はぴテク相談室:学校におけるケア
うちの子、最近学校に行きたがらなくて…。先生は「ルールを守れない子は困る」って感じで、子どももどんどん自信をなくしてるみたいで。学校って、もっと子どもに優しい場所じゃないといけないんじゃないかなって思うんですが、私の考え方がおかしいですか?
おかしくないですよ、全然。むしろ、とても大切なことに気づいていらっしゃると思います。立教大学の山田恵子先生の論文でも、まさにその問題が取り上げられているんです。ユニセフの調査によると、日本の子どもの「精神的幸福度」、つまり心の豊かさや満足感のようなものが、世界的に見て著しく低いという結果が出ているんです。
えっ、そんなに低いんですか。でもなんで日本の子どもはそんなに幸福度が低いんでしょう?
山田先生の論文では、その原因のひとつとして「競争的な教育環境」が挙げられています。それから「ゼロトレランス」や「スタンダード」という考え方が学校に広がっていることも関係していると指摘されています。ゼロトレランスというのは「ルール違反はどんな小さなことでも厳しく罰する」という方針で、スタンダードは「全員がこの行動基準に従わなければならない」という細かいルール集のようなものです。
あー、うちの子の学校もまさにそれです。ちょっとしたことでもすごく厳しく注意されるって言ってて。そういう環境が子どもの心に影響しているってことなんですね。
そうなんです。実は国連の子どもの権利委員会も、日本の学校のこうした競争的な環境から子どもを解放するよう、日本政府に勧告を出しているんです。そこで山田先生が提案しているのが、学校に「ケア」の考え方を取り入れることです。ケアというのは、簡単に言うと「その子をひとりの人間として丁寧に気にかけ、寄り添うこと」です。
ケア、ですか。でも学校ってどうしても集団で動くところですよね。個々の子どもに寄り添うのって、現実的に難しくないですか?
するどい疑問ですね。論文の中では、実際にそれをやっている学校の例が紹介されているんですよ。たとえば大阪の「みんなの学校」という公立小学校では、どんな子も排除せずに一緒に学ぶ実践をしています。福岡の立花高校では「できていることを認め合う」文化を大切にしていて、一人ひとりを粗末にしないということを学校全体で大事にしているそうです。
そういう学校があるんですね。うらやましい…。具体的にはどんなことをしているんでしょう?
山田先生の論文では、「教育的指導」と「福祉的援助」を融合させることが大切だと書かれています。「教育的指導」というのは学力とか規律とか、いわゆる学校らしい指導のこと。「福祉的援助」というのは、その子が今どんな状況にあるか、何に困っているかに目を向けてサポートすることです。この両方を組み合わせることで、子どもが安心して学べる場になるという考え方です。
なるほど。でも先生たちって忙しいですよね。そこまで一人ひとりを見る余裕があるのかなって思ってしまうんですが。
確かにそこは現場の大きな課題ですよね。論文では、「生徒指導」と「教育相談」を連携・協働させることが重要だと提案されています。「教育相談」というのは、集団の中で個に焦点を当てて、子どもが抱える課題に向き合う取り組みのことです。これは先生ひとりが抱え込むのではなく、学校全体の仕組みとして機能させることが理想だと論文は述べています。
学校全体の仕組みとして、というのが大事なんですね。じゃあ、親として私にできることって何かありますか?
論文が直接親向けの提言をしているわけではないのですが、山田先生が強調しているのは「子どもがケアされる権利」があるということです。お子さんが「学校は安心できる場所じゃない」と感じているとしたら、その気持ちはちゃんと意味があるものです。まずはお子さんの話をじっくり聞いて、「あなたの感じていることは正しい」と伝えてあげることが、家庭でできるケアのひとつかもしれません。
子どもがケアされる権利、という言葉が刺さりました。なんか、子どもがルールに合わせなきゃいけないって思いすぎてたかもしれないです。もう少し子どもの話を聞いてみます。ありがとうございました。
お子さんのことを真剣に考えていらっしゃるのが伝わってきました。山田先生の論文が示しているのは、学校が変わることへの期待でもあるのですが、同時に「子どもが幸せになることを目指す」という視点が、家庭にも学校にも共通して大切だということだと思います。お子さんにとって、少しでも安心できる場が増えるといいですね。
■ 今日のまとめ
- ユニセフの調査では日本の子どもの精神的幸福度は著しく低く、山田先生の論文はその背景に競争的な教育環境やゼロトレランス・スタンダードの広がりがあると指摘しています。
- 学校に「ケア」の考え方を位置づけること、つまり「教育的指導」と「福祉的援助」を融合させ、一人ひとりの子どもに寄り添う仕組みをつくることが、子どもの幸福度向上に寄与できる可能性があると論文は述べています。
- 「教育相談」を生徒指導と連携させ学校全体の仕組みとして機能させることで、子どもが安心できる場をつくることが目指されており、「子どもがケアされる権利」という視点が重要だと強調されています。
■ 出典・注意事項
- 山田恵子「学校におけるケア─『教育相談』の可能性」立教大学コミュニティ福祉研究所紀要第12号、2024年12月25日 https://rikkyo.repo.nii.ac.jp/record/2001213/files/AA12646974_12_06.pdf
- 【注意事項】本論文は論考・文献レビューであり、統計的な因果関係を示した実験研究ではありません。紹介されている実践例(みんなの学校・立花高校・金森学級等)は個別の事例であり、すべての学校や子どもに同様の効果があるとは限りません。
- 【注意事項】ユニセフの精神的幸福度調査は国際比較の調査データであり、学校環境との因果関係を直接証明するものではなく、あくまで関連を示すものです。
研究自体の紹介はこちら😊
学校におけるケア
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2024-12-25-1735157783/