2024.05.31

はぴテク相談室:幸福についての研究の系譜と今後の課題

相談者

最近、なんとなく毎日が楽しくなくて…「幸福って何なんだろう」ってよく考えるんです。幸福になるにはどうすればいいのか、そもそも幸福って何なのか、よく分からなくなってしまって。

はぴテクさん
はぴテクさん

それは大切な問いですね。実は「幸福とは何か」という問いは、哲学・心理学・経済学にまたがって、何千年も研究されてきたテーマなんです。今日は、その研究の流れをいっしょにたどりながら、少しヒントを探してみましょう!

相談者

何千年もですか!古代の人たちも悩んでいたんですね。古代ではどんな風に考えられていたんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

古代ギリシャ・ローマの哲学者たちは、幸福を大きく二つの方向で考えていました。一つは「快楽や喜びを感じること」、もう一つは「自分らしく充実した生き方をすること(善く生きること)」です。アリストテレスが提唱した後者の考え方は「エウダイモニア」と呼ばれ、今の幸福研究にも大きな影響を与えています。

相談者

「善く生きること」が幸福、というのは深いですね。近代に入るとまた変わってくるんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

そうなんです。ヨーロッパの近世・近代になると、「できるだけ多くの人の幸福を最大化しよう」という功利主義の考え方が登場します。ベンサムなどが代表的で、社会全体の幸福を考えるという視点が加わりました。「個人の幸福」だけでなく「社会の幸福」も問われ始めたわけです。

相談者

なるほど。じゃあ現代の研究ではどんなことが分かってきているんですか?もう少し実践的な話を聞きたいです!

はぴテクさん
はぴテクさん

現代では、心理学者のセリグマンが「ポジティブ心理学」という分野を提唱しました。それまでの心理学が「病気や問題を治す」方向に集中していたのに対し、「人がより良く生きるにはどうすればいいか」という前向きな問いに光を当てた動きです。彼は幸福の要素として、ポジティブな感情・没頭(フロー)・良い人間関係・意味・達成感などを挙げています。

相談者

「意味」や「達成感」も幸福の要素なんですね。単に楽しいだけじゃないんだ。他に面白い研究はありますか?

はぴテクさん
はぴテクさん

リュボミアスキーという心理学者は、実験をとおして幸福感に影響する要因を調べてきました。その研究では、幸福感の約50%は生まれ持った気質(遺伝的要因)、約10%は生活環境(収入・住む場所など)、残りの約40%は日々の意図的な行動や思考のパターンと関連している、という考え方を提示しています。ただし、これはあくまで相関をもとにした推計であり、誰にでもそのまま当てはまるわけではありません。

相談者

40%が「行動や思考のパターン」に関連しているというのは、ちょっと希望が持てる話ですね。でも経済学的にはどう見るんですか?お金と幸福って関係あるんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

経済学では「幸福の経済学」という分野で、所得や雇用状況と幸福感の関係が研究されてきました。一定レベルまでは所得と幸福感に関連が見られる一方で、ある程度を超えると関係が薄くなるという傾向を示す研究もあります。ただし、これも相関の話であり、「お金を増やせば幸福になれる」と因果的に言えるわけではない点には注意が必要です。

相談者

お金だけが幸福じゃないということは何となく分かっていましたが、研究でも示されているんですね。ところで「幸福」「生きがい」「ウェルビーイング」ってよく聞きますが、これって同じことですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

この論文でも重要なポイントとして取り上げられています!「幸福」は主に主観的な喜びや満足感を指すことが多く、「生きがい」は日本語特有のニュアンスで「生きる意味・張り合い」を含む概念、「ウェルビーイング」は身体・精神・社会的な健康すべてを含む広い概念です。これらは重なり合う部分もありますが、完全に同じではなく、研究ごとに少しずつ定義が違うので注意が必要です。

相談者

なるほど、「ウェルビーイング」って意外と広い言葉なんですね。じゃあ、私が「毎日が楽しくない」と感じているとき、どこから変えていけばいいんでしょう?

はぴテクさん
はぴテクさん

研究の流れから見ると、「環境を大きく変えなくても、日々の行動や思考のパターンに目を向けてみる」というのが一つのヒントになりそうです。たとえば、意味を感じられることに少し時間を使う、人とのつながりを意識するなど、小さなことから試してみることが関連していると示されています。ただし、万人に効く一つの答えがあるわけではなく、何が自分にとっての「幸福」かをじっくり問い直すこと自体も、大切なプロセスかもしれませんね。

■ 今日のまとめ

  • 幸福の研究は古代ギリシャから現代まで続いており、「快楽」だけでなく「意味・充実・人とのつながり」なども幸福の要素として研究されてきた
  • 現代心理学(ポジティブ心理学・リュボミアスキーの研究)では、日々の行動や思考のパターンが幸福感と関連している可能性が示されているが、あくまで相関であり因果ではない
  • 「幸福」「生きがい」「ウェルビーイング」は似ているようで異なる概念であり、自分にとっての幸福を問い直すこと自体が大切なプロセス

■ 出典・注意事項

  • 出典:中村和彦「幸福についての研究の系譜と今後の課題」立命館経済学 第71巻第6号, 2023年3月 http://ritsumeikeizai.koj.jp/koj_pdfs/71606.pdf

  • 注意事項①:本論文は哲学・心理学・経済学の幸福研究を概観したレビュー論説であり、個々の知見は各研究の相関データに基づくものです。因果関係が証明されているわけではありません

  • 注意事項②:リュボミアスキーの「幸福感の50/10/40%モデル」は影響力の大きい仮説的推計ですが、個人差が大きく、すべての人に均等に当てはまるものではありません

  • 注意事項③:「幸福」「生きがい」「ウェルビーイング」の定義は研究者・文化・時代によって異なり、本論文でも概念の統合が今後の課題として挙げられています

投稿者によるコメント・補足(1件)
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研究自体の紹介はこちら😊
幸福についての研究の系譜と今後の課題
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2024-05-31-1717146010/

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