2026.03.06

㉝時間、お金、そして主観的幸福感

ウェルビーイングハンドブック_第六章:リソース

毎日読めばウェルビーイングの基礎が分かる、ウェルビーイング・ハンドブック紹介シリーズ、第六章😊

リソース編に入りまして、初回は、幸せな時間とお金の使い方😍

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■ 時間・お金・主観的幸福感 Mogilner, Whillans, & Norton(2018)

▼ この論文について

時間とお金は、私たちの生活に欠かせない2つの資源です。この論文では「どう使うか」「どちらを重視するか」「どちらに意識を向けるか」が幸福感にどう影響するかを包括的にレビューしています。

ここでいう主観的幸福感(SWB)とは、①ポジティブ感情が高い、②ネガティブ感情が低い、③人生への満足感が高い、という3つの要素から成る「幸せの感覚」のことです(Diener, 1994)。

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■ 第1部:時間とお金はどう違うのか

▼ お金の特徴

・貯めたり借りたりできる

・市場で交換可能(いくらと計算しやすい)

・失っても、働いて取り戻せる可能性がある

▼ 時間の特徴

・貯められない。1日24時間は毎朝リセットされる

・失った1時間は取り戻せない

・曖昧で計算しにくいため、「時間を無駄にした」という感覚が鈍くなりやすい(Soman, 2001)

・将来の時間的な負担を読み誤りやすく、予定を詰め込みすぎる傾向がある(Zauberman & Lynch, 2005)

▼ 自己との結びつき

時間の使い方は「自分らしさ」の反映と感じられやすい一方、お金の使い方はそうではない(Gino & Mogilner, 2014)。

つまり、時間の積み重ねこそが「その人の人生そのもの」になる、という考え方です(Mogilner, Hershfield, & Aaker, 2017)。

物質的な豊かさ(モノを集めること)を人生の目的にしている人は、幸福感が低い傾向があることも示されています(Kasser & Ryan, 1993)。

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■ 第2部:時間かお金か、どちらに意識を向けるか

▼ 時間を意識すると…

・社交的になり、人と過ごしたくなる

・仕事より余暇を優先するようになる

・道徳的な行動(親切・誠実さ)が増える(Gino & Mogilner, 2014)

・慈善活動への関与が増す(Liu & Aaker, 2008)

▼ お金を意識すると…

・他者とのつながりより、仕事や自己完結を優先しやすくなる

・援助行動が減り、不正直な行動が増える傾向(Vohs, 2015)

・タスクへの集中力・努力は増す(Vohs, Mead, & Goode, 2006)

▼ 「時間よりお金」を優先する人は?

時間よりもお金を稼ぐことを重視する人は、幸福感が低い傾向があります。逆に、時間を優先する人は幸福感が高く、他者と過ごすことを好む社会的な傾向を持っています(Hershfield, Mogilner, & Barnea, 2016; Whillans, Weidman, & Dunn, 2016)。

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■ 第3部:時間の「乏しさ」の2つの顔

▼ 日常的な時間不足(時間飢饉:タイムファミン)

「時間飢饉(time famine)」とも呼ばれる、日常的に「時間が足りない」と感じる状態(Perlow, 1999)。

・高収入・低収入に関わらず多くの人が経験している

・共働き家庭や子育て中の親に特に顕著

・ストレスを高め、他者への援助行動や運動を減らし、健康を損なう(Strazdins et al., 2011)

▼ 「人生の残り時間」への気づき

一方で、人生全体の時間が限られていると意識することは、幸福感を高めることがわかっています。

・日常のささいな喜び(チョコレートを食べる、朝日を浴びる、友人からのメッセージ)からより大きな幸せを感じられるようになる(Bhattacharjee & Mogilner, 2014)

・興奮よりも「穏やかな幸福感」を好むようになる(Mogilner, Kamvar, & Aaker, 2011)

・大切な人間関係を優先し、より寛大になる(Carstensen, Isaacowitz, & Charles, 1999)

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■ 第4部:時間の使い方と幸福感

「何をするか」が幸福感に与える影響を整理します。

▼ 社会的なつながりに時間を使う

他者と過ごす時間は、1日のなかで最も幸福感が高い時間帯です(Kahneman et al., 2004)。スタバの店員との短い会話のような、ちょっとした社会的やりとりですら幸福感を高めます(Epley & Schroeder, 2014)。

▼ 誰かを助ける

他者を助ける行動は気分を高め、健康にも良い影響があります。さらに、他者を助けると「自分には十分な時間がある」と感じやすくなるという逆説的な効果もあります(Mogilner, Chance, & Norton, 2012)。

▼ 積極的に動く

・受動的な余暇(テレビ、昼寝)より、能動的な余暇(運動・ボランティア)の方が幸福感を高めやすい(Lathia et al., 2017)

・軽いウォーキングや散歩でも、座っている状態に比べて気分が上がることが示されています

▼ 適度な「変化」を取り入れる

日々の活動に多様性を持たせることは快感への慣れ(快楽適応)を防ぎ、幸福感を高めます(Etkin & Mogilner, 2016)。

ただし、短時間に詰め込みすぎると「何も達成できなかった」感覚になり、逆効果になることもあります。

また、感情の多様性(エモダイバーシティ)も重要で、様々な感情をバランスよく経験している人は、うつ傾向が低い傾向があります(Quoidbach et al., 2014)。

▼ 経験を丁寧に味わう(サヴァリング)

・消費前にちょっとした儀式を設けると、体験がより充実したものになる(Vohs et al., 2013)

・経験中に写真を撮ると没入感が高まり楽しさが増すが、SNSに投稿することを意識して撮ると逆に楽しさが減る(Diehl, Zauberman, & Barasch, 2016; Barasch, Zauberman, & Diehl, 2017)

・「この状況はいつか終わる」と意識すると、日常のささいな体験からより多くの幸せを引き出せる(Kurtz, 2008)

▼ 意味のある活動も大切

楽しくはないけれど「意味がある」と感じられる活動(仕事・子育てなど)も、間接的に幸福感を高めます(White & Dolan, 2009)。瞬間の気分だけでなく、人生全体の意味・目的感も幸福の重要な柱です(Ryan & Deci, 2001)。

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■ 第5部:お金の使い方と幸福感

お金の使い方は、実質的には「どんな時間を買うか」の選択でもあります。

▼ 他者のためにお金を使う(プロソーシャルな支出)

・自分のために使うより、他者のために使う方が幸福感が高い(Dunn, Aknin, & Norton, 2008)

・世界136カ国の調査でも、慈善的な支出と幸福感の正の関係が確認されている(Aknin et al., 2013)

・顔を見て直接渡す、強い絆がある相手(家族や親友)に使う、「自分の貢献が相手の役に立っている」と感じられるときほど効果が高い

▼ モノではなく「経験」を買う

・旅行・コンサート・外食などの「経験的な購買」は、物質的なモノを買うより幸福感が持続しやすい(Van Boven & Gilovich, 2003)

・経験は記憶の中で輝きを増すこともあり(Carter & Gilovich, 2010)、自分の「アイデンティティ(自分らしさ)」とも深く結びつく

・経験は他者と共有されやすく、社会的なつながりを強める(Caprariello & Reis, 2013)

・ただし、モノを買う方が「頻繁な小さな幸せ」をもたらすという指摘もある(Weidman & Dunn, 2016)

▼ 時間を買う

・家事代行・食事の宅配・移動費など、時間を節約するためにお金を使うと幸福感が高まる(Whillans et al., 2017)

・この効果は、時間的なストレスを和らげることで生じる

・経済的に余裕が少ない人ほど、時間を買うことの恩恵が大きい傾向がある

・しかし実際には、多くの人がこうした「時間を買う」選択をしていない

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■ まとめ

この論文が伝えることを一言でいえば、「時間とお金の使い方を少し見直すだけで、幸福感は変えられる」ということです。

・時間よりお金を優先する生き方は、幸福感を下げやすい

・日常のタイムプレッシャーは幸福を損なうが、「人生の有限性」への気づきは幸福を高める

・時間の使い方では、社交・運動・他者への貢献・多様な経験が効果的

・お金の使い方では、他者への支出・経験への支出・時間を買う支出が有効

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今後の研究課題としては、西洋以外の文化圏での検証、低所得層・高所得層での違いの整理、そして家族・組織・社会全体への視点拡大が挙げられています(Mogilner, Whillans, & Norton, 2018)。

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Time, Money, and Subjective Well-Being

By Cassie Mogilner, Anderson School of Management at UCLA; Ashley Whillans, Harvard Business School; Michael I. Norton, Harvard Business School

時間とお金は希少で貴重な資源である。人々は時間不足にストレスを感じ、お金不足を心配する。本章では、人々が時間とお金をどのように使うか、より多くの時間とより多くのお金の間でどのようなトレードオフを行うか、そしてそれぞれの資源にどの程度集中するかが、幸福度に大きな影響を与え得ることを示す研究を概説する。主観的幸福感(すなわち「幸福」)を、高いポジティブ感情、低いネガティブ感情、高い生活満足感の組み合わせと捉え、時間と金銭が人々の予測される幸福、瞬間的な幸福、持続的な幸福に、いつ、どのように、なぜ影響を与えるのかを探求する。

キーワード:時間、金銭、トレードオフ、幸福、主観的幸福感

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