はぴテク相談室:幸せを育む大学教育とは?
大学生の娘のことで相談なんですが…今の大学生活が充実しているのか不安で。授業に出て単位を取るだけで、将来幸せになれるのかな、って親として心配なんです。
それは親御さんとして気になりますよね。実は2024年にPNAS nexusという科学誌に掲載された研究で、「大学での経験と将来のウェルビーイング(幸せ・豊かさ)」についてとても興味深いことが分かっています。単位取得やGPAだけが大学の成果じゃない、というメッセージが込められた内容なんですよ。
え、そうなんですか!具体的にどんな経験が大事なんでしょう?
ギャラップ社の調査をもとにしたデータとして、将来の幸せと関連する大学での6つの経験が紹介されています。①学ぶことへのワクワクを伝えてくれる先生が少なくとも1人いること、②人として自分を気にかけてくれる先生がいること、③目標に向けて背中を押してくれるメンターがいること、④1学期以上かかる長期プロジェクトに取り組むこと、⑤インターンシップや実際の仕事経験をすること、⑥課外活動や学生団体に積極的に参加すること…の6つです。
なるほど!でも娘はそのすべてを満たしているかというと…正直自信がないです。6つ全部やらないとダメなんでしょうか?
安心してください。実はこの6つを全部満たしている学生は3%しかいないというデータもあるんです。ですから「全部できて当然」という話ではなく、「こういった経験が幸せと関連している」という視点として参考にするのが良いと思います。どれか1つでも充実しているなら、それはとても意味があることですよ。
そう聞くと少し気が楽になりました。でも「幸せ」って漠然としてますよね。この研究では幸せをどういうふうに考えているんですか?
この研究では、学生の幸せを6つの要素でとらえています。①帰属意識(どこかに属している・受け入れられている感覚)、②主体性(自分で選んで動いている感覚)、③目的(何のために生きているかという感覚)、④アイデンティティ(自分が何者かという感覚)、⑤社会参加(社会とつながっている感覚)、⑥経済的な安定…の6つです。中でも「帰属意識」が特に重要とされています。
帰属意識、ですか。娘は友達もいるし、サークルにも入っているので、そこは大丈夫かな。でも目的とかアイデンティティって、大学生のうちに持てるものなんですかね…
実はこの研究でも、すべての要素を一気に育てようとしなくていい、というスタンスなんです。大学側へのアドバイスとして「まず1〜2つの領域に絞って深めることから始めると成功しやすい」と書かれています。人生の目的やアイデンティティは、いろんな経験を積みながら少しずつ形成されるものですし、大学時代はそのプロセスの途中で十分なんですよ。
じゃあ親としては、娘に何かアドバイスできることはありますか?例えば、どんな行動を勧めたらいいでしょう?
研究の内容をもとにお伝えすると、「信頼できる先生やメンターに自分から関わってみること」と「長めのプロジェクトや課外活動に一つ本気で取り組んでみること」が、幸せと関連する経験として挙げられています。インターンシップも含めて「授業の外の実体験」が大切なようです。ただし重要なのは、これらは「あると幸せと関連している」という話であって、「やらないと不幸になる」ということではありませんからね。
それは大事な視点ですね。つい親は「全部やらせなきゃ」ってなりがちで(笑)。大学側にも何かできることがあるんでしょうか?
はい、この研究では大学側への提言も6つ示されています。特に印象的なのが「ウェルビーイングを授業の中に組み込むこと」と「学生に追加の金銭的負担を与えないこと」の2点です。お金のかかる活動だけでなく、普通の授業の中にも幸せを育む仕掛けができる、という考え方で、経済的に余裕がない学生にも平等に機会を届けようという姿勢が伝わってきますよね。
そうですよね。お金がないと幸せになれない、では困りますもんね。なんだか大学って単位を取るだけじゃない、もっと豊かな場所なんだなと改めて感じました。娘とも話してみます!
ぜひ!「今の大学生活で一番ワクワクしていることは何?」「信頼できる先生はいる?」なんて会話のきっかけにしてみてください。成績だけじゃない視点で娘さんの大学生活を見てあげることが、親子の対話を豊かにしてくれるかもしれませんよ。
■ 今日のまとめ
- 将来の幸せと関連する大学での経験として「熱意ある教員との出会い」「メンター」「長期プロジェクト」「インターンシップ」「課外活動」の6つが挙げられているが、6つすべてを満たす学生は3%のみ。一つでも充実させることが大切。
- 学生の幸せは「帰属意識・主体性・目的・アイデンティティ・社会参加・経済的幸福」の6要素でとらえられており、特に帰属意識(どこかに属している・受け入れられている感覚)が重要とされている。
- 大学でのウェルビーイング推進には、一部の課外活動だけでなくカリキュラムへの組み込みと、学生への金銭的負担を生じさせないことが重要な方針として示されている。
■ 出典・注意事項
- 出典:Lee et al., 'Cultivating long-term well-being through transformative undergraduate education', PNAS Nexus, 2024年9月, https://academic.oup.com/pnasnexus/article/3/9/pgae372/7758625
- 注意事項①:本研究はウェルビーイングと大学経験の関連性を示すものであり、特定の経験が幸福を直接引き起こすと証明したものではありません(相関と因果は異なります)。
- 注意事項②:ギャラップ社調査データは主に米国の大学生を対象としており、日本の大学文化や学生の状況にそのまま当てはまるとは限りません。
- 注意事項③:「6つの経験」はあくまで将来のウェルビーイングと関連が見られた要素であり、これらを満たさなければ幸せになれないという意味ではありません。
研究自体の紹介はこちら😊
幸せを育む大学教育とは?
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2024-10-02-1727903947/