2025.06.11

はぴテク相談室:チームの心理的安全性の向上に向けたPS-CMMという手法

相談者

最近、職場のチームがなんとなくギスギスしていて、みんな意見を言いにくそうにしているんです。会議でも黙っている人が多くて…。どうすれば、みんなが安心して発言できるチームになれるんでしょうか?

はぴテクさん
はぴテクさん

それはつらい状況ですね。みんなが黙ってしまう職場、よくある悩みです。実はその状態、「心理的安全性が低い」という言葉で研究されていて、最近とても注目されているんですよ。心理的安全性というのは、「チームの中で対人リスクをとっても大丈夫だ、とメンバー全員が感じている状態」のことです。意見を言っても批判されない、変なことを言っても大丈夫、そういう安心感のことですね。

相談者

心理的安全性、聞いたことあります!でも、それって「雰囲気を良くする」みたいな漠然としたことで、具体的にどうすればいいかよく分からないんですよね。

はぴテクさん
はぴテクさん

おっしゃる通り、概念は知っていても「じゃあ何をすればいいの?」となりますよね。そこで面白い研究があります。慶應義塾大学の甲谷先生たちが2025年に発表した研究で、「PS-CMM(心理的安全性能力成熟度モデル)」という具体的な手法が提案されました。もともとソフトウェア開発の現場で使われていた「プロセスを段階的に改善するための枠組み」を、心理的安全性の向上に応用したものなんです。

相談者

ソフトウェア開発の手法を心理的安全性に?それはどういうことですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

イメージしやすく言うと、「チームが取り組むべき具体的な領域」と「どのくらい実践できているかのレベル(習熟度)」という2つのものさしでチームの状態を整理する、というやり方です。「何に取り組むか」と「どのくらいできているか」を組み合わせて、チームの現在地を把握し、次のステップを踏んでいくわけですね。

相談者

なるほど!チームの「現在地」と「次の目標」を明確にしてくれる感じですね。それって実際に効果はあったんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

はい、この研究では日本の高校野球チーム5チームにPS-CMMを使った介入を実施して、介入の前後で心理的安全性の尺度(数値で測る指標)を比較しました。その結果、心理的安全性が向上したことが定量的に確認されています。また、専門家へのインタビューを通じて、この手法の中身の妥当性も確認されています。ただし、これはあくまでこの特定のチームでの結果ですので、すべての職場で同じ効果が出るとは限りませんので、その点はご注意ください。

相談者

高校野球のチームで実験したんですね。スポーツの世界でも心理的安全性って大事なんですね。で、職場でもこのPS-CMMという考え方は使えますか?

はぴテクさん
はぴテクさん

研究の対象が高校野球のチームという点は意識しておく必要がありますが、この枠組みの考え方自体はチーム全般に応用できる可能性があると研究者たちは述べています。職場でも「取り組むべき領域」と「習熟度のレベル」を意識するアプローチは参考になると思います。たとえば、リーダーが透明性をもって情報を共有したり、メンバーの話にきちんと耳を傾けたりといったリーダー行動が心理的安全性に影響すること、他の研究でも確認されています。

相談者

具体的に、職場で心理的安全性を高めるためには何から始めればいいでしょうか?

はぴテクさん
はぴテクさん

PS-CMMの考え方を借りると、まず「現状把握」がスタートです。チームの状態を正直に見つめること。たとえば「みんなが発言しているか」「失敗を責める雰囲気はないか」などを確認してみることが第一歩です。研究では、心理的安全性の先行要因(つまり「これがあると心理的安全性が高まりやすい」という要素)をキープロセスエリアとして整理しています。情報共有、学習行動、コミュニケーションなどがその代表例です。

相談者

「現状把握」から始めるんですね。それは確かに、まず何が問題かを知らないといけませんよね。他にも研究から分かることはありますか?

はぴテクさん
はぴテクさん

はい。心理的安全性が高まることで、チームの学習が促進されてパフォーマンスが上がったり、創造性や情報共有が活発になったりすることも別の研究で確認されています。ただ、「心理的安全性を高めたからパフォーマンスが上がった」と単純に言い切れるかというと、研究によっては相関関係(一緒に動く傾向)として示されているものが多く、「原因と結果」として断言できるわけではないんです。でも、少なくとも「安心して意見が言える環境」が様々な良い状態と関連していることは確かです。

相談者

なるほど。じゃあまず「うちのチームはどんな状態か」を振り返ってみます。そしてリーダーとして、自分がちゃんと話を聴いているか、情報を隠していないかも見直してみますね。

はぴテクさん
はぴテクさん

それはとても良い気づきだと思います!リーダーの傾聴や透明性ある行動が心理的安全性と関連することは研究でも示されていますし、まず自分の行動を見直すのはとても大切なアプローチです。「段階を踏んで少しずつ改善していく」というPS-CMMの考え方のように、一気に全部変えようとせず、今のチームの状態を認めながら、一つひとつ取り組んでみてください。

■ 今日のまとめ

  • 心理的安全性とは「チームの中で対人リスクをとっても大丈夫」とメンバーが共有している安心感のことで、情報共有・学習・創造性などとの関連が研究で示されています。
  • PS-CMM(心理的安全性能力成熟度モデル)は、「取り組むべき領域」と「習熟度レベル」の2つで現在地を整理し段階的に改善を進める枠組みで、高校野球チームへの介入で心理的安全性の向上が確認されました。
  • まずチームの現状を正直に把握し、リーダー自身の傾聴や情報共有の姿勢を見直すことが、心理的安全性向上への具体的な第一歩になります。

■ 出典・注意事項

  • 甲谷勇平・佐藤優介・白坂成功(2025)「チームの心理的安全性の向上に向けた心理的安全性能力成熟度モデルの提案と有効性の検証」『日本創造学会論文誌』第28巻, pp.64. https://www.jstage.jst.go.jp/article/japancreativity/28/0/28_64/_article/-char/ja

  • 【注意事項】本研究の介入対象は日本の高校野球チーム5チームであり、職場など他の組織への一般化には限界があります。

  • 【注意事項】心理的安全性とパフォーマンス・創造性等との関係は、多くの研究で相関関係として示されており、必ずしも因果関係(原因→結果)を意味するものではありません。

  • 【注意事項】介入前後の比較による効果検証であり、対照群(介入しないグループ)との比較など、より厳密なデザインの研究が今後求められます。

投稿者によるコメント・補足(1件)
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研究自体の紹介はこちら😊
チームの心理的安全性の向上に向けたPS-CMMという手法
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2025-06-11-1749667745/

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