はぴテク相談室:ユーモアと心理的ウェルビーイング
最近、仕事でミスが続いていて、落ち込んでいます。職場では明るく振る舞おうとして、自分のことをよくいじったり、同僚をちょっとからかったりして笑いを取ろうとしているんですが、なんか逆に疲れてきて…。ユーモアって、気持ちに良いと思っていたのに、なぜでしょう?
それは辛いですね。実は、ユーモアって一口に言っても、種類によって気持ちへの影響がぜんぜん違うという研究があるんです。日本で行われた研究(笑い学研究、2023年)によると、ユーモアは大きく4種類に分けられて、それぞれウェルビーイング(心の豊かさや充実感)への影響が異なることが分かっています。
4種類もあるんですか!どんな種類があるんでしょう?
はい。①自己高揚的ユーモア、②協調的ユーモア、③自嘲的ユーモア、④攻撃的ユーモア、の4つです。たとえば、ミスをしたとき「これは隠れた才能を探す試みだったんだ!」と自分の状況を面白おかしく前向きに捉えるのが①自己高揚的ユーモア。「私たちって最高のチームだね」とみんなで笑い合うのが②協調的ユーモア。「私って本当にドジで〜」と自分をネタにするのが③自嘲的ユーモア。そして「君の時間感覚、古代文明みたいだね」と他の人をからかうのが④攻撃的ユーモアです。
あ…私がやっているのって、③の自嘲的ユーモアと④の攻撃的ユーモアが混ざっている感じですね。それが疲れる原因になっているんでしょうか?
その可能性はあるかもしれません。この研究によると、④攻撃的ユーモアはウェルビーイングを損なう方向に関連していたという結果が出ています。また③自嘲的ユーモアは、周囲との関係(対人関係的なウェルビーイング)には多少つながる面もあるのですが、自分自身の内面の充実感(自己に関するウェルビーイング)には繋がらなかったり、むしろ若干損なったりする傾向も示されていました。
なるほど…。では、どんなユーモアが自分の気持ちにとって良いんでしょうか?
研究で一番効果がはっきり出ていたのは①自己高揚的ユーモアです。これは、困った状況や失敗を、自分の中で「まあ、笑えるな」と面白く捉え直す、いわば自分の内側から湧くユーモアのことです。ミスをしても「来週の大逆転の伏線だ!」と内心クスッとできるような感覚ですね。これは自己に関するウェルビーイングにも、対人関係に関するウェルビーイングにも、一貫してプラスに関連していました。
自分を攻撃したり人をからかったりするんじゃなくて、状況を自分なりに面白く見るってことですね。でも、②の協調的ユーモアはどうでしょう?みんなで笑えるのはいいことじゃないですか?
いい気づきです!②協調的ユーモアは、確かに周囲との関係(対人関係的なウェルビーイング)にはプラスに関連していました。チームの雰囲気が和んだり、一体感が生まれたりといった面ですね。ただ、自分自身の内面の充実感には直接つながらなかった、という結果も出ています。なので「周りを楽しませよう」という方向だけだと、自分の気持ちが満たされにくい場合もあるかもしれない、ということです。
つまり、職場で笑いを取ろうと頑張りすぎて、自分の内側が置いてけぼりになっていた…ということかもしれないですね。
そう感じられたなら、すごく大事な気づきだと思います。この研究では、「認知的機能」が働くユーモア、つまり自分の見方や解釈を面白く変えるタイプのユーモア(特に自己高揚的なもの)が、ウェルビーイングにとって概して効果的だと結論づけています。一方で、周囲との関係のためだけに使うユーモアは、使い方によっては逆効果にもなりうるとも述べられています。
じゃあ、まずミスをしたときに「笑えるな」と自分の中で思えるような、自己高揚的なユーモアを意識してみるといいかもしれませんね。
それは良いアプローチだと思います!もちろん、すぐにできるようになるわけではないかもしれませんが、状況を「笑えるネタ」として見る練習を意識してみるのは、研究の知見とも合っています。人をからかったり、必要以上に自分を下げたりするユーモアより、自分の中でクスッとできる視点を育てることが、自分自身の充実感につながりやすいと示されているんです。
ありがとうございます。ユーモアにも「どう使うか」が大事なんですね。自分の内側から湧くユーモアを大切にしてみます!
■ 今日のまとめ
- ユーモアには4種類あり、「自己高揚的ユーモア」(困った状況を自分なりに面白く捉え直す)が、自己・対人関係の両面のウェルビーイングに一貫してプラスに関連していました。
- 「攻撃的ユーモア」(人をからかう)はウェルビーイングを損なう方向に関連し、「自嘲的ユーモア」(自分をネタにする)も自分自身の充実感には繋がりにくく、場合によっては逆効果になる可能性が示されています。
- 「協調的ユーモア」は周囲との関係には良い影響がある一方、自分の内面の充実感には直接つながらないという結果も出ており、他者のためだけに頑張るユーモアは自分が疲弊しやすい点に注意が必要です。
■ 出典・注意事項
- 出典:竹内ほか「心理的ウェルビーイングに対するユーモアコーピングの効果―ユーモアの機能と対処方略の関係―」笑い学研究 第30巻, 2023年, pp.63- (https://www.jstage.jst.go.jp/article/warai/30/0/30_63/_pdf/-char/en)
- 【注意事項】本研究は相関関係を分析したものであり、「このユーモアを使えばウェルビーイングが上がる」という因果関係を示したものではありません。
- 【注意事項】本研究は日本国内で行われた研究ですが、対象集団の詳細(年齢層・職業・サンプル規模等)によって結果の一般化には限界がある点にご留意ください。
- 【注意事項】ユーモアの分類や効果は個人差・文化差があり、すべての人に同じように当てはまるわけではありません。
研究自体の紹介はこちら😊
ユーモアと心理的ウェルビーイング
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2024-03-09-1709948192/