セルフ・コンパッションに焦点を当てた心理学的介入とその職場での活用方法
マインドフルネスによって「苦しみをゆったりとした気づきをもって受け入れ」,
コンパッション(慈悲の瞑想等)によって「(その感情で)苦しんでいる自分自身に優しさを向ける」
というプロセスでセルフコンパッションを高める。
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セルフ・コンパッションに焦点を当てた心理学的介入とその職場での活用方法
有光興記先生
産業精神保健 31(3): 138–142, 2023/10
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjomh/31/3/31_138/_pdf
職業人が抱える様々な困難から立ち直る方法の 1 つとして,セルフ・コンパッションが注目されている.セルフ・コンパッションとは,困難な状況に陥ったとき,自分の感情にバランスよく気づき,そうした経験が他者と共有していることを認識し,自分に優しい気持ちを向けることであり,コンパッションに基づく介入法で高められることが実証されている.その基本的な技法にはマインドフルネス瞑想や慈悲の瞑想があり,その他の技法も含めたプログラムを 5–10週程度継続して実践することで,ウェルビーイングの向上が期待できる.ただし,セルフ・コンパッションを涵養するためにはプログラム中指導者との継続的なやりとりが必要で,職場での活用は今後の課題となっている.
■職場での応用の注意点
CBI の多くはプログラム化されており,MSC(マインドフル・セルフ・コンパッション・プログラム)だと8 週間,LKM(Love-kindness meditation)で5–12週と長期間が必要となる.グループで実施することが可能だが 1 セッションあたり 2 時間程度は必要であり,職場内の研修会で継続実施してことは困難が多いだろう.CBIを実施している外部機関がこれから増加すれば,要支援者にそちらに通ってもらうのが最も効率的かもしれない.
もし産業医や心理師などが研修を実施する機会があれば,本稿で紹介した愛あふれる呼吸や慈悲の瞑想は2–3時間の研修で実践まで指導可能であり,セルフケアの技法の1つとして紹介できる.関心をもった人は,瞑想実践を続けることだろう.
瞑想の実践は,個人のマインドフルネスやコンパッションを涵養していくが,瞑想以外の時間でも実践を行わないと私たちの心は休まることはない.すなわち,日常生活の動作や会話,食事など,究極的には 24 時間マインドフルネスとコンパッションのある状態が望ましく,職場での実践方法も知ってもらうほうがよい.例えば,上司に会ったとき,顔に血が上ったり,不甲斐なさを感じたりしたら,優しくその感覚を受け入れ,そのような感情は誰にでもあることを認識し,自分に優しい言葉をかけて落ち着かせ,その瞬間に戻ってやるべきこと(会話が続いていたら会話,終わっていたらデスクワークなど)を行うといった形で,実践を積み重ねるとよい.
しかし,こうした瞑想は基本的なやり方を聞いて繰り返し1人で実践するだけでなく,わからないところを質問したり,自分の体験を他者と共有するなどして,マインフルネスとコンパッションのある実践方法を段階的に学んでいく必要がある.そのため,研修会以降のフォローアップが必要となる.例えば,マインドフルネスであればスマートフォン・アプリを使った介入が開発されているが,教示の音声や手順を示すことができても,指導者のフィードバックや体験の共有については課題となっている.今後,CBIに関心をもった研究者や支援者がネットワークを作り,そうしたツールを活用し,職業人のメンタルヘルスの改善に寄与できるになることを願ってやまない.