はぴテク相談室:これまでの道徳教育とウェルビーイング~中学校の指導要領より~
最近、学校教育と幸せって関係あるのかなってふと気になって。特に道徳の授業って、子どもの幸せ感に何か影響してるんでしょうか?
いい着眼点ですね!実は日本の中学校の道徳教育って、「幸せ」という概念をどう扱うか、時代とともにけっこう大きく変わってきているんです。國學院大學の研究でその変遷が丁寧に整理されていて、とても興味深い内容でしたよ。
えっ、そうなんですか!どんなふうに変わってきたんですか?
大きく分けると3つの時代があります。まず約60年前、1958年(昭和33年)に道徳の授業が始まった頃は、指導要領に「真の幸福は何であるかを考え、絶えずこれを求めていこう」という言葉がはっきり入っていたんです。物質的な豊かさだけじゃなく、心の底から満足できる長続きする幸福を求めよう、という内容でした。
へえ、昔の方がむしろ「幸せ」って直接的に言ってたんですね。今の方が言いそうなイメージがありました。
意外ですよね!ところが約25年前、1989年(平成元年)の改訂で「幸福」という言葉がスッと消えてしまうんです。代わりに出てきたのが「公共の福祉と社会の発展のために尽くす」という表現でした。研究者はここで、個人のウェルビーイング(幸せ)から社会のウェルビーイングへ重点が移ったと分析しています。
自分の幸せより、社会のためにっていう方向になったんですね。それって今の若い人が社会貢献に関心が高いこととも何か関係あるのかな…?
面白い視点ですね!ただ研究ではそこまでの因果関係は示されていないので、あくまで「もしかしたら似た流れかも」という話になりますが。そして更に約7年前、2017年(平成29年)の改訂では「公共の福祉」という言葉も消えて、今度は「公共の精神」という表現に置き換えられました。研究者はここで「ますます個人の幸せ」という視点が遠ざかったと指摘しています。
どんどん「自分の幸せ」から離れていってる感じがしますね。それって子どもにとってはどうなんだろう…。
まさにそこが研究者の問題意識でもあって。一方で近年は「ウェルビーイング」が教育の中核に据えられるようになってきていて、いわば「幸せ」が教育に戻ってきつつある流れもあるんです。今まさに転換点にある、というのが研究の見立てです。
じゃあ、今の道徳の授業で「幸せ」について考える時間ってどのくらいあるんでしょう?
文科省が出している実践事例を見ると、「幸せって何だろう?」をテーマにした授業は中学生向けにあるんですが、1時間だけなんですよね。研究者も「もう少し増やせると良さそう」という見方をされています。
たった1時間!それはちょっと少ない気がしますね…。
そうですよね。ちなみに「道徳的な人は幸せになりやすい」という研究知見もあるので、道徳教育とウェルビーイングはつながりが深いテーマなんです。研究者は、まず自分自身の幸せをしっかり考えた上で、それを社会の幸せへとつなげていく視点が大切、というメッセージを込めているように読めます。
自分の幸せを考えることと、社会の幸せって、どちらかじゃなくて両方大事ってことですよね。
まさにそこがポイントだと思います!昭和の指導要領にあった「心の底から満足できる、長続きする幸福とは何か」を自分に問う姿勢、これって実はウェルビーイング研究が現代で注目している内容ととても近いんです。個人の幸せと社会とのつながり、どちらも大切にできるといいですよね。これからの道徳教育がどう変わるか、注目ですね。
■ 今日のまとめ
- 日本の中学校道徳教育では、昭和33年には「真の幸福を求める」という個人の幸せが明確に掲げられていたが、平成元年以降は「公共の福祉」「公共の精神」へと社会寄りにシフトし、個人のウェルビーイングという視点は遠ざかってきた。
- 近年は教育の中でウェルビーイングが再び中核に据えられる動きがあり、個人の幸せと社会の幸せをどう両立させるかが、これからの道徳教育の課題として浮かび上がっている。
- 現状では「幸せとは何か」を考える授業は1時間程度にとどまっており、自分の幸せをじっくり問い直す時間をもっと設けることへの期待が研究者から示されている。
■ 出典・注意事項
- 出典:「道徳教育とウェルビーイング」國學院大學学術情報リポジトリ, 2024年5月11日 https://k-rain.repo.nii.ac.jp/record/2000357/files/kyoikugakukiyo_058_004.pdf
- 注意事項①:本研究は指導要領の記述変遷を文献分析したものであり、道徳教育の内容が子どものウェルビーイングを直接高めた・下げたという因果関係を示すものではありません。
- 注意事項②:対象は日本の中学校学習指導要領に限定されており、実際の授業実践や教師の指導内容、子どもへの影響は別途検討が必要です。
- 注意事項③:「道徳的な人は幸せになりやすい」という言及は紹介にとどまり、本論文で詳細に検証されたものではありません。
研究自体の紹介はこちら😊
これまでの道徳教育とウェルビーイング
中学校の指導要領よりhttps://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2024-05-20-1716244206/