はぴテク相談室:小さい頃の体験を意味づけられる人は、今の幸福度が高い
最近、自分の人生ってなんだったんだろう…って考えることが多くて。子どもの頃に特別な習い事もしてないし、これといった得意なこともなかった気がして、なんか出遅れた感じがするんですよね。
そう感じることがあるんですね。実は、東京大学の広瀬先生が20〜50代の方を対象に行った研究で、過去の体験と今の幸福感の関係を調べているんです。その中に、きっとヒントになる話があると思いますよ。少し聞いてみますか?
はい、ぜひ聞かせてください。
この研究では、幼少期(小学3年生まで)から高校卒業まで、各時期に「成長につながった体験があって、それが今にどう影響しているか言葉で説明できる」人ほど、今の心理的な幸福度が高い傾向があるとわかりました。注目してほしいのは、すごい体験をしていたかどうかじゃなくて、体験を今の視点から意味づけて言葉にできるかどうかという点なんです。
意味づけ…ですか?特別なことじゃなくてもいいんでしょうか。
そうなんです。幼少期に多く見られた成長体験として挙げられていたのは、自然体験や地域の人との交流を通して「好きなこと・得意なこと」を発見したこと。決してお受験や特別な習い事じゃなかったんですよ。「近所の公園で虫を追いかけるのが楽しかった」とか、「おじいちゃんと野菜を育てた」とか、そういうことでも十分なんです。
そう言われると…子どもの頃、本は好きだったかも。図書館にしょっちゅう行ってたな。でも、それって成長体験になるんですかね?
すごく大事なことに気づかれましたね!「図書館に通っていた」という事実よりも、「それが今の自分のどこかにつながっている」と感じられることが大切なんです。たとえば「本好きが今の情報収集の仕方に活きている」とか「想像することが好きで、それが今の仕事の企画力になっている」とか。自分なりの言葉でつなげてみることが、研究では幸福感と関連していたポイントなんですよ。
なるほど…。でも、ネガティブな体験はどうでしょう。中学のとき部活でかなりしんどい思いをしたんです。それも関係あるんですか?
実はそれも研究で取り上げられていて、中高生期の部活動での厳しい体験が「自己成長だった」と捉えられている人は、今の幸福度が高い傾向があったんです。上下関係の難しさ、ハードな練習、人間関係の苦労…そういうネガティブな経験に対して「あれがあったから今の自分がある」という肯定的な意味を見出せている人、ということです。
じゃあ、つらかった部活も、今の自分に何か活かされているって考えるといいんですね。でも、無理やりポジティブに考えるのって不自然じゃないですか?
おっしゃる通りで、無理に「よかった!」と思い込もうという話ではないんです。研究でも「意味づけ」と表現されていて、あくまで今の視点で振り返って、何を学んだかを言葉にできるということです。「あのとき精神的にしんどかったけど、粘り強さはついたと思う」くらいの自分なりの言語化でいいんですよ。
それなら少しできそうな気がします。でも、幼少期の体験が薄いと、もうどうにもならないんでしょうか…。
大丈夫ですよ。研究では、心理的な幸福度が高い人は社会人になってからも成長体験があることも示されていました。しかも、幼少期に「主体的に学ぶ経験」をした人は、社会人になっても主体的に学ぶ体験をしている傾向があるというのも興味深い点です。つまり、今この瞬間から体験を積んで、それを意味づけることは、十分意味があると考えられます。
今からでも遅くないってことですね。なんか、過去を見直す作業も大事にしてみようと思えてきました。ありがとうございます。
素敵な気づきですね。ひとつ実践のヒントをお伝えすると、日記やメモに「子どものころ好きだったこと」「しんどかったけど得たこと」を書き出してみるだけでも、意味づけのきっかけになります。ただ、これは相関関係の研究なので「意味づけしたから幸せになる」と断言はできないのですが、自分の歩みを丁寧に振り返ること自体が、自分らしさの感覚につながるかもしれませんよ。
■ 今日のまとめ
- 過去の体験そのものより、「今の視点で意味づけて言葉にできるか」が心理的な幸福感と関連している(相関)。
- 幼少期の自然体験や地域交流での「好き・得意の発見」、中高生期の厳しい体験への肯定的な意味づけが、幸福度の高い人に多く見られた。
- 社会人になってからも成長体験を積んでいる人は幸福度が高い傾向があり、今から体験を振り返り言語化することにも意味があると考えられる。
■ 出典・注意事項
- 広瀬由美子「過去体験の表出と心理的well-beingとの関連─発達時期に着目して─」キャリアデザイン研究, 2025/10, Vol.21, pp.88-, 東京大学大学院。https://www.jstage.jst.go.jp/article/cdij/21/0/21_88/_pdf
- 【注意事項】本研究は相関関係の分析であり、意味づけが幸福感を高めるという因果関係は示されていません。
- 【注意事項】対象は20〜50代の65名(オンライン調査)と比較的少人数であり、結果の一般化には限界があります。
- 【注意事項】「成長経験あり」の判定は、本人が体験の影響を具体的に言語化できたかどうかによるものであり、客観的な体験の質や量を測定したものではありません。
研究自体の紹介はこちら😊
小さい頃の体験を意味づけられる人は、今の幸福度が高い
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2025-10-02-1759441441/