はぴテク相談室:作業療法士のウェルビーイング
最近、作業療法士として働いているんですが、毎日患者さんのために一生懸命やっているのに、自分自身がなんだかしんどくて…。燃え尽きそうな感じがするんです。自分のことを後回しにしすぎているのかな、って。
それは本当につらいですね。患者さんのために全力を注いでいるからこそ、自分のことが後回しになってしまう…。実は、作業療法士のウェルビーイングについて研究した日本語の論文があって、まさにそのことが取り上げられているんです。「支援する側の自分自身のウェルビーイングはどうなの?」という問いかけからスタートしている研究です。
へえ、そういう研究があるんですね。具体的にはどんなことが書かれているんですか?
まず、作業療法士が仕事に満足感を感じるためには、いくつかの大事な要素があることが整理されています。「仕事のやりがい」「専門性を発揮できること」「職場の人間関係やチーム連携」「賃金・待遇」「公私のバランス」、こういった要素が職業生活の満足度に関係していると論文ではまとめられています。
確かに…やりがいは感じているんですけど、人間関係のストレスが大きくて。あと自分の成長が感じられないと、なんだかモヤモヤしてしまって。
それ、すごく大事な気づきです。論文でも「向上・成長しようと努力すること」が満足感の構成要素として挙げられています。そして面白いことに、これらの要素は「幸せの4因子」という考え方とも重なっているんです。「やってみよう(挑戦)」「ありがとう(つながり)」「なんとかなる(楽観)」「ありのままに(自分らしさ)」という4つです。
「ありのままに」というのが気になります。自分らしくって、どういうことなんでしょう?
夢や目標を持って努力しながら、自分らしく前向きに生きること、と論文では説明されています。仲間との良い関係を築きながら、自分を偽らずにいること、ともいえます。そしてこの「ありのままに」を支えるのが、実は「セルフ・コンパッション」という考え方なんです。
セルフ・コンパッション?なんですか、それ?
自分自身への思いやり、といえばわかりやすいでしょうか。患者さんに優しくできるように、自分自身にも優しくする、ということです。論文では、バーンアウト(燃え尽き)への対応にも、この幸せの4因子を育てるためにも、セルフ・コンパッションが必要だと述べられています。
自分に優しくする…なんか難しそうですね。具体的にはどうすればいいんでしょう?
論文ではセルフ・コンパッションを高める技法のひとつとして、マインドフルネスが紹介されています。マインドフルネスとは、今この瞬間の自分の状態(気持ちや体の感覚)を、良い・悪いと判断せずにただ観察すること。「あ、自分、今すごく疲れているんだな」と気づいてあげるだけでも、自分への思いやりの第一歩になるんです。
なるほど。自分の状態に気づいてあげることが大事なんですね。なんか、それだけでも少しほっとした気がします。
それはよかったです!論文の最後には「作業療法士がセルフケアをすることが、対象者への質の高い支援につながると思われる」とも書かれています。自分を大切にすることは、決してわがままではなく、むしろ仕事の質にもつながる可能性があるということです。ただ、これはあくまでも論文著者の考察として述べられていることで、因果関係として証明されたわけではない点はお伝えしておきますね。
自分を大切にすることが、患者さんへの支援にもつながるかもしれない…そう考えると、セルフケアをサボることへの罪悪感が少し減る気がします。もう少し自分に優しくしてみようと思います。
■ 今日のまとめ
- 作業療法士の仕事満足度には「やりがい」「専門性」「人間関係」「待遇」「公私のバランス」が関係しており、これらは「幸せの4因子(やってみよう・ありがとう・なんとかなる・ありのままに)」とも重なっている
- バーンアウトへの対応と幸せの4因子を育てるために、自分自身への思いやりである「セルフ・コンパッション」が重要だと論文で述べられている
- セルフ・コンパッションを高める手段のひとつとしてマインドフルネス(今この瞬間の自分の状態をありのまま観察すること)が紹介されており、自分へのセルフケアが支援の質にもつながる可能性が示唆されている
■ 出典・注意事項
- 秋山・前野「作業療法士のウェルビーイング向上のために / How to improve well-being of occupational therapists」作業療法の実践と科学 5巻4号 2023年12月1日 https://www.jstage.jst.go.jp/article/psot/5/4/5_79/_pdf
- 【注意事項】本論文は作業療法士を対象とした文献レビューおよび解説論文であり、実験や縦断調査による因果関係の検証ではありません。セルフ・コンパッションやマインドフルネスの効果についての記述は著者らの考察・提言を含んでいます。他の職種や状況への一般化には限界があります。
研究自体の紹介はこちら😊
作業療法士のウェルビーイング
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2023-12-02-1701558007/