2026.07.01

はぴテク相談室:「リーダーのフリ」がしんどいあなたへ

相談者

はぴテクさん、最近ずっとモヤモヤしてて…。半年前に課長になったんですけど、いまだに「自分なんかがリーダーでいいのかな」って感じが消えないんです。会議で決断するのも、部下に指示を出すのも、なんか「リーダーっぽく振る舞ってる」だけで、本当の自分じゃない気がして。役職だけが先に来ちゃった感じというか…。これって私がダメなんでしょうか?

はぴテクさん
はぴテクさん

あー、それはしんどいですね。でも最初に言わせてください。それ、あなたがダメなわけじゃ全然ないですよ。むしろ、ものすごく「あるある」な現象なんです。
研究の世界では、正式なリーダーの役職に就くことと、「自分はリーダーだ」と心から思えること(これをリーダーアイデンティティと言います)は、必ずしも同時に起きないことが分かっているんです(Epitropaki et al., 2017)。
※リーダーアイデンティティ=「自分をリーダーとして捉える、頭の中の自己イメージ」のこと。

相談者

え、肩書きがあっても、自動的にはリーダー気分にはならないってことですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

そうなんです。しかも面白いのが、正式なリーダーの立場にある人ほど、その感覚に苦しみやすいと分かっている(Kark et al., 2022)。あなたが今感じている「リーダーのフリをしてるだけ」「いつかバレそう」という感覚、これ専門的には「リーダー・インポスター現象」と呼ばれていて、ちゃんと名前がついてるくらいよくあることなんですよ。
※インポスター=「詐欺師」の意味。自分は実力不足で、本当はこの立場にふさわしくない、と感じてしまう状態。

相談者

名前がついてるんだ…。ちょっと安心しました。でも、安心したところで、どうすればこのモヤモヤから抜け出せるんでしょう?

はぴテクさん
はぴテクさん

いい質問です。ここからが本題。実はオランダで、22人のベテラン経営者・管理職に「あなたがリーダーになっていった人生の物語」をじっくり聞き取った研究があるんです(Zaar, Van den Bossche & Gijselaers, 2026)。写真や思い出の品を持ってきてもらって、人生を振り返ってもらうという、すごく丁寧な調査で。
そこで分かったのは、多くの人が、まさにあなたと同じ「インポスター感覚」からスタートして、何年もかけて「これが自分のリーダーシップだ(オリジナルである感覚)」へと移っていった、ということなんです。

相談者

みんな最初は私みたいだったんですか…!じゃあ、その人たちは何をして抜け出したんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

大きく3つの「頭の中の変化」があったんです。順番にいきますね。
ひとつ目は「リーダー観が広がる」こと。最初みんな、リーダーを「決断して命令する、強くて偉い人」みたいに狭く捉えてたんです。でも経験を重ねるうちに、「傾聴する」「相手の視点に立つ」「協力を引き出す」みたいなことも立派なリーダーシップだ、と見方が広がっていった。
ここで何が起きるか分かりますか?

相談者

…あ。もしかして、「リーダー像が広がると、自分もその中に入れる」ってことですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

まさにそれ!冴えてますね。
「リーダー=命令する強い人」だけだと、もしあなたが「自分は人の話を聞くタイプだ」と思ってたら、「自分はリーダーに向いてない」ってなっちゃう。でもリーダー像に「傾聴」や「共感」が入った瞬間、「あれ、自分のこの強み、もうリーダーシップじゃん」って気づける。ズレてた感じが、すーっと溶けていくんです。
実際この研究でも、「正しくても、受け入れられなければ何も達成できない。命令からではなく、人として受け入れられることから始まるんだと気づいた」と語った人がいました。

相談者

なるほど…。私、「決断が苦手だからリーダー失格だ」ってずっと思ってたけど、そもそも「決断する人=リーダー」っていう狭い定義に縛られてただけかも。

はぴテクさん
はぴテクさん

その気づき、すごく大事です。それが2つ目の変化につながるんですよ。
2つ目は「スキーマ整合」。難しい言葉ですが、要は「リーダーってこういうもの」という考えと、「リーダーとしての自分」がだんだん噛み合ってくる、ということです。
※スキーマ=過去の経験から作られた「考え方の型・テンプレート」。

相談者

それは、具体的にはどうやって噛み合わせていくんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

研究では3つの動きが見つかってます。
・観察:いろんな上司やリーダーを見て、「こうなりたい」「こうはなりたくない」を集める。実は「最悪な上司」も超いい教材なんですよ。「ああはなるまい」って学べるので。
・実験:見て学んだことを、実際に試してみる。ある人は「子育てで使ってる関わり方を職場で試したら驚くほどうまくいった」と言ってました。
・フィードバック:試した結果を周りからの反応で確かめる。

相談者

試して、反応を見て、また調整して…の繰り返しなんですね。

はぴテクさん
はぴテクさん

そうそう。そしてここが核心なんですが、最初はみんな「すごい人の真似(完全コピー)」から入るんです。でも、だんだん「この部分は真似する、ここは自分流にする」と選んでいって、最終的にいろんな人の良いところを組み合わせて「これは私のやり方だ」になる。
ある人はこう言ってます。「最初はできる人と自分を比べてばかりだった。でもある時それを手放して、自分のやり方を信頼し始めた。やってみたら、本当にうまくいって、これは自分のやり方だ、っていう最高の感覚を得た」と。

相談者

コピーから始まって、最後は自分のオリジナルになる…。なんかちょっと希望が湧いてきました。3つ目は?

はぴテクさん
はぴテクさん

3つ目は「自己スキーマの明確さ」。つまり「リーダーとしての自分」がはっきりして、ブレない軸ができる、ということです。
ここで効くのが2つ。ひとつは「社会的承認」。誰かが「君ならできる」と機会や信頼をくれた瞬間に、自信が一気に育つんです。研究でも「あのリーダーの信頼を得たことが、ものすごい自信になった」という声がありました。
もうひとつが、あなたに一番おすすめしたいやつ。「省察(リフレクション)」です。

相談者

省察…振り返り、ってことですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

そうです。研究に出てくる人たちは、本当によく振り返ってるんですよ。「帰りの車で毎日振り返る。何がうまくいったか、なぜか、別のやり方はあったか」とか、「川のそばにただ座って、頭の中を整理する」とか。日記、散歩、なんでもいい。
で、振り返りのときに見るのは「自分にとって何が大事か(価値観)」なんです。これがはっきりすると、「自分はこういう理由でこう動くリーダーなんだ」という芯ができて、状況が変わってもブレなくなる。

相談者

たしかに私、毎日バタバタで、立ち止まって「自分はどうしたいか」なんて考えてなかったかも…。

はぴテクさん
はぴテクさん

多くの人がそうなんです。研究者も「世の中の管理職研修は、スキルや行動っていう"外側の作業"に偏りすぎ。本当はもっと"内側の作業"、つまり自分の前提や価値観と向き合う時間が必要だ」と言ってます。
それともうひとつ、すごく大事な発見があって。リーダーになるって「新しいことを学ぶ(足し算)」だけじゃなくて、「古い思い込みを手放す(引き算)」ことでもあるんです。これをアンラーニングと言います。
※アンラーニング=これまでの当たり前を学びほぐして、別の見方に開いていくこと。

相談者

手放す…。私の場合だと、何を手放せばいいんでしょう?

はぴテクさん
はぴテクさん

たとえば「リーダーは全部の答えを持っていなきゃダメ」みたいな思い込み、ありませんか?

相談者

…めちゃくちゃあります。「課長なのに分からないなんて言えない」って必死でした。

はぴテクさん
はぴテクさん

そこなんです。研究では、まさにその「すべての答えを持たねば」という古い枠を、「より良い問いを立てればいい」という新しい枠に書き換えていく、という例が紹介されています。
あなたの「リーダーのフリがしんどい」というモヤモヤ、正体はおそらく、まだ「狭い・古いリーダー像」を握りしめたまま、そこに無理やり自分を合わせようとしている状態なんですよ。だからフリに感じる。
ゴールは「役割に自分を押し込む」ことじゃなくて、「自分の価値観に合うようにリーダー像のほうを描き直す」こと。そうすれば、フリじゃなく、本物になっていきます。

相談者

なんだか、肩の力が抜けました。「ちゃんとしたリーダーにならなきゃ」じゃなくて、「自分なりのリーダーを見つけていけばいい」んですね。しかも、それには時間がかかって当然、と。

はぴテクさん
はぴテクさん

その通り!ちなみにこの研究、発達にかかった期間は3年から28年、平均で約15年でした。半年でモヤモヤしてるのは、むしろ超スタート地点。順調すぎるくらいです。
まずは今日、帰り道に5分だけ「今日、自分らしくいられた瞬間はどこだったか」を振り返ってみてください。そこに、あなたのオリジナルの芽がありますから。

相談者

やってみます!なんか、明日からの会議がちょっと楽しみになってきました。ありがとうございました!

■ 今日のまとめ

  • 「役職」と「自分はリーダーだという実感」は別物で、ズレるのが普通。正式なリーダーほどインポスター感覚に悩みやすいので、あなたが特別ダメなわけではない(Kark et al., 2022; Epitropaki et al., 2017)
  • 抜け出す鍵は3つの「頭の中の変化」。リーダー観を広げる/その広げた像と自分を噛み合わせる(観察・実験・フィードバック)/振り返りで自分の価値観を明確にする。これにより「フリ」から「オリジナル」へ移っていける(Zaar et al., 2026)
  • 大事なのは「足し算(学ぶ)」だけでなく「引き算(古い思い込みを手放す=アンラーニング)」。「全部の答えを持たねば」を手放すと前に進める。しかも発達には平均15年。焦らなくて大丈夫

■ 出典・注意事項

  • 本対話は Zaar, S., Van den Bossche, P., & Gijselaers, W.(2026)"From Imposter to Original: How Organizational Leaders Shape and Develop a Leader Identity Through Meaning-Making of Experiences"(Journal of Organizational Behavior)の内容に基づいて作成した、架空の相談形式のコンテンツです

投稿者によるコメント・補足(1件)
コメント 1
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