はぴテク相談室:ワークファミリーコンフリクトとウェルビーイング
最近、仕事がすごく忙しくて…家族との時間が全然取れていないんです。子どもの寝顔しか見られない日が続いていて、なんとなくモヤモヤしているし、仕事でも集中できていない気がして。これって関係あるんでしょうか?
それは辛いですね。実はそのモヤモヤ、研究でもしっかり裏付けられているんです。「ワークライフコンフリクト」という概念があって、仕事と家庭生活の両立がうまくいかずに葛藤を感じている状態のことを指します。まさに今おっしゃっているような状況ですね。
ワークライフコンフリクト…聞いたことあるような気もします。それが仕事の集中力にも影響するんですか?
そうなんです。ヨーロッパ33カ国・約18,000人を対象にした2024年の研究では、ワークライフコンフリクトがあると、まず「家族生活への満足度」と「仕事への満足度」の両方が下がる、という関連が確認されています。そしてそれが連鎖して、全体的な幸福感まで下がっていくという流れが見られました。
両方に影響するんですね…。仕事がしんどいから家庭がおろそかになって、家庭がうまくいかないから仕事もうまくいかなくなる、みたいな感じですか?
まさにそのイメージです。研究でも、仕事→家庭、家庭→仕事の双方向の影響が確認されています。さらに面白いのが、この影響の大きさで、なんとワークライフコンフリクトだけで「主観的な幸福感のばらつきの36%」を説明できたというんです。これはかなり大きな数字です。
36%!それはすごいですね。でも具体的にどんなことが起きるんでしょう?なんとなく疲れてる、くらいのことですか?
いえ、思っているよりずっと幅広い影響があることが複数の研究からわかっています。仕事面では、パフォーマンスの低下や燃え尽き症候群、欠勤や「もう辞めたい」という気持ちが出やすくなるといった関連が報告されています。家庭面では、夫婦間の満足度や家族として機能する力の低下との関連も見られています。
家族との関係にまで影響が出るんですね…。身体的なことはどうですか?精神的なものだけじゃなくて?
実は身体にも関連が報告されていて、ストレスや不安、イライラしやすくなることに加えて、高血圧や身体症状(疲労・食欲不振など)との関連も複数の研究で示されています。さらに、アルコールや喫煙の増加との関連も指摘されているんです。
それはちょっと怖いですね…。じゃあ逆に、仕事と家庭のバランスが取れていると、幸せを感じやすくなるということですか?
この研究の文脈で言うと、ワークライフコンフリクトが少ない状態では、家族・仕事それぞれの満足度が保たれ、それが「今の生活に満足している」という主観的な幸福感や、さらに「自分らしく生きている」「成長できている」といったエウダイモニックな幸福感(充実感や生きがいのようなもの)にも良い関連があることが示されています。
エウダイモニックな幸せって何ですか?難しそうな言葉ですが…
わかりやすく言うと、「楽しい・うれしい」という感情的な幸せとは少し違って、「自分の人生に意味がある」「自分の能力を活かせている」「自分らしく生きている」という感覚のことです。今回の研究では、主観的な幸福感が下がると、この充実感や生きがい感にも連鎖して影響が出ることがわかっています。
なるほど。じゃあ今の自分の状況、ちゃんと向き合ってみようと思います。仕事と家庭のバランスって、意識することが大事なんですね。
そうですね。「仕事と家庭の両立がうまくいっているか」を意識してみるだけでも、自分の状態を把握するきっかけになります。この研究が示しているのは、仕事と家庭は切り離して考えるものではなく、お互いに影響し合っているということ。どちらか一方だけを頑張るより、両方に目を向けることが、幸福感全体につながっている可能性があるということです。
■ 今日のまとめ
- 仕事と家庭の両立がうまくいかない「ワークライフコンフリクト」は、仕事満足度・家庭満足度の両方の低下と関連しており、それが連鎖して主観的な幸福感や生きがい感(エウダイモニック幸福)の低下とも関連していることが示された
- ヨーロッパ33カ国・約18,000人のデータでは、ワークライフコンフリクトだけで主観的幸福感のばらつきの36%が説明されるほど、大きな関連が確認された
- 仕事と家庭は切り離せない関係にあり、燃え尽き・身体症状・夫婦満足度など幅広い領域への関連も複数の研究で報告されている
■ 出典・注意事項
- 出典:Timms, C. et al. (2024). How Does Work-Life Conflict Influence Wellbeing Outcomes? A Test of a Mediating Mechanism Using Data from 33 European Countries. Quality of Life Research. https://link.springer.com/article/10.1007/s11482-024-10401-1
- 注意事項①:本研究は横断調査(ある時点のデータ)をもとにした相関関係の分析であり、ワークライフコンフリクトが幸福感を『引き起こす』という因果関係が証明されたわけではありません
- 注意事項②:データは2016年の欧州生活の質調査に基づいており、ヨーロッパ33カ国が対象です。日本など他の文化・社会制度の文脈にそのまま当てはまるとは限りません
- 注意事項③:仕事・家庭への影響として紹介した各項目は、本論文が引用している複数の先行研究によるものであり、それぞれ対象集団や測定方法が異なります
研究自体の紹介はこちら😊
ワークファミリーコンフリクトとウェルビーイング
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2024-11-30-1732980778/