2023.08.25

はぴテク相談室:部活動におけるウェルビーイングを起点としたチームビルディング

相談者

うちの子が野球部に入っているんですが、最近『部活がしんどい』って言うんです。コーチが全部決めて、子どもたちの意見が全然反映されないみたいで…。チームとしてもバラバラな感じがするって。どうにかなりますか?

はぴテクさん
はぴテクさん

それは心配ですね。実は、京都大学の研究グループが、中学校の野球部を対象に「ウェルビーイング(心の豊かさ)を出発点にしたチームビルディング」という取り組みを研究しています。お子さんの状況にとても関連する内容なので、一緒に見ていきましょう!

相談者

ウェルビーイングを出発点にしたチームビルディング…?なんか難しそうですね。

はぴテクさん
はぴテクさん

難しく聞こえますが、要は「みんなが心地よく活動できるチームをどう作るか」という話です。この研究が面白いのは、まず最初のステップとして『顧問(コーチ)が決めるのではなく、生徒たち自身が、部活でどんなことを大事にしたいかを話し合って決める』ことを重視している点なんです。

相談者

子どもたち自身が決める、ですか。でも、野球の技術的なことはコーチが教えるものじゃないんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

もちろん技術指導はコーチの役割ですよね。でもこの研究が注目しているのは、技術とは別の話で、「地域とのつながりや自分の成長など、何を大切にして部活に取り組むか」という価値観の部分です。それを生徒たちが自分たちで話し合って共有することが、チームのまとまりやひとりひとりのやる気につながる、という考え方なんです。

相談者

なるほど。じゃあ具体的にどんな流れで進めるんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

この研究では4つのステップが提案されています。まず①自分の目標とチームとして大事にしたい価値観を考えて共有する。次に②チーム全体の共通目標を生徒たちの話し合いで決める。そして③その目標に向けて各自が具体的な行動を試してみて、どう感じたかを振り返る。最後に④その振り返りをチームで共有してまたアイデアをみがいていく。この①〜④をぐるぐると繰り返していくサイクルです。

相談者

振り返りを繰り返す、というのがポイントなんですね。でも、それでチームが本当にまとまるものなんでしょうか?

はぴテクさん
はぴテクさん

そこで登場するのが「Self-as-We(われわれとしての自己)」という面白い概念です。京都大学の哲学者・出口康夫さんが提唱したもので、簡単に言うと『自分の行動は、実はチームみんなの参加があってはじめて成り立っている』という見方です。野球で言えば、自分がヒットを打てるのも、バッテリーや守備陣やベンチのみんながいるから、という感覚ですね。

相談者

それはなんか…チームスポーツっぽい感覚ですね。でも、それが『しんどい』の解決とどうつながるんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

大事なポイントがあって、Self-as-Weは『みんなに合わせなきゃいけない同調圧力』とは全然違います。『チームから役割を委ねられた、自律した自分』として動ける感覚、というのがポイントなんです。この感覚が育まれると、抑うつ傾向との関連も報告されています(ただしこれは相関の研究なので、直接の原因とは言い切れませんが)。コーチが全部決めてしまうと、この『委ねられた自分』という感覚が育ちにくくなる可能性があります。

相談者

なるほど!『言われたことをやるだけ』じゃなくて、『自分がチームに貢献できている』という実感が大事なんですね。

はぴテクさん
はぴテクさん

まさにそうです!研究ではこの感覚を測るための7つの要素として、一体感・両動感(お互いが動き合う感じ)・被委譲感(役割を任されている感じ)・開放性・全体性・脱中心性・仲間性を挙げています。お子さんが『バラバラな感じ』と言っているのは、これらの感覚が育ちにくい環境になっているサインかもしれませんね。

相談者

具体的に家庭でできることや、学校に伝えられることって何かありますか?

はぴテクさん
はぴテクさん

まずご家庭では、お子さんに『部活でどんなことを大事にしたいと思う?』と聞いてみることが一歩になるかもしれません。この研究のフレームワークでは、自己理解と他者理解を深める対話が出発点なので、親子での対話もその練習になります。学校や顧問の先生へは、『生徒たちが自分たちで価値観や目標を話し合う時間を設けてみませんか』と提案してみるのも、この研究の知見に沿ったアプローチです。甲子園でBEST4に入った土浦日大高校にはウェルビーイング委員会があるそうですし、部活×ウェルビーイングの取り組みは注目されてきていますよ。

■ 今日のまとめ

  • 生徒たち自身が部活の価値観や目標を話し合って決めるプロセスが、自己決定感ややる気につながると研究では示されています。
  • 「Self-as-We(われわれとしての自己)」という概念がポイントで、同調圧力ではなく『チームから役割を委ねられた自律した自分』として動ける感覚が、チームのウェルビーイングに関連すると考えられています。
  • 振り返りと共有のサイクルを繰り返すことで、一体感・被委譲感・仲間性などのチームの質を高めていくフレームワークが提案されています。

■ 出典・注意事項

  • 横山実紀・渡邊淳司・佐々木耕佑「部活動におけるウェルビーイングを起点としたチームビルディングの検討 ――富良野市の中学校野球部における取り組み――」京都大学文学部哲学研究室紀要 2023, 22: 19-41 (2023/8/25) https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/284739/1/Prospectus_22_19.pdf

  • 【注意事項】本研究は特定の中学校野球部を対象とした実践研究であり、すべての部活動や年代に同様の効果が得られるとは限りません。

  • 【注意事項】Self-as-Weとウェルビーイング(抑うつ傾向など)との関連は相関研究に基づくものであり、Self-as-Weを高めることが直接ウェルビーイングを向上させる因果関係が証明されているわけではありません。

投稿者によるコメント・補足(1件)
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研究自体の紹介はこちら😊
部活動におけるウェルビーイングを起点としたチームビルディング
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2023-08-25-1693004407/

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