ネガティブな感情があるからこそ、人は幸せを感じる
ノルウェーのオスロ大学、リュウ・ジンルイ先生らによる最新研究😊
これまでは、感情的なウェルビーイングとして、
ポジティブ感情が多く、ネガティブ感情が少ないことが、良い。とされてきましたが、
それに異を唱える研究。
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・人は、ネガティブ感情0の人生は、望ましく思わない。
・理想のバランスは、ポジティブ感情66-80%、ネガティブ感情10-13%。@アメリカ成人
・認知的ウェルビーイングである、人生満足度(人生に満足している)が最も高いのは、
理想のポジティブ感情/ネガティブ感情と実際が近しい人だった。
(ポジティブ最大、ネガティブ最小ではない)
・理想を超えたポジティブ感情も、理想を下回るネガティブ感情も、人生満足度に影響はなかった。
・人格的成長は、ポジティブ感情/ネガティブ感情と、ほとんど関係がなかった。
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とのことで、理想をどこにおくか、が大事。
確かに↓のようにネガティブ感情からも得られるものがあります。
・怒り ⇒活力が増える(長続きはしない)
・悲しみ ⇒人に優しくなる
・嫉妬 ⇒手に入れたいものに気付く
・不安 ⇒準備するようになる
別研究では、色んな感情を経験することがウェルビーイングにつながる、とありますが、まさに色んな経験が幸せを支えてくれるのでしょう。
ポジティブなことも、ネガティブなことも、じっくり味わっていきたいですね😊
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ただし、全体としては、ポジティブ多く、ネガティブ少ない方が、人生に満足する。という傾向はあった。
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ポジティブなネガティブ:ネガティブな感情が幸福感の向上につながる理由
Positively Negative: Why Negative Affect is Linked to Higher Wellbeing
**2026/4/28,Journal of Happiness Studies **
**Jinrui Liu(ノルウェー、オスロ大学), Ragnhild Bang Nes, Joar Vittersø, Irene J. E. Teulings & Espen Røysamb **
https://link.springer.com/article/10.1007/s10902-026-01040-4
多くの研究者は、幸福をポジティブ感情(PA)の最大化とネガティブ感情(NA)の最小化に還元できるという快楽主義的な考え方に反対している。しかし、PAの最大化とNAの最小化以外の最適な感情レベルを調査した研究はほとんどない。本稿では、幸福への代替的なアプローチとして、PAとNAの理想的なレベルとそれらの整合性を検証する。
研究1では、人々の理想的な感情レベルを調査する。無作為化強制選択実験(N = 352、米国)では、ほとんどの参加者がNAのない生活を拒否し、実験条件と2つの自己報告尺度全体で、NAが10~13%、PAが66~80%になることを理想とした。
研究2(N = 638、国際サンプル)では、生活満足度が感情の最大化よりも感情の整合性により密接に対応しているかどうかを検証する。区分的回帰分析を用いて、PAは生活満足度と一貫して正の相関があることがわかった。NAが低いほど生活満足度が高いのは、望ましいよりもNAが多い人に限られていた。すでに理想的なネガティブ感情レベルを下回っている人にとっては、それ以上の減少はもはや生活満足度とは関連していませんでした。重要なことに、最も高い快楽体験をしたグループではなく、実際に経験した感情と理想的な感情が一致した参加者が最も高い生活満足度を報告しました。
全体として、私たちの研究結果は、人々は快楽体験を最大化するよりも、経験が理想と一致しているときに最も満足感を感じることを示唆しています。さらに、この一致は知恵や自己成長よりも生活満足度とより密接に関連しています。要するに、ポジティブ感情を最大化し、ネガティブ感情を最小化することは、望ましいことでもなければ、最高の生活満足度とも関連していません。
AIさんに動画を作成頂きました。
https://youtu.be/zE_9gwVzPCQ
【背景】
▼ 1. 快楽主義的幸福観への疑問の出発点
現代の幸福研究の主流は「主観的幸福感(SWB:Subjective Well-Being)」モデルです。
※SWB=自分で評価する幸福感のこと
このモデルでは、幸福は次の3要素で構成されるとされてきました(Diener, 1984; Diener et al., 2018)
・高いポジティブ感情(PA)
・低いネガティブ感情(NA)
・人生満足度(Life Satisfaction)
しかし、幸福を「快楽の最大化と苦痛の最小化」に還元してよいのかという疑問が、ポジティブ心理学の第二波として提起されてきました(Ivtzan et al., 2015)。
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▼ 2. ポジティブ感情の最大化が最適ではないという実証研究
「PAを増やしNAを減らす」という単純な処方箋に対して、複数の実証研究が反証を提供しています。
・Hershfield et al. (2013)
PAとNAを同時に経験する「混合感情」が、加齢に伴う心身の衰えを遅らせることを示しました。
※混合感情=嬉しさと切なさのように、相反する感情を同時に味わう状態
・Grossmann et al. (2019)
感情の多様性(emodiversity)が、知恵に関連する特性を育むことを明らかにしました。
※emodiversity=さまざまな種類の感情をバランスよく経験している状態
・Quoidbach et al. (2014)
感情の多様性が、身体的・精神的健康の両方に有益であることを示しました。
・Oishi et al. (2007)
PAが最大化された人よりも、PAがやや低めの人の方が、収入・教育・政治参加で成功している傾向を示しました。「人は幸せすぎるとダメなのか?」という問題提起の代表的研究です。
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▼ 3. 「理想と現実の一致」という新しい視点
・Tamir et al. (2017)
「自分の理想の感情に近い状態を経験している(feeling right)」という感覚が、単にPAを最大化することとは別に、人生満足度に貢献することを示した重要な研究です。本論文の理論的基盤となっています。
・Górski et al. (2024)
人は感情的な幸福が一定水準に達すると、それ以上の幸福よりも「意味」を優先するようになることを示しました。
これらの研究から、ヘドニック経験には「ここまで来たらそれ以上は意味がない」という境界が存在する可能性が浮上してきました。
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▼ 4. 理論的基盤:Affect Valuation Theory(感情価値理論)
本研究の中心概念である「感情の整合性(Emotional Alignment)」の理論的土台です。
・Tsai et al. (2006); Tsai (2007)
人が「実際に経験している感情」と「理想とする感情」は異なるものであり、その理想は文化によって形作られるという理論。例えば、欧米文化では高覚醒のPA(興奮・熱狂)が好まれ、東アジア文化では低覚醒のPA(穏やかさ・静けさ)が好まれるなど。
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▼ 5. なぜ人はネガティブ感情を必要とするのか
ネガティブ感情を完全に排除した人生を人々が望まない理由として、以下の機能的説明があります。
・Cosmides & Tooby (2000)
進化的機能:ネガティブ感情は生存に必要な警告システムとして進化してきた
・Tamir & Ford (2012)
社会的機能:ネガティブ感情は対人関係や交渉の場面で適応的に働く
・Bloom (2021)『The Sweet Spot』
実存的機能:苦しみや困難の経験こそが人生に意味をもたらす
・Oatley & Johnson-Laird (2014)
認知的・実行機能:感情は価値を実現するための行動準備状態であり、多様な感情があるからこそ多様な状況に対応できる
・Taquet et al. (2016)
人は感情的に一面的な人生(univalent life)を能動的に避ける傾向があることを実証
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▼ 6. 「望むこと」と「本当に良いこと」のズレ
・Gilbert & Wilson (2000) "Miswanting"
人は自分にとって本当に有益でないものを欲しがってしまう傾向があるという研究
・Kahneman & Thaler (2006)
効用最大化と実際に経験される効用にはズレがあることを示した行動経済学の研究
→ そのため、本論文では「人々が理想とする感情(Study 1)」と「実際に幸福と関連する感情(Study 2)」を分けて検証する設計になっています。
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▼ 7. ヘドニック価値以外の価値観
・Benjamin et al. (2014)
人は幸福や満足以外にも多様な価値(意味、道徳など)を求めることを実証
・Krys et al. (2023, 2025)
家族の幸福を個人の幸福より重視するなど、文化による幸福観の違いを示した研究。「幸福の最大化はWEIRD(欧米中心)的な生き方である」という挑発的な指摘も。
・Oishi & Westgate (2022); Oishi et al. (2019)
「心理的に豊かな人生(Psychologically Rich Life)」という概念を提唱。幸福でも有意義でもなく、多様で興味深い経験に満ちた人生という第三の選択肢を示した。
・Waterman (1993)
ヘドニック(快楽的)幸福と、エウダイモニック(自己実現的)幸福の区別を明確化した古典的研究。
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▼ 8. 感情の機能性に関する補助理論
考察で参照される理論群です。
・Quoidbach et al. (2019); Taquet et al. (2016) "Hedonic Flexibility Principle"
気分が良いときには長期的利益のために即時の快楽を犠牲にし、気分が悪いときには気分改善行動を取るという、感情の適応的調整機能の理論。
・Cummins (2013) ホメオスタシス理論
SWBは通常、安定して「中程度にポジティブ」な状態に保たれる。極端なPAはむしろ正常状態に戻されるべき異常状態と捉える。
・Mauss et al. (2011)
幸福を過度に追い求めると、逆に幸福感が損なわれるという「幸福追求のパラドックス」を実証。
・Pavot & Diener (1993)
人生満足度尺度(SWLS)はそもそも「自分の人生と理想との比較」を測るものだという理論的指摘。本論文の解釈の鍵となる。
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▼ 9. ポジティブ感情と人格的成長・知恵の関係
・Fredrickson (2001) Broaden-and-Build理論
ポジティブ感情は思考と行動の幅を広げ、長期的な資源を構築するという理論。
※本論文で「人格的成長はPAを基盤として発展する可能性がある」と解釈される根拠
・Brugman (2006)
西洋の知恵伝統では、幸福は知恵の結果として位置づけられるという指摘
・Ardelt & Jeste (2016)
知恵がネガティブな出来事の悪影響を和らげる効果(ameliorating effect)を持つことを示した研究
・Vittersø (2016, 2025); Vittersø & Søholt (2011); Vittersø et al. (2009)
ヘドニック幸福(快楽的幸福)とエウダイモニック幸福(自己実現的幸福)を明確に区別すべきという理論的・実証的研究群。本論文の著者の一人による研究。
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■ まとめ:既存研究から本論文への流れ
(1) 「PA最大化・NA最小化=幸福」という単純なモデルへの疑問が蓄積
(2) 混合感情や感情多様性の有益性が実証されてきた
(3) Tamir et al.(2017)が「理想との一致(feeling right)」の重要性を示した
(4) しかし「理想との一致」と「PA最大化・NA最小化」を直接比較した研究はなかった
(5) 本論文がこのギャップを埋め、感情の整合性(Emotional Alignment)を新たな最適性の指標として提案
という流れで、本研究は既存研究の蓄積の上に位置づけられています。
■ 研究の内容について(方法・結果・考察)
この論文は2つの研究で構成されています。Study 1は「人々が理想とする感情のレベル」を、Study 2は「実際にどのような感情状態が幸福と結びつくか」を検証しています。
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▼ 全体のリサーチクエスチョン
(1) 人は本当にPA(ポジティブ感情)を最大化し、NA(ネガティブ感情)を最小化した人生を望んでいるのか?
(2) もしそうでないなら、どのレベルの感情を理想としているのか?
(3) 理想と実際の感情の「整合性(Emotional Alignment)」は、PA最大化・NA最小化よりも幸福と強く結びつくのか?
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■ Study 1:人々はどんな感情のバランスを理想としているか
▼ 参加者
・米国在住の352名(男性50%、女性48%、その他1%)
・年齢19
76歳(平均41.29歳)10のスライダーで回答。・Prolific(オンライン調査プラットフォーム)経由で募集
▼ 3つの測定方法
理想の感情を多角的に捉えるため、3つの異なる方法を併用しました。
・強制選択実験(Forced-Choice Experiment)
・感情配分タスク(Emotion Allocator)
・特定感情スライダー(Specific Emotion Scaler)
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▼ 方法1:強制選択実験
2×2の被験者内デザインで実施。
・2フェーズ:PAフェーズ vs NAフェーズ
・2条件:Maximal Hedonism(最大ヘドニズム) vs High Hedonism(高ヘドニズム)
参加者には次のプロンプトが提示されます。
「人生で経験しうるすべての感情的な瞬間のうち、もし選べるとしたら、あなたが望むのは…」
▼ 2つの選択肢
・選択肢1:PA100%(またはNA0%)=最大ヘドニズム条件、もしくはPA99%(またはNA1%)=高ヘドニズム条件 → 全試行で固定
・選択肢2:不快感を含む人生(2.5%ずつ強度が変わっていく)
参加者が選択肢1を選ぶまで、選択肢2の不快感の強度が段階的に調整されていきます。
▼ この設計の意図
「100% vs 99%」という1%の違いは数値上ごくわずかですが、「完全にネガティブ感情がない人生」というのは「感情的に不完全な人生」を含意します。もし参加者がMaximal Hedonism(完全排除)条件で、High Hedonism(1%は残す)条件よりも多くの不快感を許容するなら、人々は「ネガティブ感情ゼロの人生」を能動的に避けていると言えます。
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▼ 方法2:感情配分タスク
スライダーを使い、「自分の感情を配分できるとしたら、ポジティブな時間・ネガティブな時間・感情がない時間にどのくらいの割合を割り当てるか?」を100%になるように調整してもらう課題。
▼ 方法3:特定感情スライダー
具体的な感情(PA:幸福、快楽、平穏 / NA:怒り、悲しみ、恐れ)について、「現在どの程度経験しているか」と「理想ではどの程度経験したいか」を0
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▼ Study 1の結果
3つの測定すべてで、結果は一貫していました。
▼ 結果1:強制選択実験
・PAフェーズで、High Hedonism条件では47.2%の参加者が即座に選択肢1を選んだのに対し、Maximal Hedonism条件ではわずか37.5%
・NAフェーズでも、High Hedonismで46.9%、Maximal Hedonismで31.3%
つまり「1%だけNAを残す」選択肢の方が、「完全にNAをゼロにする」選択肢より好まれたのです。Wilcoxon符号順位検定でも有意差が確認されました(p<0.001)。
→ 人は単に「ネガティブ感情のない人生に興味がない」だけでなく、能動的にそれを避けている
▼ 結果2:理想とされる感情のレベル
平均値で見ると、人々が理想とする感情のバランスは次の通り:
・実験での結果:PA約79.9%、NA約10.6%
・感情配分タスク:PA約66.8%、NA約13.4%、中立19.9%
・特定感情スライダー:PA8.2/10、NA0.97/10
3つの方法で多少のばらつきはあるものの、「PAは66
80%程度、NAは1013%程度を望む」という共通パターンが現れました。▼ 結果3:特定感情の理想レベル
・幸福:8.0
・快楽:7.4
・平穏:8.2
・悲しみ:1.1
・恐れ:0.8
・怒り:1.0
NAをゼロにしたいわけではなく、わずかに残すことを理想としています。
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▼ Study 1の考察
「ネガティブ感情がまったくない人生」は、参加者にとって魅力的でなく、むしろ避けるべきものと認識されていました。これは以下の理由によると考察されています。
・ネガティブ感情には進化的・社会的・実存的・実行的機能がある
・感情の混合状態こそが「真正性(authenticity)」や「全体性(wholeness)」を体現する
・ヘドニック経験以外の価値(意味、多様性など)も求められる