はぴテク相談室:セルフ・コンパッションに焦点を当てた心理学的介入とその職場での活用方法
最近、仕事でミスをするたびに「自分はダメだ」ってずっと自分を責めてしまって…。なかなか立ち直れないんですよね。何かいい方法ってあるんでしょうか?
それはつらいですね。自分を責め続けてしまう気持ち、すごくよくわかります。実は最近、そういうときに役立つ「セルフ・コンパッション」という考え方が注目されているんですよ。聞いたことはありますか?
セルフ・コンパッション…?なんとなく聞いたことある気はするんですが、具体的にはよくわからなくて。
簡単に言うと、「困っている自分に、友人に接するように優しくする」ことです。3つのポイントがあって、①自分の感情にバランスよく気づくこと、②「こういう辛い経験は自分だけじゃなくて、みんな経験することだ」と認識すること、③そのうえで自分に優しい気持ちを向けること、この3つがセルフ・コンパッションの核心なんです。
なるほど。でも「自分に優しくする」って、なんか甘えとか言い訳みたいで、逆にダメになりそうな気がしてしまって…。
その心配、持つ方は多いです!でも研究では、セルフ・コンパッションはウェルビーイング(心の健康や幸福感)の向上と関連していることが示されています。自分を責め続けることとは違って、「ミスを直視しつつも、そこから立ち直る力」を育てることに近いイメージです。
それは少し安心しました。でも、どうやって身につければいいんでしょう?
具体的な方法としては、「マインドフルネス瞑想」と「慈悲の瞑想(じひのめいそう)」という2つの練習が基本になります。マインドフルネスは、自分の辛い感情を「良い・悪い」と判断せずに、ただ「あ、今こういう気持ちがあるな」とゆったり気づく練習。そして慈悲の瞑想は、その苦しんでいる自分に「大丈夫だよ」と優しさを向ける練習です。この2つをセットで行うことで、セルフ・コンパッションが高まると考えられています。
なんだか瞑想って難しそう…。仕事中にもできたりするんでしょうか?
実はそれがポイントで、研究では日常生活の中での実践もすすめられています。たとえば上司に叱られて顔が熱くなったり、不甲斐なさを感じたりしたとき、①その感覚をそっと受け入れる、②「こういう気持ちになるのは自分だけじゃない」と思う、③自分に優しい言葉をかけて落ち着かせる、④そして今やるべきことに戻る、という流れを瞬間的にやってみる、ということです。
それなら仕事中でもできそうですね!でも一人でやっていて本当に効果があるのか不安です。
大事な点を指摘してくれました。研究によると、セルフ・コンパッションを本格的に育てるには、5〜10週間かけたプログラムを、指導者のサポートや他の人との体験共有をしながら続けることが重要とされています。一人でやるだけでは限界があって、「わからないところを聞いたり、自分の体験を誰かと話したりする」プロセスが大切だと指摘されているんです。
そういうプログラムって、どこかで受けられるものなんですか?
「MSC(マインドフル・セルフ・コンパッション)プログラム」など、外部機関で提供されているものがあります。ただ、1セッション2時間×8週間など、かなり時間がかかるので、職場の研修でいきなり全部やるのは難しいというのが現状です。まずはセルフケアの一つとして「愛あふれる呼吸」や「慈悲の瞑想」の基本を学んでみて、興味が持てたらより本格的なプログラムを探してみる、という流れが現実的かもしれません。
なるほど、段階的に試してみればいいんですね。今日から何か一つだけやるとしたら、何がおすすめですか?
今日からできることとして、次にミスをして自分を責めたくなったとき、まず「あ、今すごく辛いな」とその気持ちをただ認めてみてください。それだけで大丈夫です。「こういう気持ちになるのは自分だけじゃない」「誰でも同じ状況でこう感じるよ」と心の中でつぶやいてみる。批判や否定なしに、ただ気づいて優しくする、その小さな一歩がセルフ・コンパッションの入り口になりますよ。
■ 今日のまとめ
- セルフ・コンパッションとは、辛い状況で自分の感情にバランスよく気づき、それが誰にでもある経験だと認識し、自分に優しさを向けることです。
- マインドフルネス瞑想や慈悲の瞑想を中心とした練習を通じてセルフ・コンパッションは高められるとされており、瞑想の場だけでなく日常や職場の場面でも実践を積み重ねることが大切です。
- 本格的に身につけるには5〜10週間のプログラムと指導者のサポートが重要とされていますが、まずは「辛い気持ちをただ認めて、自分に優しくする」という小さな一歩から始めることができます。
■ 出典・注意事項
- 有光興記「セルフ・コンパッションに焦点を当てた心理学的介入とその職場での活用方法」産業精神保健 31(3): 138–142, 2023/10 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjomh/31/3/31_138/_pdf
- 【注意事項】本研究はセルフ・コンパッションとウェルビーイングの関連や介入効果についてまとめたレビュー・解説論文であり、すべての知見が因果関係を示すものではありません。効果の大きさや持続性は個人差や研究設計によって異なります。
- 【注意事項】職場での活用については「今後の課題」と明記されており、効果が職場環境で同様に得られるかは引き続き検討が必要です。
- 【注意事項】紹介されているプログラム(MSC・LKMなど)は指導者のもとで実施されることを前提としており、独学のみでの実践には限界があるとされています。
研究自体の紹介はこちら😊
セルフ・コンパッションに焦点を当てた心理学的介入とその職場での活用方法
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2023-10-06-1696629606/