はぴテク相談室:人生の大きな出来事は、認知的・感情的幸福度に、どのような影響を与えるのか。→あま
最近、会社でずっと狙っていた昇進を逃してしまって…。もうこれで人生終わりみたいな気持ちになっています。こういう大きな出来事って、幸福度にずっと影響し続けるんでしょうか?
それはつらかったですね。ずっと目指していたものを逃した直後は、本当に落ち込みますよね。実は、オーストラリアで同じ人たちを15年間追いかけて、人生の大きな出来事が幸福度にどう影響するかを調べた研究があるんです。その結果を一緒に見てみましょう。
15年も追いかけたんですか!それは信頼できそうですね。昇進を逃すって、やっぱり幸福度にかなり影響するんでしょうか?
実はここが面白いところで、この研究では「昇進した」という出来事は、幸福度にほとんど独立した影響がなかったと報告されています。逆に言うと、昇進を逃したことも、単独で長く幸福度を下げ続けるとは言い切れないんです。もちろん今はとても苦しいと思いますが。
えっ、昇進しても幸福度が上がらないんですか?それはちょっと意外です…。じゃあ、長く影響が続く出来事ってどんなものがあるんでしょう?
この研究では18種類の大きな出来事を調べていて、2年を超えても影響が続いたものは限られていました。両方の幸福度(人生の満足感と日常の感情状態)にマイナスの影響が続いたのは、別居・離婚、けが・病気、経済的な大きな損失(破産など)の3つだったんです。
なるほど。でも逆に言えば、ほとんどの出来事は時間が経てば元に戻るということですか?
そうなんです。研究では「ヘドニック適応」と呼ばれる、元の状態に戻っていく力が確認されています。特にポジティブな出来事については、2年以内に感情的な幸福度は元に戻る傾向が見られました。人間には、出来事に慣れていく力が備わっているんですね。
じゃあ、結婚や宝くじ当選みたいな良い出来事も、幸福度をずっと高め続けるわけじゃないということですか?
そうなんです。この研究では、認知的幸福感(人生満足度)と感情的幸福感(日々の気分や活力)の両方をプラスにし続けた出来事は、18種類の中に一つもなかったという結果でした。たとえば結婚や出産は、人生満足度には2年以上プラスの影響が続きましたが、日々の感情的な幸福度への影響はなかったんです。
面白いですね。人生満足度と、日々の感情って、別々に動くこともあるんですね。じゃあ、今の私の落ち込みも、時間とともに戻っていく可能性があるということでしょうか。
この研究のデータを見ると、多くの出来事では2年以内に元の状態に近づく傾向が観察されています。もちろんこれは統計的な傾向であって、あなた個人が必ずそうなるとは断言できませんし、今の気持ちを否定したいわけでも全くないんですが、人間にはそういう回復力があることが大規模な調査で示されているのは、一つの希望になるかもしれません。
そう聞くと少し楽になる気がします。でも逆に、「どうせ何があっても幸福度は変わらない」と思うと、何をがんばっても意味がないような気もしてきて…。
大事な視点ですね。この研究が示しているのは「何をしても無駄」ということではなく、「一つの出来事だけが幸福度を決定し続けるわけではない」ということです。研究者たちも、ポジティブな出来事で幸せになれるという期待は見当違いになりがちだと述べています。つまり、幸福度は特定のイベントよりも、日々の心のあり方や積み重なった状況に関わっている部分が大きいと示唆しているんです。
なるほど。昇進できなかったことで全部が決まるわけじゃないし、日々の過ごし方のほうが大事ということですね。今日、少し前向きになれた気がします。ありがとうございます。
こちらこそ、真剣に向き合ってくださってありがとうございます。一つの出来事に幸福度を決められてしまうのではなく、自分の日々の状態を大切にしていくこと、それがこの研究からも見えてくるメッセージだと思います。今の気持ちをゆっくり受け止めながら、過ごしてみてくださいね。
■ 今日のまとめ
- 18種類のライフイベントを15年追跡した研究では、昇進・解雇・友人の死など多くの出来事は幸福度への独立した長期影響がほとんど見られなかった。
- 別居・離婚、けが・病気、経済的大損失の3つは、人生満足度・日々の感情の両方に2年以上マイナスの影響が続いた一方、ほとんどの出来事では2年以内に元の状態に戻る傾向(ヘドニック適応)が観察された。
- 人生満足度(認知的幸福)と日々の感情状態(感情的幸福)は別々に動くことがあり、結婚・出産・退職は人生満足度にはプラスでも、日々の感情への影響はなかった。両方をプラスにし続けたイベントは一つもなかった。
■ 出典・注意事項
- 出典:Kettlewell N, Morris RW, Ho N, Cobb-Clark DA, Cripps S, Glozier N. 'The differential impact of major life events on cognitive and affective wellbeing.' SSM-Population Health, 2020. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2352827319302204
- 注意事項①:本研究はオーストラリアの大規模コホート(集団)を対象にした観察研究です。統計的な傾向であり、個人に必ず当てはまるとは限りません。
- 注意事項②:これは相関・関連の分析であり、ライフイベントが幸福度を直接・因果的に変化させると断言するものではありません。同時に起きる他の出来事の影響も考慮されていますが、すべての要因を排除できるわけではありません。
- 注意事項③:対象はオーストラリア在住者であり、文化・社会制度・経済状況が異なる他の国や集団にそのまま当てはまらない可能性があります。
研究自体の紹介はこちら😊
人生の大きな出来事は、認知的・感情的幸福度に、どのような影響を与えるのか。→あま
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2025-06-10-1749584756/