2026.03.10

はぴテク相談室:感じる力を磨く授業の挑戦

相談者

最近、なんか毎日がつまらないというか、仕事や勉強ばかりで「感じる」ことが減ってる気がするんです。好きなものも分からなくなってきたし、感動することもほとんどなくて…。どうしたらいいんでしょうか。

はぴテクさん
はぴテクさん

それは、しんどいですね。「感じる力が落ちてきた」という感覚、すごく正直に気づいていると思います。実は最近、大学の授業でまさにその「感じる力」を取り戻すことに正面から挑んだ実践報告があって、そこにヒントになりそうなことが書かれているんです。ちょっと一緒に見ていきませんか?

相談者

大学の授業でそんなことをやってるんですか?面白そうですね。どんな内容なんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

武蔵野大学の「ウェルビーイング学部」という2024年に新しくできた学部で、1年生が畑で野菜を育てたり、公園で自然を感じるアクティビティをしたりする授業があるんです。その特徴的な点は「なるべく教えない」という方針で、知識を詰め込むのではなく、体験して、感じて、振り返ることを繰り返す設計になっていて。「体験する・観察する・ゆっくり・感じる・問いを持つ・振り返る」という6つのキーワードを大切にしているんです。

相談者

「感じる・ゆっくり」って、普段の勉強や仕事と真逆ですね。でも学生たちって最初は戸惑わなかったんですかね?

はぴテクさん
はぴテクさん

最初は「こんな授業に何の意味があるの?」「知識が身につくものがいい」という声も実際にあったみたいです。でも、一番最初の授業が畑で「土を感じる」だったんですね。多くの学生が幼稚園以来ほぼ土に触れたことがない状態で。そこで「結論がなくていい、感じた言葉をそのまま書いていい」という形でコメントを書かせたら、教員の想像を超える反応が出てきたそうなんです。

相談者

どんな反応だったんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

「土に対して初めて出てきた感情があって、自分でも驚いた」とか、「自然って子ども全員の実家みたい。その感覚を取り戻せて安心した」という声が出てきたんです。子どものころに当たり前のように持っていた感覚が、土に触れることで蘇ってきた、という感じですね。これって、あなたが「感動することが減った」と感じているのと、何か似ていると思いませんか?

相談者

確かに…。子どものころは虫とか草とか、何でもないものにドキドキしてたのに、いつの間にかそういうのがなくなってしまった気がします。

はぴテクさん
はぴテクさん

この授業を設計した先生が、まさにその点を指摘しているんです。現代ではエアコンの普及で季節や外気を感じる機会が減ったり、「仕事では感情的になるな」という空気があったりして、感じる力を使わない生活になりがち、と。でもそれは感じる力が消えたのではなく、使っていないだけかもしれない、という話なんです。

相談者

感じる力は消えてないかもしれない、か…。それは少し希望が持てます。公園でのアクティビティも気になるんですが、どんなことをしたんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

「シェアリングネイチャー」という、五感で自然とつながるアクティビティをしたそうです。雨の中でお気に入りの木を見つけたり、芝生の上で裸足になって「自分が木になった」と想像しながら深呼吸したり。そうしたら「根が横に伸びて、隣にいた友達の根と触れた気がした」「裸足で草の上を歩くことがこんなに解放感をもたらすとは知らなかった」「私は地球の住人なのだと理解できた」というような感想が出てきて。

相談者

なんかそれ読んでいるだけで、ちょっとワクワクしますね。でも私は大学生でもないし、授業を受けられるわけじゃないから…。

はぴテクさん
はぴテクさん

そうですよね。ただ、この研究で一番印象的だったのが「感じる力はもともと自分の中にある」という気づきなんです。最終レポートで学生たちが書いた言葉に「感じようとしなくても感じるようになった」「感じる力はすでに持っている、ただ気がついていないだけかもしれない」という表現があって。また「下を向いて歩く癖が、木を見上げながら歩く癖に変わった」という人もいました。小さな体験の繰り返しで、日常の見え方が変わっていったんです。

相談者

じゃあ、特別な授業じゃなくても、日常の中でちょっと自然を感じようとするだけでも違うのかもしれない、ということですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

この研究が示唆しているのはまさにそこだと思います。「結論がなくていい、感じた言葉をそのまま書く」という授業のやり方が、感性を取り戻すきっかけになっていた。公園で裸足になるとか、道の草花をちょっと立ち止まって見るとか、土に触れてみるとか。「感じることを封印している最中にこの授業に出会って変わった、ありのままに感じることに夢中な自分がかっこよく見えた瞬間があった」という学生の言葉も印象的で。ただ研究自体はまだ1年目で、データによる量的な検証はこれからとのことなので、「これをすれば必ずこうなる」とは言えません。でも、日常にちょっとした自然との接点を意識的に作ってみることは、試してみる価値がありそうだと思いませんか?

相談者

はい、なんかすごく背中を押されました。とりあえず今日の帰り道、スマホをしまって少し空とか木とか見てみようかな、という気になってきました。ありがとうございます。

はぴテクさん
はぴテクさん

素敵ですね!「ゆっくり・感じる・観察する」、まさにこの授業のキーワードそのままですよ。感じたことをちょっとメモに書いてみるのも、授業でやっていた「感じた言葉をそのまま書く」と同じことですし。感じる力は消えていないはず、ぜひ確かめてみてください。

■ 今日のまとめ

  • 「感じる力」は失われたのではなく、使っていないだけかもしれない——大学の体験型授業で、学生たちは土や自然に触れる小さな体験を通じて、もともと自分の中にあった感性が蘇る感覚を報告しています。
  • 「結論がなくていい、感じた言葉をそのまま書く」という形の振り返りが、自分の内側を観察する力を育てるきっかけになることが、学生のコメントから示唆されています。
  • 日常の中で自然に少し意識を向けること(草花を立ち止まって見る、裸足で地面を感じるなど)が、感じる力を取り戻すきっかけになる可能性があります。ただしこれはまだ1年目の実践報告であり、量的データによる検証は今後の課題とされています。

■ 出典・注意事項

  • 山田博・菅原育子(2026)「感じる力を磨く授業の挑戦 ~武蔵野大学ウェルビーイング学部ウェルビーイング学科『自然・環境入門』~」武蔵野大学しあわせ研究所紀要 第8号, pp.151-166. https://www.musashino-u.ac.jp/research/武蔵野大学しあわせ研究所紀要第8号_pp.151-166.pdf

  • 【注意事項】本研究は2024年度1年目の実践報告であり、量的・質的データによる体系的な検証はまだ行われていません。学生の変化は自己報告(コメント・レポート)に基づくものであり、因果関係を示すものではありません。また対象は武蔵野大学ウェルビーイング学部の1年生に限られており、他の集団への一般化には限界があります。

  • 【参考文献】前野隆司(2013)幸せの4因子モデル/前野(2024)ウェルビーイング学部教育設計/コーネル(2020)シェアリングネイチャー/Carson, R.(1965=2021)センス・オブ・ワンダー/Sipos et al.(2008)UNESCO Heads, Hands, Hearts の学び

投稿者によるコメント・補足(1件)
コメント 1

研究自体の紹介はこちら😊
感じる力を磨く授業の挑戦
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2026-03-10-1773186626/

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