はぴテク相談室:推し活の光と影
最近、推し活がしんどくて…。ライブのチケット取れなかったり、グッズ全部集めなきゃって焦ったり、SNSも全部チェックしないと不安で。でも友達には「好きなことなんだから楽しめばいいじゃん」って言われて、なんか自分がおかしいのかなって思うんです。
それ、全然おかしくないですよ。実は和洋女子大の市村先生らが2025年に発表した研究で、まさにそういう「推し活のしんどい側面」を心理学的に調べているんです。推し活にはポジティブな面もある一方で、「疲れ」につながる心理的な特徴があることが示されています。あなたが感じていることは、研究でも確認されている実際の現象なんですよ。
そうなんですか!どんな研究なんですか?
女子大学生を対象にした2つの調査です。まず最初の調査では、推し活でどんな場面にポジティブ・ネガティブな感情を感じるかを聞きました。ネガティブな感情が生じる場面として一番多かったのは「金銭的・物理的な負担」で、次に「他のファンとの比較」「義務感」なども挙がっていました。「冷めてきているのにライブの受付が始まってしまった」みたいな義務感って、思い当たりませんか?
あ、めちゃくちゃ思い当たります…。「行かなきゃいけない」みたいな感じ、あります。あとグッズも全種類集めないと落ち着かないんですよね。
その「しなければいけない」という感覚を、研究では「使命・義務感」と呼んでいます。そしてもう一つ、「グッズを全種類集めたい」「SNSを一件も見逃したくない」という「全てをこなしたい」という欲求を「完全主義的な欲求」と呼んでいます。2つ目の調査(女子大学生98名対象)では、この2つが推し活への「疲れ」とどう関係するか調べたんです。
それで、どういう結果だったんですか?
まず、使命・義務感が高い人ほど完全主義的な欲求も高い、という強い関連が見られました(相関係数r=.82)。そして、使命・義務感が高いほど推し活への疲れを感じやすく(r=.28)、完全主義的な欲求が高いほど疲れやすい(r=.32)という関連も示されました。さらに、推し活への疲れを感じているほど精神的に不健康になりやすい(r=.32)という関連も確認されています。ただし、これらはあくまで「関連がある」という話で、どちらかが原因でどちらかが結果、と断言できるものではありません。
じゃあ、SNSを全部チェックしようとしたり、グッズを全種類集めようとするのが「完全主義的な欲求」で、それ自体が疲れにつながってるってこと?
関連があるということは言えます。本来楽しいはずの活動——グッズ集めやイベント参加——を「全てこなさなければ」と感じると、疲れにつながりやすいというのが研究の示すところです。面白いのは、完全主義的な欲求そのものは精神的健康と直接の有意な関連は見られなかった点。疲れを経由して精神的健康に影響している可能性が示唆されています。
なるほど…。あと、推し活を長く続けていると義務感が増すって感じもするんですが、そういうのも調べていますか?
調べています!最初の調査で、推し活の期間が長いほど義務感を感じやすいという正の相関(r=.33)が示されました。長く続けるほど義務感が芽生えやすくなる可能性があるということですね。ただ、2つ目の調査では、推しの対象の種類や推し歴の長さと、使命・義務感や完全主義的な欲求との間には直接の関連は見られませんでした。どんな推しでも、どれくらいのベテランファンでも、こうした気持ちは起こりうるようです。
それを聞いてちょっとほっとしました。じゃあ、推し活ってやっぱりやめた方がいいんでしょうか…。
研究はやめることを推奨しているわけではありません。推し活にはポジティブな面もちゃんと示されています。推しが活躍しているのを見る喜び、ライブやイベントの楽しさ、ファン同士のつながり、日々の充実感やストレスが和らぐ効果など。研究が示しているのは「しなければいけない」という義務感や「全てこなさなければ」という完全主義的な欲求が強くなると、疲れにつながりやすいという関連です。
つまり、推し活そのものじゃなくて、自分の「しなければ」という気持ちの持ち方が鍵ってことですか?
研究の結果はそう読み取れますね。「全部参加しなきゃ」「全種類集めなきゃ」「SNS全部チェックしなきゃ」という感覚が強くなるほど疲れやすいという関連が示されています。ただし、これは相関研究なので「義務感を下げれば疲れが減る」と因果的に言い切ることはできません。あくまで関連として捉えてください。自分の推し活の楽しみ方を振り返るヒントとして使うのがよさそうです。
ありがとうございます。「全部やらなきゃ」って思ってたのが、疲れにつながってるかもしれないんですね。もう少し自分のペースで楽しんでみようかと思えてきました。
■ 今日のまとめ
- 推し活には喜びや充実感などポジティブな面がある一方、「しなければいけない」という使命・義務感や「全てこなしたい」という完全主義的な欲求が、推し活への疲れと関連することが示されました。
- 推し活への疲れは精神的健康の低下とも関連しており、楽しいはずの活動を「義務」や「全網羅」として感じると、しんどさにつながりやすい可能性があります。
- 推しの種類や推し歴の長さに関わらず、こうした義務感や完全主義的な欲求は生じうるもの。自分のペースや楽しみ方を振り返るきっかけにしてみましょう。
■ 出典・注意事項
- 市村ほか(2025)「推し活の光と影」和洋女子大学(市村、2025aとして言及)/女子大学生を対象とした質問紙調査2件(研究1: n=56、研究2: n=98)
- 【注意事項】本研究は相関研究であり、変数間の「関連」を示すものです。「義務感が疲れを引き起こす」といった因果関係を示すものではありません。
- 【注意事項】対象が女子大学生のみのため、他の性別・年齢層・属性への一般化には限界があります。
- 【注意事項】使命・義務感や完全主義的な欲求を測る尺度は本研究で初めて作成されたもので、妥当性の十分な検討はこれからの課題とされています。
研究自体の紹介はこちら😊
推し活の光と影
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2026-04-18-1776553205/