はぴテク相談室:シャーデンフロイデは幸せにつながらない
最近、職場で自分より先に昇進した同僚がミスをして怒られているのを見て、なんかちょっとスッキリしてしまって…。そういう気持ちって、あってもいいものなんでしょうか?正直、自分でも嫌な人間だなと思ってしまって。
その気持ち、正直に話してくれてありがとうございます。実はそういう感情、「シャーデンフロイデ」って名前がついているくらい、人間ならわりと誰でも経験することなんですよ。「他人の不幸を見て、なんとなくスッキリする」という感覚ですね。でも、それが「なぜ起きているのか」を知ると、自分の気持ちが少し整理できるかもしれません。
シャーデンフロイデ…なんか聞いたことある気がします。でも、それって「他人の不幸は蜜の味」みたいなことですよね。スッキリしたんだから、ちょっとは気分が上がったりするんでしょうか?
実は、そこが面白いところで。東京大学大学院の研究によると、シャーデンフロイデと幸福感の間には有意な相関が見られなかったんです。つまり、他人の不幸を喜んでも、それが幸せにつながるとはいえないという結果が出ているんですね。「蜜の味」と言われますが、研究的には「実際には蜜ではない」かもしれないということです。
えっ、スッキリしたのに幸せにはつながらないんですか。じゃあ、あの気持ちはなんだったんでしょう…?
この研究では、シャーデンフロイデが生まれる背景に2つの「動機」があると説明しています。一つは「自己高揚動機」、もう一つは「正義動機」です。自己高揚動機というのは、自分が誰かより劣っていると感じるとき、その劣等感をなんとか埋めたいという気持ちです。同僚が先に昇進して、「自分はどうなんだろう」と感じていたりしませんでしたか?
…正直、あります。自分も頑張っているのに、なんであの人が先に、って気持ちがどこかにあって。
そうですよね。その気持ちがあるとき、相手がミスをすると「自分との差が縮まった気がする」という感覚でスッキリしやすくなる、というのが自己高揚動機の仕組みです。もう一つの「正義動機」は、「あの人の成功は不当だ」と感じているとき、不幸になることで「やっぱり世の中は公平だった」と感じてホッとする、というものです。あなたの場合は、前者の自己高揚動機が関係していそうな気がしますね。
なるほど…。じゃあ、シャーデンフロイデをよく感じる人って、どういう状態なんでしょう?
この研究では、シャーデンフロイデを感じやすい人の背景に、二つの心の傾向があるとしています。一つは「自己批判的」、つまり自分に厳しくて、人と比べて落ち込みやすい状態。もう一つは「社会的シニシズム」、世の中は不公平で、人はあまり信頼できないという感覚です。これらが強いと、先ほどの2つの動機が生まれやすくなるということです。
自己批判的…確かに、自分ってけっこう自分に厳しいかもしれないです。ちょっとドキッとしました。逆に、幸せな人ってどんな傾向があるんですか?
同じ研究によると、幸福感が高い人はそもそもシャーデンフロイデを感じにくい傾向があるとされています。特徴としては、自分に優しくて他人と比べにくい、そして社会や人をわりと信頼していて「世界はそこそこ公正だ」と感じているという点が挙げられています。世界の見え方そのものが、感じる感情の種類にも関わっているということなんですね。
じゃあ、自分にもう少し優しくなれたら、他人の不幸でスッキリしなくてもよくなってくるかもしれない、ってことですか?
この研究は相関を調べたものなので、「自分に優しくすれば必ずシャーデンフロイデが減る」と断言はできないんですが、幸福感が高い人ほどシャーデンフロイデを感じにくいという関連は確かに見られています。あのスッキリ感は、もしかしたら「自分は今、自分と誰かを比べて苦しくなっているよ」というサインかもしれない、と受け取るのも一つの見方かもしれませんね。
なんか、自分を責める気持ちがちょっと楽になりました。あの感情が「嫌な人間だから」じゃなくて、自分の中の何かのサインだったかもしれないと思うと、少し冷静に見られる気がします。
そう感じてもらえてよかったです。シャーデンフロイデを感じてしまった自分を責めるよりも、「今、自分は誰かと比べて苦しくなっているのかも」と気づくきっかけにできると、少し気持ちが変わってくるかもしれませんね。研究が教えてくれているのは、幸せと感情の関係には、自分の心のあり方が深く関わっているということです。
■ 今日のまとめ
- 他人の不幸を喜ぶ「シャーデンフロイデ」と幸福感の間には有意な相関は見られず、他人の不幸を喜んでも幸せにつながるとはいえないことが研究で示されています。
- シャーデンフロイデの背景には『劣等感を埋めたい気持ち(自己高揚動機)』や『世の中の公平さを感じたい気持ち(正義動機)』があり、自己批判的な傾向や社会への不信感と関連しています。
- 幸福感が高い人はシャーデンフロイデを感じにくい傾向があり、自分に優しく他者や社会を信頼しやすいという特徴との関連が示されています。
■ 出典・注意事項
- 【出典】鄭 珪熙「幸福感とシャーデンフロイデの関係―自己高揚と正義動機を中心に―」東京大学大学院 人文社会系研究科 博士論文、2023年度。https://www.l.u-tokyo.ac.jp/postgraduate/database/2023/2023thesis-97.html / https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/record/2012092/files/A40744.pdf
- 【注意事項①】本研究は相関研究であり、「シャーデンフロイデを感じると不幸になる」「自分に優しくすればシャーデンフロイデが減る」といった因果関係を示すものではありません。
- 【注意事項②】研究の対象集団や実験の条件によって結果が異なる可能性があります。あくまで本研究の範囲内での知見としてご参照ください。
研究自体の紹介はこちら😊
シャーデンフロイデは幸せにつながらない
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2025-08-05-1754431801/