はぴテク相談室:生徒のウェルビーイングを育む中学理科指導法
最近、子どもが「理科って何の役に立つの?」とよく言うんです。勉強へのやる気も下がってきているみたいで、どうしたらいいか悩んでいます。
それは気になりますよね。実は、まさにその「理科って何の役に立つの?」という疑問に向き合った中学校の研究があるんです。埼玉大学の先生が2023年に発表したもので、「理科の授業のやり方を工夫すると、生徒の将来への見通しが明るくなる」という仮説を立てて、実際に試してみた研究なんですよ。
へえ、授業のやり方でそんな変化があるんですか?どんな工夫をしたんでしょう?
大きく3つの工夫をしています。まず1つ目は、「理科で学んでいること」と「実際の科学技術」をつなげて紹介すること。たとえば電気の単元なら、それが電気自動車や医療機器にどう使われているかを見せる、というイメージです。「勉強=現実世界と関係ある」と感じてもらうのが狙いです。
なるほど!それだけでも「あ、使えるんだ」って思えそうですね。他の2つは?
2つ目は、単元の最後に「科学技術が関係している社会の問題」について考える授業を入れること。資料を読んで自分の意見をワークシートに書き、その後クラスで意見交換するんです。「科学技術は社会の問題解決に使える」という意識と、「自分も考えを言っていい」という感覚を育てることが期待されています。
自分の意見を言う場があるのもいいですね。3つ目はどんなことですか?
3つ目がとくにユニークで、「自分の将来の夢や目標に関係する科学技術を自分で調べてレポートにまとめる」という活動です。「サイエンスポータル」というサイトを使って、たとえばサッカー選手になりたい子はスポーツ科学を、料理人になりたい子は食品技術を調べる、という感じです。
それは面白い!自分の夢と結びついていると、俄然やる気が出そうですよね。先生が職業を決めるんじゃなくて、自分で選べるのがいいですね。
まさにそこがポイントで、以前の研究では「先生が用意した職業リストと生徒の興味が合わないことが多い」という課題があったそうです。だから「生徒自身に選ばせる」方式にしたんですね。レポートを作った後は3〜4人の小グループで発表し合い、付箋でコメントを交換する活動もあります。
発表やコメント交換まであるんですね。この研究、実際にやってみて効果はあったんですか?
はい、この3つの手立てを組み合わせた授業を実際に行った結果、自己効力感(「自分にもできる」という感覚)や挑戦する気持ち、自分の意見を持つ力といった、ウェルビーイングにつながる素養が伸びた、と報告されています。また、この研究でのウェルビーイングの定義は「生徒の将来への見通しが肯定的な状態に高まっていること」で、その改善も見られたとのことです。
うちの子にも、何かそういう経験をさせてあげたいなと思いました。学校の授業以外でも、家庭でできることはありますか?
研究の内容を直接ご家庭に当てはめるのは少し難しい部分もありますが、研究のエッセンスを参考にするなら、「子どもの夢や好きなものと、身近な科学や技術をつなげて話してみる」ことが一つのヒントになりそうです。たとえば料理が好きなら「なんでこの食材は加熱すると色が変わるの?」と一緒に調べてみるとか。自分の興味と学びがつながる体験が、将来への見通しを明るくするきっかけになりうる、という研究の考え方に沿った関わり方かなと思います。
なるほど、日常の中でも「理科って生活に関係あるんだ」と気づかせてあげることが大事なんですね。とても参考になりました!
■ 今日のまとめ
- 「理科」と「科学技術」、「科学技術」と「社会・将来」をつなげる授業設計が、生徒の将来への肯定的な見通しを高めることに関連していると報告されています。
- 自分の夢や目標に関係する科学技術を『自分で選んで』調べる活動は、すべての生徒の関心に合わせやすく、自己効力感や挑戦する気持ちの向上と関連していると示されました。
- 社会の問題について意見を書いたり交換したりする活動が、「科学技術は役に立つ」「自分の考えを表現していい」という意識を育てることが期待されています。
■ 出典・注意事項
- 出典:中村(2023)「生徒のウェルビーイングを育む中学校理科指導法―生徒の将来への肯定的な見通しの改善―」埼玉大学紀要 教育学部, 72(2): 89-102. https://sucra.repo.nii.ac.jp/record/2000195/files/KY-AA12318206-7202-07.pdf
- 注意事項①:本研究は特定の中学校クラスを対象とした実践研究であり、結果がすべての学校・生徒に一般化できるとは限りません。
- 注意事項②:報告されているのは授業実施前後の変化の関連であり、授業が直接的な原因で効果が生じたと断言できるものではありません(因果関係の確定には至っていません)。
- 注意事項③:ウェルビーイングの定義が「将来への見通しの肯定的な改善」と本研究独自の定義であり、ウェルビーイング全般を指すものではない点にご注意ください。
研究自体の紹介はこちら😊
生徒のウェルビーイングを育む中学理科指導法
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2023-11-26-1701039606/