示す。これにより、チームの心理的安全性向上手法の一つとして心理的安全性能力成熟度モデルが広く展開できることを示す。
1.1. チームの心理的安全性の要請
近年、様々な分野で心理的安全性に注目が集まっている。心理的安全性とは、「チームの中で対人リスクをとっても大丈夫だ、というチームメンバーに共有される信念のこと」である[1]。今日の組織は、かつてないほどの不確実性と複雑性に直面しており、人々が知識や意見、質問、懸念などをタイムリーかつ率直に提供するよう促す必要性が組織の重要トピックとして提示されている[2]。このように、心理的安全性は、不確実性と複雑性が高まる状況下において、その重要性が高まっている。
チームの心理的安全性を提唱した Edmondson[1]によると、チームの心理的安全性が向上することでチームの学習が促進され、チームパフォーマンスの向上に繋がる。この Edmondson[1]の研究を起点に、現在では様々な分野で研究が進められている。産業組織を対象とした研究では、Edmondson[1]が示した学習行動以外にも、心理的安全性はチームメンバーの情報共有の促進[3]や組織市民行動の促進[4]、創造性の向上[5]に寄与することが明らかにされている。特に、心理的安全性が影響を与える要因として頻繁に用いられるものとして、パフォーマンス、創造性、学習、コミュニケーションが挙げられる[2]。リーダーの透明性[6]や傾聴[7]といったリーダー行動が心理的安全性を媒介し個人の創造性に影響を与えることが明らかにされている他、心理的安全性が知識共有行動を促進し、チームレベルでの創造性にも寄与することが明らかにされている[8, 9]。このように、心理的に安全な職場では、従業員は自身の意見を他者に伝えることや積極的な行動を取ることに対して恐れることなく実践できるようになる結果、組織にとって望ましい行動が促進される。
そして、心理的安全性研究の現状について、Edmondson[2]は、心理的安全性研究は過去 10 年間で一時代を築き、理論的・実証的な正当化を必要とする目新しい構成概念ではなく、組織行動に関する文献の主流を占めるようになったとしている。そのうえで、今後の研究の方法の一つとして、心理的安全性の向上に向けた介入研究の必要性を主張している。
1.2. チームの心理的安全性の向上に関する介入研究
様々な分野において、チームの心理的安全性の向上に向けた介入研究が行われている。例えば、産業組織を対象にした介入研究として、Haslam et al.[10]のアイデンティティ・リーダーシップの開発に向けて開発された 5R プログラムがある。5R プログラムは、5 つのモジュールから構成されるオンライン・コンテンツであり、各モジュールで参加者はオンライン教材を読んだり、短いビデオを見たり、自己反省的な要素を含むさまざまな対話型練習に取り組む。また、モジュールとモジュールの間に、自分一人で、またはチームメンバーと一緒に、自己管理型の活動を行う。そして、介入の結果、実験群において、アイデンティティ・リーダーシップに関する知識やエンゲージメント、心理的安全性を含むチームフルネスといった項目が統計的有意に向上したことを明らかにしている。学校組織を対象にした介入研究では、Marder et al.[11]のアジャイル・ワークの導入研究がある。Marder et al.[11]は、高等教育のデジタルマーケティング授業において、授業の方法としてアジャイル原則に基づいたアジャイル・ワークを導入した。その結果、介入前後で心理的安全性が統計的有意に向上した。一方、心理的安全性の介入研究では、すべての介入が明確な有効性を示しているわけではない。Lampman et al.[12]は、ヘルスケアチームを対象に、毎日のハドルを活用してチームワークを向上させるリーダーシップ研修を実施した。ハドルとは、毎日ケアチームが一堂に会し、診療スケジュールの確認や適切なケアが提供できるよう、予約シフトを調整したり、来院関連のニーズ調整、その他の診療関連の問題について話し合うことである[12]。そして、2 週間ごとにリーダーと担当コーチが電話でハドルの進捗状況を確認し合い、実施段階で生じた懸念や疑問に対応した。また、リーダーシップ研修後 50 日目と 100日目で現場訪問を行い、直接ハドルのプロセスを観察しフィードバックを提供した。そして、実験前後での心理的安全性の変化量を分析したところ、全対象チームの心理的安全性は統計的有意ではないものの低下した。この結果について Lampman et al.[12]は、個別対象チームごとに分けて特徴の抽出を試みたところ、対象チームのリーダーの介入の遵守や関与の程度により結果に差が出たことが分かった。担当コーチからの全ての電話に出たリーダーのチームでは、心理的安全性の向上を示したが、担当コーチからの電話に出ないことが多かったリーダーのチームでは改善への取り組みが見られなかった。つまり、被験者の介入手法に対する参加率の違いが結果の違いを生み出す可能性が示唆されている。他にも、Dusenberry & Robinson[13]は、実験群に対して心理的安全性に関するビデオを見せた後、対象者に心理的安全性の定義と心理的安全性が自チームのチームワークにどのように関連しているかを考え書き出すよう指示した。一方の対照群に対しては倫理に関するビデオを見せた後、対象者に倫理の定義と自チームにおいて倫理がどのような役割を果たしたかを書き出すよう指示した。この介入の結果、介入前後のデータ間で統計的有意な向上は確認されず、実験群と対照群の間の統計的有意差も確認されなかった。この結果から Dusenberry & Robinson[13]は、心理的安全性だけに的を絞ったトレーニング介入が心理的安全性の向上への有効性を示さなかった要因として、ビデオの内容がチームの文脈に直接関連していなかったため、適切な効果が得られなかったと考察しており、対象チームの文脈を考慮し、チーム特有の性質や懸念事項に沿った介入の必要性を示唆している。そして、もう1つの要因として、チームデザインがチームごとに異なっていたため効果が得られにくかった可能性を挙げている。チームサイズやチームタイプ、チーム課題などの違いによって、トレーニング介入の結果が異なってくる可能性を示唆している。
このように、心理的安全性の介入研究では、研究対象や介入手法によって結果が様々であることがわかる。また、心理的安全性の今後の方向性を示した、Edmondson & Bransby[2]は、心理的安全性を構築するためにリーダーができる具体的な介入方法に関する研究が不足していることを指摘しており、心理的安全性を構築するためにリーダーができる具体的な介入方法に関する研究あれば、より価値のある知見になるとしている。しかし、Edmondson & Bransby[2]の要請に応える形でリーダーができる具体的な介入方法に関する研究は我々が確認したところまだ見つかっていない。