はぴテク相談室:プランドハプンスタンス理論とキャリア
最近、キャリアについて悩んでいて…。なんか、周りの人って偶然の出会いや機会をうまくつかんでどんどん進んでいく感じがするんですけど、私にはそれができなくて。どうしたらいいんでしょう?
それはもやもやしますよね。実はその「偶然をうまくつかむ力」って、研究でもちゃんと注目されているんですよ。「プランドハプンスタンス理論」という考え方があって、キャリアにおける偶然の出来事を、ただのラッキーじゃなくて、学びのチャンスとして積極的に活かしていこう、という考え方なんです。
偶然をつかむ力って、鍛えられるものなんですか?なんとなく「運がいい人」と「悪い人」って生まれつき決まってる気がしてたんですけど。
面白い視点ですね!この理論では、偶然をうまく活かすためのスキルが5つあると言われています。「好奇心」「粘り強さ」「柔軟さ」「楽観性」「リスクをとる勇気」の5つです。これって確かに、ある程度は意識して育てられそうな要素ですよね。さらに研究者たちはこれを「境遇活用スキル」として、もっと具体的な6つのスキルに整理しています。
6つのスキルって何ですか?
「興味を探索すること」「続けること」「変化に対応すること」「楽観的に物事を見ること」「自分から動き出すこと」「人とのつながりを活かすこと」の6つです。偶然のチャンスに気づいて、それをキャリアに結びつけるための具体的な行動や考え方、と思ってもらうといいかもしれません。
なるほど…でも、そういうスキルって、もともとの性格とか気質に左右されたりしませんか?私、わりと慎重なタイプなので、なんか不利な気がして。
実はそこが今日紹介したい研究の核心なんです!日本の研究者たちが大学生を対象に調べたところ、個人の気質のひとつ「BAS(行動賦活システム)」、つまり「ご褒美や良いことへの感度が高い」気質の人は、境遇活用スキルが形成されやすいという関連が確認されました。反対に「BIS(行動抑制システム)」、つまり「リスクや罰への感度が高くて行動を抑えやすい」気質の人は、スキルが形成されにくいという関連も見られました。
BASとBISって、具体的にどんな感じですか?わかりやすく教えてもらえますか?
BASは「飴(あめ)への感度」、BISは「ムチへの感度」とイメージするとわかりやすいですよ。BASが高い人は、良いことや楽しそうなことに自然とアンテナが張れて、前向きに動きやすい。BISが高い人は、失敗やリスクが気になって、行動にブレーキがかかりやすい。この2つは独立した神経的な基盤を持っているとされていて、どちらかが高いからといって、もう一方が低いわけではないんです。
私、たぶんBISが高めで、チャンスがあっても「でも失敗したら…」って考えちゃうんですよね。そういう人はもうダメってことですか?
そんなことはないですよ!研究が示しているのはあくまで「気質との関連がある」ということで、気質がすべてを決めるという話ではありません。さらにこの研究では、対人関係スキルにおいて「BISとBASが両方関わる交互作用」が確認されたことも報告されていて、話はそんなに単純じゃないんです。また、この研究の意義のひとつは「個人差を考慮したキャリア支援が必要だ」ということ。つまり、慎重なタイプにはそのタイプに合ったアプローチがある、という視点が大事なんです。
「自分の気質を知った上でキャリアを考える」ってことですね。じゃあ、慎重な自分でもできることって何かありますか?
そうですね。たとえば「楽観的認識スキル」を意識してみることはひとつの手かもしれません。出来事をネガティブに解釈するクセがあるなら、「これは学びのチャンスかも」と少し視点をずらしてみる練習です。また「興味探索スキル」として、小さなことでもいいので「気になること」を意識的にメモしておくだけでも、偶然のアンテナが立ちやすくなるかもしれません。ただこれはあくまでこの研究の知見からのヒントであって、「これをすれば必ず良くなる」という因果関係が証明されているわけではないので、そこは念頭においてくださいね。
自分の気質を責めるんじゃなくて、それを踏まえた上でどう動くかを考えればいいんですね。なんか少し楽になりました。
まさにそれです!「慎重さ」もうまく使えば、チャンスをじっくり見極める力になりますし、気質はあくまで「スタート地点」のひとつ。この研究自体、大学生を対象にした日本の研究なので、すべての人に当てはまるとは言えませんが、「偶然をつかむ力には個人差があり、それを考慮しながらキャリアを考えていいんだ」という視点は、きっと役に立つと思いますよ。
■ 今日のまとめ
- 偶然の出来事をキャリアに活かす「境遇活用スキル」は、好奇心・粘り強さ・柔軟性・楽観性・行動力など6つの具体的なスキルとして整理されている
- 「ご褒美・良い結果への感度(BAS)」が高い気質の人はこのスキルと正の関連があり、「リスク・罰への感度(BIS)」が高い気質の人は負の関連があることが、大学生を対象とした研究で示された
- 気質はキャリアのスタート地点のひとつに過ぎず、自分の気質の特性を知ったうえで、それに合ったやり方でスキルを育てていく視点が大切
■ 出典・注意事項
- 出典:浦上昌則ほか「Happenstance Learning Theoryに基づく境遇活用スキルの気質的基盤―Grayの行動抑制/行動賦活システムからの検討―」キャリア教育研究, 42(1), 2023. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssce/42/1/42_15/_pdf
- 注意事項①:本研究は相関研究であり、BIS/BASが境遇活用スキルを直接「引き起こす」という因果関係が証明されているわけではありません
- 注意事項②:対象は日本の大学生228名・145名であり、社会人や他の年齢層・文化圏への一般化には限界があります
- 注意事項③:気質(BIS/BAS)はあくまで統計的な関連が示されたものであり、気質によってキャリアの成否が決まるという意味ではありません
研究自体の紹介はこちら😊
プランドハプンスタンス理論とキャリア
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2023-10-15-1697407205/