はぴテク相談室:仕事の遊び心は、おうちへのおみやげになる話
はぴテクさん、聞いてください。最近、仕事が退屈で退屈で…。毎日同じことの繰り返しで、夕方にはぐったり。家に帰っても、ソファに沈んでスマホを見るだけで一日が終わっちゃうんです。子どもに「遊ぼう」って言われても、「ちょっと待ってね」ばっかりで…。
それはお疲れですね…。でも実は今日、その相談にぴったりの研究があるんです。2026年に出たばかりの、9カ国706人を10日間毎晩追跡した研究(Wang et al., 2026)なんですが、一言でいうと「仕事の遊び心は、家までおみやげとして持って帰れる」という話なんです。
遊び心…?いやいや、うちの仕事、遊べる要素なんて1ミリもないですよ。真面目な事務仕事ですし。
そう思いますよね。でもこの研究で扱っている「遊び心のある仕事デザイン」、略してPWDというのは、仕事の中身を変えることじゃないんです。仕事はそのままで、取り組み方に楽しさや挑戦を「ちょい足し」する工夫のこと。たとえば、退屈な書類仕事を「30分以内に終わらせられるか、自分とタイムアタック勝負」にしてみるとか。
えっ、それでいいんですか?なんか、子どもだましみたいな…。
それが侮れないんですよ。この研究では、普段の自分と比べて「今日は遊び心を発揮したな」という日は、仕事の退屈さがはっきり減っていました。退屈って、単に「楽しくない」じゃなくて、エネルギーとやる気をじわじわ吸い取っていく状態だと分かっているんです(Loukidou et al., 2009)。だから、そこに小さな刺激と挑戦を自分で足すのは、理にかなった対処法なんですね。
なるほど…。でも私の悩みは、どっちかというと家のほうで。仕事が退屈なのは我慢するとして、家でぐったりしてるのを何とかしたいんです。
実はそこが、この研究のいちばん面白いところなんです。研究チームは「遊び心のある家庭デザイン」、略してPFDという新しい概念を提案しました。家族との時間に、楽しさやユーモア、軽い競争をちょい足しする工夫のことです。そして毎晩のデータを見ると、仕事で遊び心を発揮した日は、家でも遊び心を発揮している。この連動がかなりしっかり確認されたんです。
へえ…!仕事でふざけた日は、家でもふざけてるってことですか(笑)
言い方(笑)。でもまさにそういうことです。インタビュー調査でも、「気づいたら夕食の準備を楽しいチャレンジに変えていた」とか、「職場のチーム対抗のノリを持ち帰って、家事を早く終えた人のリーダーボードと賞品を作った」なんて声がありました。遊び心って、職場のロッカーに置いてくるものじゃなくて、気分ややり方ごと、家までついてくるみたいなんです。
でも待ってください。私、疲れも家に持って帰ってますよ?それと同じ理屈なら、嫌なものも一緒についてきちゃうんじゃ…。
鋭い!そのとおりで、心理学ではこれを「スピルオーバー(流出)」と呼びます。仕事での状態が家庭に流れ込む現象で、良いものも悪いものも流れるんです。過去の研究では、仕事で本心を隠して笑顔を作る「表層演技」が、家でも出てしまうことが示されています(Sanz-Vergel et al., 2012)。だからこそ、どうせ何かが流れるなら、疲れやイライラじゃなくて遊び心を流したい、というのがこの研究から引き出せる知恵なんです。
どうせ流れるなら、いいものを流す…。ちょっとやってみたくなってきました。何から始めればいいですか?
明日の仕事で、いちばん退屈なタスクをひとつ選んでください。それに「制限時間」か「ユーモア」のどちらかを足してみる。それだけです。ちなみにこの研究では、もともと遊び心の強い性格の人ほど効果が大きいことも示されていますが、効果自体は遊び心が控えめな人にもちゃんとありました。だから性格を変える必要はなくて、行動をひとつ足すだけでいいんです。
それなら私にもできそう。…あ、でも、家でうまくいくかは家族次第かも(笑)
それも大事な視点です。実はこの研究、パートナーからの「思いやりのある愛」——深い愛情や、お互いを気づかう関係のこと——が深い人ほど、遊び心の効果が少し大きいことも見つけているんです。家庭という土台が安心できる場所だと、遊び心はもっと育つ。逆に言えば、あなたが家に遊び心を持ち帰ることは、家族にとっての土台づくりにもなるかもしれませんね。
仕事の退屈対策のつもりが、家族へのおみやげになるなんて。なんだか一石二鳥ですね。明日、書類タイムアタック、やってみます!
■ 今日のまとめ
- 仕事の中身は変えなくていい。取り組み方に楽しさや挑戦を「ちょい足し」するだけで、その日の退屈さは減る
- 仕事での状態は家に「流れる」(スピルオーバー)。どうせ流れるなら、疲れではなく遊び心を流すほうがいい
- 遊び心の効果は、遊び心が控えめな性格の人にもちゃんとある。まずは明日、いちばん退屈なタスクひとつから
■ 出典・注意事項
- Wang, S., Rofcanin, Y., Las Heras, M., Scharp, Y., Bakker, A., Ererdi, C., & Bosch, M. J. (2026). From playful work design to playful family design: How personality and compassionate love shape playfulness across domains. Applied Psychology, 75(4), e70123. https://iaap-journals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/apps.70123?af=R
- 9カ国(スペイン+中南米8カ国)のフルタイム従業員706名が10日間毎晩回答した日誌法研究(4110日分)+10名へのインタビュー調査です
- 仕事の遊びと家庭の遊びは同じ日の夜にまとめて測定されているため、「仕事の遊び→家庭の遊び」という因果の向きは確定できません。インタビューでは逆方向(家庭→仕事)の声もあり、相互に影響している可能性があります
- 「遊び心のある家庭デザイン(PFD)」は本研究で提案されたばかりの概念で、それが家族の幸福度や関係の質を実際に高めるかは、まだ検証されていません
- すべて自己報告データに基づく研究です
論文の紹介はこちら
仕事の遊び心は、家に持って帰れる
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2026-07-17-1784257020/