はぴテク相談室:メンタルヘルス不調な方に対するウェルビーイングカード
メンタルの不調で休職していて、最近少しずつ回復してきました。復職に向けて自分を見つめ直したいんですが、ウェルビーイングとか自己理解のワークって、今の自分にも使えるものなんでしょうか?
回復の途中で、自分を見つめ直したいと思えるようになったんですね。それだけでも大きな一歩だと思います。実はまさにそのテーマ、「メンタル不調から回復しつつある人に、ウェルビーイングのワークは役立つのか?」を調べた研究が2024年に発表されているんです。今日はその内容をもとにお話しできればと思います。
ウェルビーイングのワーク、ですか。なんとなく「ポジティブ思考しましょう」みたいな話かなとイメージしてたんですが、どんなものなんですか?
よくそのイメージを持たれる方、多いんですよ。この研究で使われたのは「ウェルビーイングカード」というもので、自分にとって大切なことや、心地よさに関係する言葉が書かれたカードを選んで、自分の価値観を整理したり、他の人と話すきっかけにしたりするものです。「ポジティブに考えよう!」と押し付けるものではなく、自分の内側にあるものを引き出すようなイメージです。
それは面白そうですね。でも、回復途中の人が「自分の価値観を見つめ直す」って、しんどくなったりしないんでしょうか?
実はそこが、この研究でとても重要なポイントとして出てきているんです。復職支援プログラムを利用した経験がある方たちにワークをやってもらい、感想を聞いたところ、「振り返りができた」「気づきが得られた」「共感してもらえた」「他の人と交流できた」といったポジティブな声がある一方で、「カードに書かれた言葉を自分のこととして考えられない」「他の人にどう思われるか怖い」「共感が少ないと落ち込む」といった課題も出てきたんです。
「共感が少ないと落ち込む」…それ、すごくわかる気がします。回復中って、ちょっとしたことで気持ちが揺れるんですよね。
そうなんです。だからこそ研究では、「そのまま使えばいい」というわけではなく、使い方に工夫が必要だという結論になっています。具体的には、「回復の段階に合わせてカードを選ぶ」「参加する人を限定する」「休職の原因や回復の段階が似ている人同士でグループを作る」といった工夫が必要だと指摘されています。
「カードを選ぶ」というのは、どういうことですか?
カードの中には、人によっては「休職のきっかけになったこと」を思い出させてしまうものや、「こうあるべき」というプレッシャーを感じさせるようなポジティブな言葉のカードもあるんです。そういうカードは、回復途中の段階では使わない方がいい、と研究では指摘されています。「ポジティブな言葉がプレッシャーになる」という声が実際に上がっていたんです。
ポジティブな言葉がプレッシャーになる、か……。確かに「元気になろう!」みたいな言葉を見ると、「自分はまだそこに届いていない」って感じてしんどくなることありますよ。
その感覚、とても自然なことだと思います。この研究でも、「復職や人前で話すことに前向きな状態まで回復してから」使うのが適切で、そのうえで不調を想起させるカードやプレッシャーになるカードは除いた形で実施するべきだ、という結論になっています。つまり「ウェルビーイングのワーク=誰にでもすぐ有効」ではなく、その人の回復段階に合わせて形を変えることが大事、ということなんです。
じゃあ、今の自分にとっては「まだ早い」ということもあり得るんですね。でも、何もしないよりは何かしたい気持ちもあって…。
「何かしたい」という気持ちは、回復のエネルギーが出てきているサインでもあると思いますよ。研究では、「似た境遇の人との対話」に対するニーズも示唆されています。一人でワークに取り組むより、同じような経験をしている人と話すことへの需要が見られたんです。今すぐ大きなワークをするより、「似た立場の人と少し話してみる」くらいの小さな一歩から始めるのも、ひとつの選択肢かもしれません。
なるほど。自分の回復段階を見ながら、無理のない形で取り組むのが大事なんですね。今日の話、すごく参考になりました。
こちらこそ、ちゃんと自分の状態と向き合っていらっしゃるのが伝わりました。ウェルビーイングの取り組みは「そのままやればいい」ものではなく、回復の段階に合わせて形を整えてこそ力を発揮するもの。今日お話しした研究が、少しでもヒントになれば嬉しいです。
■ 今日のまとめ
- ウェルビーイングカードワークは、価値観の整理や他者との交流を促す効果が示唆されている一方、回復段階によってはしんどさを生む可能性もある
- 「ポジティブな言葉がプレッシャーになる」「共感が少ないと落ち込む」など、回復途中ならではの課題があることが研究から示唆されており、そのまま使えばいいものではない
- 回復の段階に合わせてカードを選ぶ・似た境遇の人とグループを組むなど、形を工夫して使うことが重要だと指摘されている
■ 出典・注意事項
- 出典:「メンタルヘルス不調者のWell-beingを引き出すためのワークの開発―復職支援プログラム利用経験者に対するウェルビーイングカードワークショップをベースとしたニーズ調査」日本デザイン学会研究発表大会概要集 71巻, 2024年10月9日 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssd/71/0/71_360/_pdf
- 注意事項①:本研究は復職支援プログラム利用経験者という限られた対象に対する調査であり、すべての方に同じ結果が当てはまるとは限りません
- 注意事項②:「効果が示唆された」という表現にあるように、これはあくまで可能性を示した探索的な研究であり、因果関係を証明したものではありません
- 注意事項③:ウェルビーイングセラピーの再発予防効果については本研究とは別の研究知見であり、本研究自体で検証されたものではありません
研究自体の紹介はこちら😊
メンタルヘルス不調な方に対するウェルビーイングカード
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2024-10-19-1729371410/