2026.06.21
幸福追求方法と学業上のストレス
〜成長や自己実現を求める学生は、学業上のストレスが低下する〜
という最新研究。
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最近の学生さんは学業上のストレスが凄い。
でも、幸せだとそれが打ち消されるのでは?
特に、その幸せを追う方法と、学業上のストレスの関係性を調査頂きました。
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幸せを追う方法は、3つあると言われています。
①ヘドニック志向的動機
快やくつろぎ、心地よさ、面白さを求める
②ユーダイモニック志向的動機
自己実現や、人生の意味、成長を求める
③外発的動機
人気や権力、地位や名声を求める
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高校1年生744名に対して、幸福追求動機や学業上のストレスを測って、
7ヶ月後に、再度測った。
ー
どの方法が学業上のストレスを低減させるかを見ると、
①ヘドニック志向的動機:快やくつろぎ
は、特にストレスを上げも下げもしなかった。
短期的には効くかもですが、長期スパン(7ヶ月後)では関係なかった。
③外発的動機:人気や地位
は、むしろ学業上のストレス(テスト不安、燃え尽き)を高めた。
そして、
②ユーダイモニック志向的動機:自己実現や成長
は、学業上のストレスを低下させていた。
メカニズムとしては、
自己実現や成長を目指すことで、実際に幸福度(Flourishing)が向上し、
それが学業上のストレスを低下させていた。
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とのことで、
高校生も、ちゃんと幸せを追うことで、幸福度が高まるし、
それによってストレスも低下する。
ということ😊
何も知らない状態で幸せを追うと、①ヘドニックや③外発的な方を追っちゃいがちなので、
高校生にもちゃんと幸せの基礎知識を伝えるのって大事だな。
そして、ちゃんと幸せを追っていれば、
特に何かしなくても、勝手に幸福度高められる。というのも面白い❗
やっぱり、ウェルビーイングを必須科目に出来ると良いなぁ。
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エウダイモニア志向的動機は、ヘドニア志向的動機や外発的動機とは異なり、青年期の学業ストレスを軽減する—繁栄を介した間接効果
Eudaimonic but not Hedonic or Extrinsic Motives Predict Less Academic Distress Among Adolescents—Indirect Effect via Flourishing
Li Lin, Hoi-Wing Chan & Joyce Lok Yin Kwan
Journal of Happiness Studies,2026/6/19
https://link.springer.com/article/10.1007/s10902-026-01069-5
幸福に関する文献では、日々の活動における幸福追求の主な方法として、快楽的動機(例:楽しみを求める)、自己実現的動機(例:成長を求める)、外発的動機(例:名声を求める)の3つが挙げられています。これまでの研究では、これらの異なる幸福動機が個人の幸福にどのように貢献するかが主に検討されてきましたが、幸福動機の形成と学業上の要求の高まりという重要な時期における青少年の学業上のストレスとこれらの動機がどのように関連しているかについてはほとんど知られていません。本研究では、2波縦断的デザインを用いて、744人の高校生(平均年齢 = 15.59 ± 0.56 歳)を対象に、幸福動機と学業上のストレス(テスト不安と学校での燃え尽き症候群の訴えによって指標化)との関連性を調査し、特に繁栄の媒介的役割に焦点を当てています。交差遅延パネルモデルによると、幸福追求動機(快楽追求動機ではない)は7か月後の学校での燃え尽き症候群のレベル低下を予測し、外発的動機はテスト不安と学校での燃え尽き症候群の訴えのレベル上昇を予測した。半縦断的媒介分析では、幸福追求動機はその後の繁栄のレベル上昇を予測し、繁栄はその後のテスト不安と学校での燃え尽き症候群の訴えのレベル低下を予測し、繁栄を介した間接効果が示唆された。しかし、快楽追求動機/外発的動機と学業上の苦痛との関連において、繁栄の間接効果は認められなかった。現代の青少年の学業上のプレッシャーの高まりを考慮すると、これらの知見は、幸福追求動機が重要な心理的資源である繁栄を構築する原動力として機能し、学業上の苦痛を軽減するのに役立つ可能性がある一方、外発的動機は学業上の苦痛を増幅させる可能性があることを示唆している。
幸福の追求と学業ストレス:どの「幸せ」があなたを救うのか? 現代の高校生は激しい学業プレッシャーに直面していますが、幸福の求め方次第で、そのストレスを軽減できるかどうかが決まります。本研究は744名の高校生を1ヶ月間追跡し、自己成長を求める姿勢が学業ストレスに対する3強力な盾になることを明らかにしました。 3つの幸福動機とその明暗 「成長と意味」の追求 (ユーダイモニア的) 自己の可能性を追求するユーダイモニア的動機は、学業成長を有益に導きます。 「名声と地位」の追求 (外的な動機) 他者からの賞賛やステータスを求める外的な動機は、試験不安と燃え尽きを激増させます。 「楽しさ」の追求 (ヘドニック的) 快楽やリラックスを求めるヘドニック的動機は、学業ストレスには寄与しません。 ストレスを防ぐメカニズム:フローリッシング 成長の追求が「心理的資源」を蓄える 成長を追求する生徒は、人生の意味、有能感、適応力といった心理的資源を蓄えます。 フローリッシングが学業ストレスの鎧盾に 蓄えられた心理的資源が、高い学業要求に対する適応力を高め、不安や倦怠を抑制します。 減少 学業燃え尽き を有益に減少 減少 試験不安 影響なし 増加 試験不安 燃え尽き を有益に増加 増加 燃え尽き を有益に増加 減少 試験不安 影響なし 減少 燃え尽き 影響なし 幸福の追求は、学業の妨げになるのか? 10代の「学業的苦痛」を防ぐ、見えない心理的資源のメカニズム 744名の高校生を対象とした7ヶ月間の縦断的学術研究が明かす、プレッシャーに打ち勝つための「3つの動機」 Notebooklm 現代の青少年に立ちはだかる「ジレンマ」 思春期において、学業的卓越性の追求は最優先され、しばしば「幸福の追求」は後回りにされます。しかし、高まる学業的要請(プレッシャー、試験、親の期待)は、深刻な「学業的苦痛(テスト不安や燃え尽き症候群)」を引き起こしています。 高まる学業的要請 幸福の追求 核心的な問い:「幸福を追求することは、学業のプレッシャーに対する適応を促進するのか、それとも阻害するのか?」 フレームワーク:日常の活動の背後にある「3つの幸福動機」 1. 快楽的動機 (Hedonic) 2. ユーダイモニア的動機 (Eudaimonic) 3. 外発的動機 (Extrinsic) Definition 楽しさ、快適さ、リラックス を求める 成長、卓越性、自己の真実、 意味を求める 地位、名声、他者からの評価や 人気を求める Time Focus 短期的(即時的な欲求の充足) 長期的(持続的な自己実現) 外部依存(報酬や評価に基づく) Example 息抜きにゲームをする 難しい課題に挑戦しスキルを磨く クラスで一番になるために勉強する 🔖 Notebook.bg 見えない盾: 「Flourishing (心理的繁栄)」のカ プレッシャーに適応するためには、精神的なエネルギーが必要です。 「拡張・形成(Broaden-and-Build)理論」と「資源保存(COR)理論」によれば、特定の行動は、ストレスを軽減する「心理的資源」を構築します。 Flourishing Flourishing(心理的・社会的繁栄):人生の意味、有能感、自己心、他者との良好な関係を持つ、心理的機能。 機能:この「見えない盾」は、認知のキャパシティを上げ、ストレスに対するより良い対処戦略を可能にします。 Eudaimonic Motives Notebooklm 研究アプローチ:相関関係を超えて「因果の方向」を探る 対象者:高校生 744名(平均年齢15.59歳) 7ヶ月間の追跡: 交差遅延パネルモデル(CLPM)による 半縦断的媒介分析 Time 1 (Wave 1): 高校1年・秋学期末 (動機、葛来、学業的 苦痛を測定) Time 2 (Wave 2): 高校1年・春学期末 (変化を測定) この縦断的デザインにより、「学業的苦痛が動機を変えたのか」、それとも「動機が学業的苦痛を変えたのか」という時間の前後関係を明らかにします。 結果1:ユーダイモニアの「間接効果」(資源の構築) ユーダイモニア的動機 (成長・意味の追求) 直接的なプラス効果:+0.15 Flourishing (心理的業業の向上) マイナス効果=苦痛の軽減 ユーダイモニア的動機 (成長・意味の追求) Flourishing (心理的業業の向上) テスト不安の軽減(-0.19)/ 燃え尽き症候群の軽減(-0.13) 成長や自己実現を求める動機は、直接的に成績を上げるためではなく、 まず「Flourishing」という涯ばな心理的資源を蓄積させます。 この蓄積された資源が、結果として学業的な苦痛を知らげる緩和材として機能します。 結果2:外発的動機の「罠」(直接的なダメージ) Flourishingを経由しない/盾を迂回 直接的なプラス効果=苦痛の増幅 外発的動機 (地位・報酬・名声の追求) Flourishing (心理的繁栄の向上) テスト不安の増加 (+0.14) / 燃え尽き症候群の増加 (+0.07) 評価や報酬を主目的とする動機は、心理的資源(Flourishing)を構築しません。むしろ、「自己価値を『テストの点数』などの外部目標に強く結びつけてしまったため、不安と燃え尽きを直接的に増幅させる危険な罠となります。 結果3:快楽的動機の「中立性」(一時的な風) 快楽的動機 (楽しさ・リラックス の追求) 相関なし 資源の構築にも、 苦痛の増減にも 長期的な影響を 与えない 息抜きやリラックスは、一時的な回復(ショートターム の快楽)には役立つかもしれません。しかし、7ヶ月という長期スパンで見ると、それは慢性的プレッシャーに対する根本的な解決策(肩)にはならず、学業的苦痛の増減には直接関与しませんでした。 負の連鎖:燃え尽きが生む「喪失スパイラル」 データの逆方向の分析から、もうーつの重要な事実が判明しました。初期の「燃え尽き症候群」は、単なる結果ではなく、未来の心理的資源を破壊する原因になります。 Time 1: 学校への燃え尽き (School Burnout) 盾の破壊: -0.12 Time 2: Flourishing (心理的繁栄) の低下 資源保存(COR)理論の「喪失スパイラル」が示されています。燃え尽きを放置すると、自尊心や有能感などの資源が枯渇し、さらなるストレスに対して無防備になるという悪循環に陥ります。 Master Synthesis: 心のエネルギー生態系 快楽的動機 Gray Path: 快楽の追求は、長期的な構造を何も変えない。(一時的影響) Blue Path: 成長の追求は、単かか心を高げ、プレッシャーを跳ね返す。(獲得スパイラル) ユーダイモニア的動機 Flourishing (心理的栄栄) 学業的苦痛 (テスト不安& 燃え尽き) 外来的動機 Red Path: 評価の追求は、心をすり減らし、プレッシャーを直撃させる。(直接的ダメージ) 「何をモチベーションにするか」が、数ヶ月後の生徒の心理的防御力を決定づける。 長期的な心理的耐性の構築
■幸福追求動機 HEEMA(Hedonic, Eudaimonic, and Extrinsic Motives for Activities)
あなたは日々の活動に、次の各動機でどの程度取り組んでいますか(実際に達成できるかは問わない)」、7件法(1=まったくあてはまらない 〜 7=とてもあてはまる)
●ヘドニック動機(快・くつろぎを求める/6項目)
楽しさ(enjoyment)を求める
喜び・快(pleasure)を求める
おもしろさ・ファン(fun)を求める
リラックス(relaxation)を求める
気楽さ・のんびりすること(taking it easy)を求める
くつろぎ・心地よさを求める
●ユーダイモニック動機(意味・卓越を求める/5項目)
自分の最良の部分を活かすことを求める
技能を高め、学び、洞察を得ることを求める
自分が正しいと信じることを行うことを求める
卓越や個人的な理想の追求を求める
成長・自己実現に関わる意味を求める
●外発的動機(地位・名声を求める/5項目)
高い地位や名声を持つことを求める
名声と地位を求める
権力と支配力を求める
称賛され広く知られることを求める
人気があり、魅力的な社会的イメージを持つことを求める
Flourishing Scale(FS-J、Diener et al. 2009/日本語版 Sumi 2013)
各項目に7段階(1=まったくちがう 〜 7=まったくそうだ)で回答します。
私は目的や意味のある生活をおくっている
私の人間関係は私にとって支えであり、価値あるものだ
私は日々の活動に興味をもって取り組んでいる
私は他者の幸福や健康に、積極的に貢献している
私には大切な活動(勉強・仕事等)のための能力や実力がある
私はよい人間であり、よい生活をおくっている
私は将来について楽観的だ
人は私を尊重してくれる
【背景】
■ 出発点:東アジアの「幸福 vs 学業」というジレンマ
東アジア社会では、青年期に学業の成功が最優先され、幸福の追求は後回しにされがちです(Li & Ho, 2024; Rudolf, 2024)。一方で生徒たちは、高負荷の試験・大量の課題・親からの高い期待にさらされ、その「学業ストレス(academic distress)」が心身の健康を脅かしています(Steare et al., 2023; WHO, 2024)。
▼ ここから生まれた問い
幸福を求めることは、学業への適応を「助ける」のか、それとも「邪魔する」のか?
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■ 鍵になる枠組み:「幸福の3つの動機」
幸福をどう追い求めるか、その動機を分類する考え方です(Huta & Waterman, 2014; Huta, 2016)。
・ヘドニック動機(hedonic)… 快楽・リラックスを求める動機。「楽しさ」「心地よさ」を求める。
・ユーダイモニック動機(eudaimonic)… 成長・卓越・本来の自分らしさ・人生の意味を求める動機。
・外発的動機(extrinsic)… 地位・名声・人気など、外からの報酬や評価を求める動機(LeFebvre & Huta, 2021 が後から追加)。
※「ユーダイモニア/ヘドニア」は古代ギリシャ哲学に由来する幸福観の区別で、前者は「人としてよく機能し意味を生きること」、後者は「快を最大化すること」を指します。
▼ 理論的な予測
ヘドニック動機 → 即時的な快を求め、ポジティブ感情を高める。
ユーダイモニック動機 → 長期的充実や意味を求め、目標達成や心理社会的機能を高める。
外発的動機 → 幸福への貢献が疑わしい。
外発的動機が問題視される根拠が、自己決定理論(SDT)の下位理論である「目標内容理論(goal content theory)」です(Kasser & Ryan, 2001)。外的報酬に依存すると、人間の基本的な3つの心理的欲求 ―― 自律性(自分の意志で動けている感覚)、関係性(つながり・尊重されている感覚)、有能感(うまくできているという感覚)―― を満たす活動が押しのけられ、結果としてウェルビーイングを損なう、とされます。
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■ 実証研究が示してきたこと(動機ごとの違い)
・ヘドニック動機 … ポジティブ感情・活力は高い一方(Giuntoli et al., 2020; Huta & Ryan, 2010)、自制心や将来展望は低い傾向(Gentzler et al., 2021; Pearce et al., 2021)。
・ユーダイモニック動機 … 人生満足・意味だけでなく、対人(友情・共感)、学業(学業達成)、道徳の各面で良好な適応(Gentzler et al., 2021; Kryza-Lacombe et al., 2018; Cui et al., 2023)。
・外発的動機 … 研究例が極めて少なく、ポジティブ感情や人生満足とは無関係(Subasi, 2024)、抑うつ・不安症状とは正の関連(Lin et al., 2025)。
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■ 学業への影響:まだ手薄だった領域
幸福動機と「学業適応」を結びつけた研究は、当時わずか3本しかありませんでした。
・Kryza-Lacombe et al. (2018) … ユーダイモニック動機(ヘドニックではなく)が高成績と関連(米国の大学生)。
・Chen & Zeng (2022, 2024) … ユーダイモニック動機は学業エンゲージメント・GPA上昇・先延ばしの減少と関連。ヘドニック動機は逆のパターン(中国の大学生)。
※GPA … 成績平均値。
▼ これらの限界
すべて大学生サンプルかつ横断研究(ある一時点だけのデータ)のため、因果の向き(動機が適応に影響するのか、その逆か)が分からない。高校生への一般化も難しい。
▼ さらに未解明だった点
外発的動機が学業に効くかは誰も調べていませんでした。ただし「人生目標」研究では、富・名声志向の目標は学習を表面的にし成績を下げうること(Vansteenkiste et al., 2006, 2009)、中国の青年で名声志向の目標が1年後の学業低下を予測したこと(Zhoc et al., 2019)、外的人生目標の強い大学生は学業ストレスが高いこと(Ameer et al., 2022)が示されていました。
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■ 「なぜ」をつなぐ概念:フラリッシング(flourishing)
動機が学業ストレスにどう「変換」されるのか、その仕組みを説明する鍵として導入されたのが flourishing です。
※フラリッシング … 人生の意味・有能感・自尊心・良好な人間関係などを含む、多面的で良好な心理社会的機能を指すウェルビーイングの概念(Diener et al., 2010)。
これを支える2つの「資源(リソース)理論」があります。
・拡張–形成理論(broaden-and-build theory)… ポジティブ感情が思考と行動の幅を広げ、長期的に「持続的な心理的資源」を作り、ストレスへの対処力やレジリエンスを高める(Fredrickson, 2001)。
・資源保存理論(COR theory)… 人は価値ある資源を獲得・保護・蓄積しようとする。初期資源が多いと「獲得スパイラル」で好循環、逆に資源が枯渇すると「喪失スパイラル」で悪循環に陥る(Hobfoll, 2002)。
▼ ここから導かれた予測
資源を築く動機ほど学業ストレスを和らげる、という「資源構築経路(resource-building pathway)」。
・ユーダイモニック動機 → フラリッシングを高める(中国の青年で、8か月後のフラリッシング上昇を予測:Li et al., 2022)。
・外発的動機 → 基本的欲求を満たさず、フラリッシングを下げる(Bradshaw et al., 2023)。
・フラリッシングが高い → 学業適応が良く、先延ばしが少なく、学業ストレス(燃え尽き・試験ストレス)が低い(Datu, 2018; Datu et al., 2020; Howell, 2009; Cengiz et al., 2025; Xiang et al., 2019)。
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■ 学業ストレスの2つの指標
本研究は学業ストレスを次の2つで測ります。
・試験不安(test anxiety)… 試験・テスト場面での緊張・恐れ・心配と、それによる機能の低下(von der Embse et al., 2018)。
・学校バーンアウト(school burnout)… 学業の慢性的ストレスによる疲弊と、勉強への冷めた態度。臨床的な「燃え尽き症候群」と区別するため「学校バーンアウト愁訴(complaints)」と呼んでいます(Schaufeli et al., 2002; De Beer & Schaufeli, 2025)。
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■ まとめ:この研究が立っている土台
先行研究は「幸福動機は個人のウェルビーイングに差をもたらす」ことは示してきたものの、
・高校生を対象にしていない
・縦断研究(時間を追ったデータ)が乏しく因果の向きが不明
・外発的動機の学業への影響は未検討
・動機が学業ストレスに変わる「仕組み」が未解明
という空白がありました。本研究は、中国の高校生を7か月間隔の2時点で追い、「ユーダイモニック動機 → フラリッシング(資源)→ 学業ストレス低減」という経路を検証することで、この空白を埋めようとしています。
【研究内容】
■ 何を検証したのか(仮説)
3つの幸福動機を同時に分析に入れたとき(互いの重なりを除いて純粋な効果を見るため)、次のように予測しました。
▼ 直接の効果について
・H1a … ユーダイモニック動機は学業ストレスを下げる
・H1b … ヘドニック動機は学業ストレスと無関係
・H1c … 外発的動機は学業ストレスを上げる
▼ フラリッシング(意味・有能感・良好な人間関係などを含む良好な機能の状態)を介する効果について
・H2a … ユーダイモニック動機はフラリッシングを高める
・H2b … ヘドニック動機はフラリッシングと無関係
・H2c … 外発的動機はフラリッシングを下げる
・H3 … フラリッシングは学業ストレスを下げる
・H4a / H4b … フラリッシングが、ユーダイモニック動機/外発的動機と学業ストレスの関係を「仲介(媒介)」する
※媒介(mediation)… 「A→C」が直接ではなく「A→B→C」という中間項Bを経由して起きること。ここではBがフラリッシング。
▼ 逆向きの関係(探索的に検討)
・H5 … 学業ストレスはフラリッシングを下げる
(その他の逆向きの関係は、先行研究が乏しいため仮説なしで探索)
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■ 方法
▼ 対象と手続き
・中国南部のある公立高校の10年生(高校1年生)が対象。
・1回目(2024年12月)に839名、2回目(2025年7月、7か月後)に748名が回答。継続率89.2%。
・注意チェックに失敗した4名を除き、最終的に744名(平均15.59歳、女子52.8%)を分析。
・7か月という間隔は、高校生活への移行という変化と高ストレスの時期を捉えるのに適切、と設定。
※脱落分析の注記 … 残った生徒は、脱落した生徒に比べて外発的動機がやや弱く、バーンアウトもやや低い傾向がありました。つまり「しんどい子ほど抜けやすい」可能性があり、結果を読む際の留意点になります。
▼ 測定(すべて7件法の自己報告)
・幸福動機 … HEEMA尺度。ヘドニック6項目、ユーダイモニック5項目、外発的5項目。
・試験不安 … 中国版テスト不安尺度(4項目)。
・学校バーンアウト … MBI-SS(マスラック・バーンアウト尺度・学生版)の「疲弊」と「冷笑(勉強への冷めた態度)」の9項目。なお3つ目の下位尺度「効力感」は、真のバーンアウトを反映しにくいとの批判から除外。
・フラリッシング … Flourishing Scale(8項目)。
▼ 分析手法
・交差遅延パネルモデル(CLPM)を使用。
※CLPM … 2時点のデータを使い、「時点1のA」が「時点2のB」を予測するか、を相互に調べる手法。各変数の「前の自分(自己回帰)」を統制したうえで、変数間の時間的な前後関係(どちらが先か)を検討できます。
・媒介は「半縦断的媒介(half-longitudinal mediation)」で推定(Cole & Maxwell, 2003)。時間の前後を各経路に組み込む方法。
・信頼区間はブートストラップ(1万回リサンプリング)で算出。区間が0をまたがなければ「効果あり」と判断。
・分析前に「測定の不変性」を確認 ―― 2時点で同じものを同じように測れているか。配置・計量・切片の各レベルで不変性が確認され、経時比較が妥当と判断されました。
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■ 結果
▼ 主効果モデル(フラリッシングを入れない、動機→学業ストレスの直接の関係)
・外発的動機 → 7か月後の試験不安を高めた(β=.13)。
・外発的動機 → 7か月後の学校バーンアウトを高めた(β=.08)。
・ユーダイモニック動機 → 7か月後の学校バーンアウトを下げた(β=−.10)。
・ヘドニック動機 → 試験不安・バーンアウトのどちらとも無関係。
→ 仮説H1a・H1b・H1cを「部分的に」支持。
※β(標準化係数)… 効果の強さを示す目安。0に近いほど弱く、±が向きを表します。ここでの値はおおむね小〜中程度。
▼ 媒介モデル(フラリッシングを間に入れる)
・ユーダイモニック動機 → フラリッシングを高めた(β=.11)。ヘドニック・外発的動機は無関係。
・フラリッシング → 試験不安(β=−.17)と学校バーンアウト(β=−.15)を下げた。
・ブートストラップの結果、ユーダイモニック動機 → フラリッシング → 学業ストレス低減 という間接効果が有意。ヘドニック・外発的動機では間接効果なし。
→ ユーダイモニック動機についての媒介仮説(H2a・H3・H4a)を支持。
▼ 外発的動機について(予測と違った点)
・外発的動機はフラリッシングを介さず、試験不安を直接高めていました(β=.12)。
→ フラリッシング経由の仮説(H2c・H4b)は不支持。外発的動機の害は別の経路で働いている可能性。
▼ 逆向きの関係(探索)
・唯一見つかったのは、時点1の学校バーンアウト → 時点2のフラリッシング低下(β=−.10)。
・学業ストレスが動機を変える、という証拠は見つからず。
→ 「動機が学業ストレスの原因側にある」という方向性を支持。
▼ 頑健性チェック(感度分析)
・性別・親の学歴・ベースラインの全般性不安(GAD-7で測定)を統制しても、外発的動機→試験不安、ユーダイモニック動機→(フラリッシング経由の)学業ストレス低減、はいずれも維持。
・脱落者を除かない全サンプルでも主要な結果は概ね不変(ただしバーンアウト→フラリッシングの逆向き効果は非有意化)。
→ 主要な発見は頑健と判断。
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■ 考察
▼ ユーダイモニック動機 ―― 「資源を築く」経路
成長・意味・卓越を求める動機は、フラリッシングという心理的資源を高め、それが学業ストレスを和らげる、という流れが確認されました。フラリッシングが高い生徒は、適応的な学習目標を立て、効果的な学習・対処方略を使う傾向があり、それが学業ストレスの低さにつながると解釈されています。これは拡張–形成理論やCOR理論(資源が好循環を生む)と整合します。
▼ 外発的動機 ―― 直接的に害になる
地位・名声を求める動機は、フラリッシングを介さずに試験不安を直接高めました。著者らは、外的報酬を求める習慣が自己価値を試験結果などの「外的な指標」に結びつけ、結果に過敏にさせる可能性を挙げています。なお7か月では、外発的動機がフラリッシングを損なう害を捉えるには短すぎた可能性も指摘。
▼ ヘドニック動機 ―― 役にも害にもならず
快楽・リラックスを求める動機は、学業ストレスと無関係でした。一時的な気晴らしにはなっても、慢性的な学業ストレスを和らげるには不十分と解釈。ただし、即時的な楽しみより長期的成功を重んじる中国文化の文脈で読む必要があり、文化横断的な比較が今後の課題とされています。
▼ 悪循環の示唆
学校バーンアウトがその後のフラリッシングを下げる、という逆向きの関連も見つかり、「低いフラリッシング ⇄ バーンアウト」の悪循環の可能性が示唆されました。
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■ 限界
・2時点のみのデータで、媒介プロセスが時間とともにどう展開するかは十分に追えない。個人内の変化と個人差を分離できないため、より高度なモデル(RI-CLPM、最低3時点が必要)が望ましい。
・すべて自己報告。親・教師など他者からの評価との併用が望まれる。
・中国の一都市の1校のみで、一般化には注意。発達段階・学校種・都市/農村などの違いを今後検証すべき。
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■ 結論・実践への示唆
ユーダイモニック動機は学業ストレスを下げ(フラリッシングという資源を介して)、外発的動機は学業ストレスを上げる ―― 高校生でこの差が縦断的に確認されました。
ウェルビーイングは学業達成と「トレードオフ(あちらを立てればこちらが立たず)」ではなく、むしろ学業を支える資源になりうる、という点が重要なメッセージです。実践的には、
・生徒のユーダイモニック動機(成長・意味の追求)を育て、その活動からウェルビーイングを得られるよう支援する。
・外的報酬や評価ばかりを動機づけの中心に据えることには慎重であるべき。
という提言で締めくくられています。