はぴテク相談室:散らかりとウェルビーイング
最近、家の中が散らかっていて、なんとなく気分がスッキリしないんです。片付けないといけないとは思うんですが、なかなか重い腰が上がらなくて…。散らかっていると本当に気分って落ちるんですかね?
それは気になりますよね。実はその感覚、研究でも裏付けられているんです。2021年にイギリスの学術誌「Journal of Environmental Psychology」に掲載された研究で、1,111人の成人を対象に「部屋の散らかり具合」と「幸福度」の関係を調べた面白い研究があります。結論から言うと、『主観的に部屋が散らかっていると感じている』ことが、幸福度と強く結びついていたんですよ。
主観的に、というのはどういう意味ですか?実際に散らかっているかどうかとは違うんですか?
いい質問です!この研究では、散らかりを2種類で測定しました。一つは写真などを使って第三者が客観的に評価した「客観的な散らかり」、もう一つは自分自身が「散らかっている」と感じる「主観的な散らかり」です。面白いことに、この二つは必ずしも一致しないんですね。そして幸福度との関連が強かったのは、客観的な状態よりも、自分が感じる主観的な散らかり具合の方だったんです。
つまり、実際にどれだけ物が多いかより、自分が『散らかってる』と感じているかどうかの方が気分に影響するということですか?
そういうことです。主観的に『部屋が散らかっていない』と感じている人は、ポジティブな感情や達成感が高い傾向にあることが示されました。逆に、主観的に散らかっていると感じていると、幸福度が落ちやすい、という関連が見られたわけです。ただしこれはあくまで相関の研究なので、散らかりが幸福度を『下げる』と断言できるわけではない点は頭に置いておいてください。
なるほど。じゃあとにかくこまめに片付ける習慣をつければ、幸福度も上がるということですかね?
実はここが少し意外な結果で、片付けを頻繁にする人は確かに主観的にも客観的にも部屋が整っており、家への愛着も高い傾向にありました。でも、片付けの頻度そのものは幸福度に直接の関連は見られなかったんです。だから『とにかくこまめに片付ければ幸せになる』という単純な話ではないようで、もう少し別の要素が大事みたいです。
別の要素というのは何ですか?
それが『自分らしい家』かどうか、という点です。研究では『家庭での自己表現』、つまり自分のアイデンティティや好みが部屋に反映されていて、『ここは自分の居場所だ』と感じられる感覚が、主観的な散らかり具合と並んで幸福度に大きく関わっていることが分かりました。研究では『心理的な我が家』という表現で呼んでいます。
なるほど!ただ物を減らすだけでなく、自分らしい空間にすることが大事なんですね。それは確かに納得感があります。では実際にどうやって片付ければいいんでしょう?
片付け方として参考になるのが、ライフハッカーさんで紹介されていた『ピーター・ウォルシュ・メソッド』です。まずその空間をいったん全部空っぽにして、次に『この空間をどう使いたいか』というビジョンを描きます。そのうえで取り出した物を『ビジョンに合う物』と『処分する物』の2つに分けて、必要な物だけ戻す場所を考えていく、という流れです。これが研究の知見とも相性がいいと思いますよ。
それはなぜですか?
なぜかというと、ただ捨てるだけでなく『この空間をどうしたいか』というビジョンを描くステップがあるからです。そこに自分の価値観や好みが入ってきますよね。それが結果的に『自分らしい空間』につながり、研究が示す『心理的な我が家』の感覚にもつながりやすいんじゃないかと思います。
片付けの話だと思っていたのに、自分らしい空間づくりという視点が出てきて、なんか前向きな気持ちになれました。客観的に散らかっているかどうかより、自分がどう感じているかが大事というのも目からウロコでした!
そうなんです。『実際どれだけ散らかっているか』ではなく、『自分がどう感じているか』と『この空間は自分らしいか』という2つの視点が、幸福度と関わりが深いという研究結果です。片付けが億劫に感じるときも、『きれいにしなきゃ』というプレッシャーよりも、『どんな空間にしたいか』というイメージから始めてみるといいかもしれませんね。
■ 今日のまとめ
- 主観的に部屋が散らかっていると感じることが幸福度と強く関連しており、実際の客観的な散らかり具合よりも『自分がどう感じるか』の方が大切。
- 片付けの頻度そのものは幸福度と直接の関連は見られず、それよりも『自分らしい空間』=心理的な我が家の感覚が幸福度と強く関わっていることが分かった。
- 片付けをするときは『捨てること』だけでなく、『この空間をどう使いたいか』というビジョンを描くことで、自分らしい居場所づくりにつながりやすい。
■ 出典・注意事項
- 出典:Harris, C. B., Sutton, J., & Barnier, A. J. (2021). Home and the extended-self: Exploring associations between clutter and wellbeing. Journal of Environmental Psychology, 73, 101576. https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0272494421000062
- 参考記事:ライフハッカー「連休中にやるのが正解?アグレッシブな整理整頓術『ピーター・ウォルシュ・メソッド』」(2024/5/2) https://www.lifehacker.jp/article/2505-try-the-peter-walsh-method-for-serious-decluttering/
- 【注意事項】この研究は横断的な相関研究です。散らかりが幸福度を下げる・上げるという因果関係を示したものではありません。
- 【注意事項】参加者の多くが女性であり、一般集団全体に結果をそのまま当てはめられるわけではありません。
- 【注意事項】幸福度の測定にはPERMAモデル(ポジティブ感情・エンゲージメント・人間関係・意味・達成)が使用されており、幸福度の一側面を捉えたものです。
研究自体の紹介はこちら😊
散らかりとウェルビーイング
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2024-05-03-1714707150/