幸福な人は似ているが、不幸な人はそれぞれに不幸。は本当だった
『アンナ・カレーニナ』(by トルストイ)では、
「幸福な家庭はどれも似たものだが、不幸な家庭はいずれもそれぞれに不幸なものである」
という一文から始まります。
ではこれは本当なのか?という2-3年前の研究😊
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結論から言えば、本当だった。
幸福度が高い人と、低い人の、性格・価値感を見ると、
幸福度が高い人は似ている、低い人はあまり似ていない。
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確かに、幸せな人は●●だ。という研究は多いですが、
不幸せな人は●●だ。という研究はあまり見ない気がしますね。
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ただし所感ですが、幸せな人は性格や価値感が似ている、
とはいえ、心のベースの部分が似ているだけであって、
実際には個性的な人が多い印象です。
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幸せな心の素養は分かっているんだから、
そこを鍛えれば、良いだけ。
幸せになるのは難易度高く無いですね😊
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ちなみに、研究では、所得・健康においても、
高い人の性格・価値感は似ていて、
低い人の性格・価値感はあまり似ていませんでした。
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The Convergence of Positivity: Are Happy People All Alike?
ポジティブ思考の収束:幸せな人は皆同じなのか?
2023,Journal of Happiness Studies
**Rumen Iliev & Will M Bennis **
https://link.springer.com/article/10.1007/s10902-023-00631-9
1世紀以上前、レフ・トルストイは、幸福な家族は不幸な家族よりも互いに似ている傾向があると指摘しました。これは、肯定的な存在同士が似ていると認識する傾向による単なる認知錯覚だったのでしょうか、それとも世界についての深い洞察だったのでしょうか?もしそれが真実だとすれば、この現象は幸福に限ったものなのか、それともより一般的に肯定的な特性の特徴なのでしょうか?この疑問は複数の分野で注目されてきましたが、心理学ではそうではありませんでした。私たちは、何らかの肯定的な個人差特性を共有する人々はそうでない人々よりも似ているというより一般的な仮説(ポジティブ性の収束仮説)を検証する5つの研究を実施し、一貫してその実証的裏付けを得ました。幸福で健康で裕福な人々は、性格、価値観、その他のさまざまな領域においてより似通っていました。ここで私たちが採用した研究アプローチは、従来の行動科学の方法から逸脱し、価数と方向性が中心的な役割を果たす異なるレベルの分析を提案しています。私たちは、なぜこのようなパターンが存在するのか、また、それが個々の差異を超えて、正の値が定義できるより広範な複雑系にまで及ぶかどうかなど、境界条件について考察する。
【背景】
■ 出発点:トルストイの観察
すべては『アンナ・カレーニナ』(Tolstoy, 1877/2014) の冒頭の一文から始まります。「幸福な家庭はどれも似たものだが、不幸な家庭はいずれもそれぞれに不幸なものである」というものです。
この文学的な観察が、近年では科学的研究の対象になっています。幸福(ポジティブ)なものは互いに似ており、不幸(ネガティブ)なものはそれぞれバラバラだ、という発想です。
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■ 第1の流れ:「ネガティブは強い」という研究の蓄積
心理学では長らく、ネガティブ情報の方が心理的に強い影響を持つことが指摘されてきました。これを総括した2つのレビュー論文があります (Baumeister et al., 2001; Rozin & Royzman, 2001)。
具体的には、以下のような知見です。
・ネガティブな出来事の方が記憶に残りやすい (Skowronski & Carlston, 1987)
・ネガティブな単語の方が正確に認識される (Hansen & Hansen, 1988)
・ポジティブとネガティブが混ざると、全体はネガティブ寄りに評価される (Rozin & Royzman, 2001)
・損失は同額の利得より大きく感じられる(損失回避) (Kahneman & Tversky, 1979)
※プロスペクト理論として知られる、行動経済学の基礎的知見
こうした研究群は「bad is stronger than good(悪は善より強い)」と要約されます。
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■ 第2の流れ:「ポジティブは互いに似ている」という新しい視点
近年、上記の見方を拡張・部分的に置き換える研究が登場しました。「good is more alike than bad(善は悪より互いに似ている)」と要約される流れです (Alves et al., 2017)。
この中心にあるのが「密度仮説(density hypothesis)」です (Unkelbach et al., 2008)。
▼ 密度仮説とは
心の中の意味空間(概念が配置される心理的な空間)は、ポジティブな極の方が密に詰まっている、という考え方です。つまりポジティブな概念どうしは互いに近い位置にあり、ネガティブな概念は広く散らばっている、というものです。
この仮説を支持する証拠が多数蓄積されました。
・ポジティブな概念は他のポジティブ概念を呼び起こしやすい(プライミング効果が強い) (Unkelbach et al., 2008)
※プライミング=先に見た刺激が後の処理に影響すること
・ポジティブな単語どうしは互いに似ていると判断される (Unkelbach, 2012)
・ポジティブな感情語 (Schrauf & Sanchez, 2004) やポジティブ語 (Koch et al., 2016) は、より狭い意味空間しか占めない
・好ましい人物どうしは、好ましくない人物どうしより似て見える (Alves et al., 2016)
・好ましい人物像を作るときは皆が同じ望ましい特徴に収束するが、否定的な人物像では収束しない (Borkenau & Leising, 2016; Wood & Furr, 2016)
言語面でも、ネガティブな感情を表す語の数の方が多く、ネガティブな状態の方が細かく区別されています (Rozin & Royzman, 2001)。
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■ 第3の流れ:「似ているから好ましく見える」という逆方向の可能性
ここで注意すべき逆の因果も指摘されています。人は平均的な刺激(=似ていることの指標)を、中心から外れた刺激より好ましく評価する傾向があります。これは人の顔から車まで、様々なカテゴリーで観察されています (Winkielman et al., 2006)。
つまり「幸福な家庭は似ている」という認識は、似た家庭をより好ましく見るという認知バイアスから生じている可能性もあるわけです。ポジティブだから似ているのか、似ているからポジティブに見えるのか、という問題です。
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■ 第4の流れ:環境の統計パターンの影響
この章の重要な論点が「主観の話か、環境(現実)の話か」という区別です。
知覚レベルでは、環境の統計パターンが評価に影響することがわかっています。
・刺激への接触頻度が増えると評価が上がる(単純接触効果) (Zajonc, 2001)
・幾何パターンの平均性が高いほど好ましく評価される (Winkielman et al., 2006)
・利得と損失の統計的分布を操作すると、損失回避を弱めたり逆転させたりできる (Walasek & Stewart, 2015)
しかし「ポジティブなものが現実に(主観ではなく客観的に)似ているのか」については、体系的な検証がほとんどありませんでした。
この点について、ポジティブ心理学の大家であるピーターソンは懐疑的でした。「ある考えを"原理"と呼んでも、それが原理になるわけではない。アンナ・カレーニナ原理は、検証されるべき仮説と見なすべきだ」と述べています (Peterson, 2012)。
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■ 第5の流れ:心理学の外からの示唆的な証拠
著者らは、心理学以外の分野からアイデアを借りています。これが本研究の独自性につながります。
・高齢者を対象とした大規模調査では、幸福な人ほど質問への回答が互いに似ていた (Tumminello et al., 2011)
・平均的な顔は魅力的と判断されるだけでなく、健康の良さの指標でもある (Little et al., 2011)
・動物の微生物叢(マイクロバイオーム)の研究では、ストレス下や病気の個体の細菌群集は新たな「不健康なクラスター」を作るのではなく、健康な個体の周りに散らばる形になっていた (Zaneveld et al., 2017)
※これがまさに、健康(ポジティブ)な状態が中心に収束するパターン
特に重要な背景となるのが、人類史を扱った研究です (Diamond, 1997)。動植物の家畜化・栽培化がなぜ稀だったかを「成功には多くの必要条件が揃わねばならないが、失敗は一つの欠落で起こる」という「アンナ・カレーニナ原理」で説明しています。
【研究内容】
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■ 検証したい大きな問い
「ポジティブな人どうしは、客観的に互いに似ているのか?」
これを心理学の「個人差」の領域で検証します。具体的には、ある集団を「ポジティブ度が高い群」と「低い群」に分け、高い群の人どうしの方が、低い群の人どうしより互いに近い(似ている)かを調べます。これを「ポジティブの収束仮説(Convergence of Positivity Hypothesis)」と呼んでいます。
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■ 2つの大きな測定上の課題
この検証には、2つの厄介な問題があります。
▼ 課題1:ポジティブ(positivity)をどう定義するか
著者らはポジティブを2つの成分に分けました。
・快楽的成分(hedonic)…主観的評価に依存するもの。本研究では幸福感・生活満足度を使用。
・適応的成分(fitness)…主観評価に必ずしも依存しない、状態の「良い方向」を示すもの。本研究では「健康」と「所得」を使用。
※fitnessは進化生物学の「適応度」に由来する語で、ここでは主観的な快不快とは別に、その個体にとって望ましい状態を指す
両方を使うことで、より広い領域で検証でき、異なる指標が同じ結論に至るか(収束する証拠が得られるか)を確認できます。
著者らは、これらの指標が文化に依存している点も正直に認めています。健康・幸福・所得の何を「良い」とするかは文化によって異なり、収束パターンの一部は文化的要因で説明されうる、と注意を促しています。
▼ 課題2:類似度(similarity)をどう測るか
類似度の測り方は何十通りもあり、結果が変わりかねません。そこで以下の予防策を取っています。
・全ての検証でユークリッド距離(空間内の2点間の直線距離)に統一
・既存の確立された尺度をそのまま使い、独自のスケール変換は行わない
・表面的類似度(surface similarity)のみを扱う(次元間の関係まで見る構造的類似度は扱わない)
・群分けは保守的に50/50(上位半分と下位半分)で統一
※上位/下位33%、25%、20%、10%でも結論は変わらなかったと注記
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■ 3つの仮説
▼ H1:性格(ビッグファイブ)空間
高ポジティブ群の人どうしは、ビッグファイブ性格空間で互いに近い。
※ビッグファイブ=性格を5次元(開放性・誠実性・外向性・協調性・神経症傾向)で表す、最も広く使われるモデル
▼ H2:価値観(シュワルツ)空間
高ポジティブ群の人どうしは、シュワルツの基本的価値観の空間で互いに近い。
※シュワルツの理論=人間の価値観を10次元で捉え、文化・社会的規範を明示的に取り込んだモデル
▼ H3:その他の心理学的に意味のある空間でも同様(探索的仮説)
事前に領域を決めず、データにあった様々な領域で検証する。
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■ 5つの研究の流れ
5つの研究、計14回の仮説検定を行っています。データは主に2つの大規模調査を使用しています。
・HILDA…オーストラリアの世帯を追跡した縦断調査(約17,000人)
・WVS(世界価値観調査)…第6波、60カ国・約89,000人
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▼ 研究1:HILDAでの性格(H1の検証)
HILDAには3つの年(2005, 2009, 2013)でビッグファイブ・所得・健康・幸福感のデータがあります。
手順は、期間平均を取り、快楽的指標で高低2群に分け、各群内の性格空間での平均距離を計算。高ポジティブ群の距離が低ポジティブ群より小さければ仮説支持です。
結果:高ポジティブ群の方が距離が有意に小さかった(p<0.005、並べ替え検定)。健康・所得で群分けしても同じ結果。→ H1を支持。
※並べ替え検定(permutation test)=データをランダムに入れ替えて、偶然ではこの結果が出にくいことを確認する手法
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▼ 研究2:WVSでの価値観(H2の検証)
WVS第6波のシュワルツ価値観データを使用。国ごとに高低群に分け、「低群の距離−高群の距離」を収束スコアとして計算。これが0より大きければ仮説支持です。
結果:国を平均した収束スコアは有意に0より大きかった(p<0.05)。健康・所得でも同じ。3指標すべてで同方向。→ H2を支持。
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▼ 研究3:HILDAの他の領域(H3の初期検証)
HILDA内で、概念的にまとまった別の変数群を2つ発見。
・認知能力課題…作業記憶、単語の発音、符号-数字処理の3次元
・時間の使い方…仕事、家事、ボランティア、子どもと遊ぶなど9次元
結果:両領域とも、3指標すべてで仮説と一致(ps<0.005)。高ポジティブ群の人は、認知能力や時間の使い方でも互いに似ていた。→ H3を強く初期支持。
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▼ 研究4:WVSの多様な領域(H3のさらなる検証)
WVS内で基準に合う領域を25個発見(科学・民主主義への態度、信頼、自信など)。
混合効果モデル(国や領域ごとのばらつきを「ランダム効果」として調整し、群の違いだけを取り出す統計手法)で分析。国・領域の差を統制しても、高ポジティブ群の方が互いに近かった(p<0.005)。健康・所得でも同様。→ H3を追加支持。
ただし、国・領域・指標間でかなりのばらつき(異質性)も見られ、逆方向の効果は政治的態度・政治活動に関連する傾向がありました。
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▼ 研究5:性格の追試(H1の再確認)
研究4の25領域のうち「性格」だけは、所得でしか予測方向の効果が出ませんでした。これは研究1と食い違う部分的な非再現です。
ただしWVSの性格項目は他の研究者からも「問題がある」と警告されていました (Ludeke & Larsen, 2017)。そこで別のデータ(Lauriola & Iani, 2015。positivity=楽観性・自尊心・生活満足度の組み合わせで測定)で追試。
結果:研究1と同様、高ポジティブ群の方が性格空間で互いに近かった(p<0.005)。→ H1を再現・一般化。
前野夫妻の幸福学Tipsに取り上げて頂きました😍
https://r.voicy.jp/qEm70nDP940