はぴテク相談室:レジリエンスと幸せ、そして場(仕事・家庭・趣味)による違い
最近、仕事ではなんとか踏ん張れるんですけど、家に帰ると気力がゼロになっちゃって。仕事でレジリエンスを使い果たしてるのかな…って自分を責めてるんですよね。
それは辛いですよね。でも実は、「場によってレジリエンスが違う」のはごく自然なことだと示した研究があるんです。まず「レジリエンス」って聞いたことありますか?
なんとなく、困難に立ち向かう力、みたいなイメージですかね。
そうです!正確には「困難や脅威的な状況でもうまく適応していく過程や能力」のことです。で、2025年に日本人の30代1,105人を対象にした研究(上野・平野, 2025)で、仕事・趣味・家庭という「場」ごとにレジリエンスを測ったんですね。すると、場によってレジリエンスの高さが結構違うことが分かったんです。
えっ、じゃあ仕事では高くて家庭では低い、みたいな人がいるってことですか?
まさにそうなんです!「仕事では困難に対処できるけど、家庭では崩れやすい」という人もいる。だから相談者さんが感じていることは、特別おかしなことじゃないんですよ。それぞれの場で違うのは自然な姿、ということが研究で示されています。
それを聞いてちょっとホッとしました。でも、できれば家庭でも踏ん張れるようになりたいんですよね。レジリエンスって高められるんですか?
この研究では、レジリエンスを7つの要素に分けて測っています。大きく2種類あって、ひとつは気質と関係が深い「資質的レジリエンス」で、楽観性・統御力(目標に向かって努力する力)・社交性・行動力の4つ。もうひとつは成長とともに変わりやすい「獲得的レジリエンス」で、問題解決志向・自己理解・他者心理の理解の3つです。後者は経験や学びで変えやすいとされています。
なるほど。じゃあどの要素を高めるといいんでしょう?
ここが研究で一番面白いところなんですが、「全部どこでも高ければいい」というわけではないんです。楽観性・統御力・自己理解は、場によってばらつきがない(どこでも一定に高い)方が、自尊感情や人生満足度が高く、落ち込みにくいという結果が出ました。いわば「自分の核」として安定して持っておくのが大事な要素です。
じゃあ、問題解決志向とか他者心理の理解はどうなんですか?
こちらは逆で、場によってばらつきがある方が幸せに関連していたんです。つまり、仕事では問題解決志向をフル活用するけど、家庭では少し引いて感情的なアプローチを取る、みたいに使い分けることがポジティブな結果と関連していました。「常にロジカルに解決しなきゃ」と家庭でも気を張り続けると、かえって苦しくなる可能性があるわけです。
あー、それ心当たりあります!家でも仕事モードで「解決策は?」ってなっちゃって、妻に「話を聞いてほしいだけなのに」って言われることがあって…。
それはとても良い気づきですね!研究の結果と重なりますね。場に応じて問題解決志向を「出したり引いたり」できることが、心理的な健康と関連しているということなので、意識的に切り替えてみる価値はありそうです。ただし、これは相関の研究なので「使い分ければ必ず幸せになる」と断言はできませんが、参考になる視点だと思います。
楽観性とか自己理解は「核」として高めて、問題解決志向は場で使い分ける、ってことですね。ちなみに、レジリエンスが高いと具体的にどんな良いことがあるんですか?
この研究では、レジリエンスが高い人ほど自尊感情(r=0.44)、人生満足度(r=0.40)が高く、抑うつ状態(r=-0.34)が少なく、立ち直りが早い(r=0.35)という関連が見られました。興味深いのは、世帯年収や学歴といった条件は人生満足度などへの影響が小さかったという点です。外的な条件よりもレジリエンスのような内的な力との関連が大きかったんですね。
お金や学歴よりもレジリエンスの方が関係してるっていうのは驚きました。家に帰ってから「解決しなきゃ」モードを少し緩めてみようと思います。ありがとうございました!
素晴らしい気づきです!仕事でしっかり踏ん張れているということは、すでにレジリエンスの核の部分を持っているということでもありますよ。場によって自分のアプローチを少し柔軟に変えてみるのが、今日のまとめとして一番大事なポイントかもしれませんね。
■ 今日のまとめ
- レジリエンス(困難への適応力)は仕事・趣味・家庭などの「場」によって違いがあることが研究で示されており、場ごとに差があること自体は自然なことです。
- 楽観性・統御力・自己理解は場を問わず安定して高い方が幸せな状態と関連しており、自分の「核」として意識すると良さそうです。
- 問題解決志向や他者心理の理解は場によって使い分けがある方が幸せな状態と関連しており、状況に応じて柔軟にアプローチを変えることが大切です。
■ 出典・注意事項
- 【出典】上野雄己・平野真理(2025)「レジリエンスの『場』による変動性――日本人勤労者の仕事と趣味,家庭の場に注目して」『パーソナリティ研究』34(1), 34.1.12. https://www.jstage.jst.go.jp/article/personality/34/1/34_34.1.12/_pdf/-char/ja
- 【参照】Troy et al., 2023; 小塩他, 2021; 上野他, 2023(レジリエンスとWell-being・生産性の関連について)
- 【注意①】本研究は相関研究です。レジリエンスと幸せな状態が関連していることは示されていますが、レジリエンスを高めれば幸せになれると因果関係を断言するものではありません。
- 【注意②】対象は日本人30〜39歳の勤労者1,105名に限定されており、他の年齢層や職業・文化圏にそのまま当てはまるとは限りません。
- 【注意③】「ばらつきがある方が良い」「ばらつきがない方が良い」という結果も相関に基づくものであり、意図的な使い分けが直接的に心理的健康をもたらすことを証明したものではありません。
研究自体の紹介はこちら😊
レジリエンスと幸せ、そして場(仕事・家庭・趣味)による違い
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2025-07-30-1753915059/