はぴテク相談室:希望の心理学について再考する
最近、何をやっても「どうせうまくいかない」って思ってしまって。将来のことを考えると不安で、希望が持てないんです。どうしたらいいんでしょう…
それはしんどいですね。「どうせうまくいかない」という気持ち、よく分かります。ところで、「希望を持つ」って聞いてどんなイメージが浮かびますか?
えっと…「絶対成功するぞ!」とか「夢に向かって頑張る!」みたいな、ポジティブで力強いイメージですかね。でも今の自分にはそんな気力もなくて…
実はその「希望=力強く目標に向かうこと」というイメージ自体を、ちょっと見直してみると楽になれるかもしれないんです。希望の心理学を研究した渡辺先生の論文によると、希望の中核は「願うことで現実をつくる」という能動的なものではなく、むしろ「Let it be(なるようになる)」という感覚にある、と再定義されているんですよ。
「なるようになる」…?それって、あきらめることとは違うんですか?
いいところに気づきましたね!あきらめとは違います。北村先生という研究者の定義では、希望とは「未来の状況に明るさがあるという感知に伴う、快調を帯びた感情」とされています。特定の目標を達成することではなく、「なんとなく未来を信頼できる感覚」なんです。しかも、この希望には「うまくいかなくても、きっと何とかなる」という忍耐や不屈の気持ちも含まれています。
なるほど…「明るい未来を信頼する感覚」か。でも私、自分に自信がなくて、そんな感覚が全然持てないんですよね。
そこが実はとても大事なポイントで、希望と「自分への信頼感」は深く関係していると研究では示されています。高垣先生の研究では、「自分が自分であって大丈夫」という無条件の安心感——これを共感的・共生的自己肯定感と呼んでいますが——これが希望の土台になると考えられています。他の人と比べて「自分は優れている」という競争的な自信とは全然違うものなんです。
「自分が自分であって大丈夫」という安心感…。それって、どこから来るんでしょう?自分で鍛えられるものですか?
エリクソンという発達心理学者の考えが参考になります。この安心感の源は「基本的信頼感」と呼ばれていて、他者を信頼できる感覚と自分を信頼できる感覚がセットになったものです。そしてそれは、見返りを求めない、ありのままの関わり合いの中で育まれるとされています。誰かに「ただそこにいるだけでいいよ」と受け入れてもらえる経験の積み重ね、とも言えますね。
「ただいるだけでいい」か…。大人になってからでもそういう安心感って育めるんでしょうか?
この論文では、基本的信頼感は「生涯にわたり発達を支え続ける基盤」とされています。つまり、子ども時代だけのものではないということです。日々の小さな関係の中で、じわじわと育っていく可能性があると考えられています。ただ、これは「こうすれば必ず育つ」と証明された処方箋ではなく、研究者たちの理論的な整理であることは念頭に置いておくといいかもしれません。
「うまくいかなくても何とかなる」という感覚、少し分かってきた気がします。でも、不安と希望ってどう違うんですか?私は不安ばかりで…
面白い質問ですね。北村先生の定義では、希望と不安・危惧は「コインの表裏」とされています。つまり、未来が分からないから不安にもなるし、希望も生まれる。不安を感じているということは、実は希望も持てる土台がある、ということでもあるんです。「どうせうまくいかない」と思う気持ちの裏側には、「うまくいってほしい」という希望が隠れているかもしれませんよ。
不安の裏に希望がある…。なんかそれ聞いて、少し楽になった気がします。「なるようになる」という感覚を、焦らずに大切にしてみます。
それが一番です。希望は「力強く目標に突き進むこと」じゃなくて、「うまくいかなくても、きっと明日は」とゆっくり思えること、でもあるんです。焦らず、自分がただそこにいるだけでいいという感覚を、少しずつ積み重ねていけるといいですね。
■ 今日のまとめ
- 希望とは目標達成の意欲だけでなく、「未来への漠然とした信頼感」や「うまくいかなくても何とかなる」という不屈の感覚を含む、感情と認知が融合した状態として研究者たちに再定義されています。
- 「自分が自分であって大丈夫」という無条件の安心感(共感的・共生的自己肯定感)が希望の土台と考えられており、他者との比較に基づく競争的な自信とは区別されます。
- 不安と希望はコインの表裏の関係にあり、不安を感じること自体が希望を持てる土台の存在を示している可能性があります。
■ 出典・注意事項
- 渡辺弘純「希望の心理学について再考する ― 研究覚書 ―」愛媛大学紀要(2005年)https://www.ed.ehime-u.ac.jp/~kiyou/2005/pdf/05.pdf
- 【注意事項】本論文は特定の著者による理論的・概念的整理(研究覚書)であり、大規模な実証研究や統計的因果分析に基づくものではありません。紹介された関係性(自己肯定感と希望の関連など)は理論的考察であり、因果関係として確立されたものではありません。
- 希望の定義や構成要素については研究者間で見解が統一されておらず(Snyder理論・北村定義・エリクソン理論など複数の立場が存在)、本論文はその整理と著者独自の再考を示したものです。特定の実験・調査対象集団に基づく結果ではない点にご留意ください。
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希望の心理学について再考する
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