はぴテク相談室:子供を持つことは、幸福度を高めない
最近、友人から『子どもを産めば幸せになれるよ』って言われて、なんとなくプレッシャーを感じているんです。子どもがいれば本当に幸せになれるんでしょうか?
それはプレッシャーを感じますよね。実は最近、日本を含む10カ国・5556人という大規模な研究で、この「子どもを持つと幸せになれるのか」をじっくり調べた結果が出たんです。少し聞いてみますか?
ぜひ聞かせてください!どんな結果だったんですか?
まず「親(子どもがいる人)」と「非親(子どもがいない人)」を単純に比べると、親の方がごくわずかに幸福度・人生の意味・楽観性などが高く、不幸感や悲しみが低い、という結果は出ました。でもそれはほんのわずかな差なんです。
じゃあ、やっぱり子どもがいると幸せなんですか?
ところが、「パートナーがいるかどうか」を考慮して分析し直すと、その差はほぼ消えてしまったんです。つまり「パートナーがいて子どもがいない人」と「パートナーがいて子どももいる人」を比べると、幸福度はほとんど変わらない、という結果になりました。
えっ、そうなんですね。じゃあ子どもを持っても持たなくても、幸福度は変わらないということ?
幸福度という点ではそういう結果です。ただ一点だけ差が出たのは「人生の意味・意義の感覚」で、子どもがいる人の方が少し高く、特に女性でその傾向が見られました。一方で「パートナーとの関係の満足度」は、子どもがいる人の方がわずかに低かったという面もあります。
「人生の意味」が上がるというのは、どういうことなんですか?
研究では「ヘドニックなウェルビーイング」と「ユーダイモニックなウェルビーイング」という2種類の幸せを区別して測っています。前者は日々の楽しさや気分の良さ、後者は人生に意味や目的があるという感覚、日本語だと「生きがい」に近いイメージです。子育ては日々の楽しさより「生きがい」に影響しやすい、ということかもしれません。ただし、これはあくまで相関として観察された結果で、子どもを持つことが直接原因で意義感が高まると断言できるわけではありません。
なるほど。では「パートナーがいると幸せ」という部分はどう理解すればいいですか?
良い質問です。確かに研究ではパートナーがいる人の幸福度が高い傾向が見られましたが、これも注意が必要で、「パートナーがいるから幸せになった」のか「もともと幸せだからパートナーができやすかった」のか、この研究だけでは分からないんです。研究者たちもその点を明記しています。
じゃあ、「子どもさえいれば幸せになれる」というのは、あまり根拠がないということですね?
この研究の結果を見る限り、子どもを持つことが幸福度を直接底上げするとは言いにくそうです。世界中に「親になると幸せになれる」という信念は広く浸透していますが、実際の幸福度の数値を大規模に測ると、その信念ほどの差は出なかった、というのがこの研究の面白いところです。
そう聞くと、なんだか少し気が楽になりました。自分の幸せって、子どもがいるかどうかより、もっと別のところにあるのかもしれないですね。
そうですね。この研究も「子どもを持つことを否定するものではない」と明記しています。子どもを望む人にとってはかけがえない経験でしょうし、生きがいにつながる面もある。ただ「子どもがいれば幸せになれる」と思ってそこに全部を期待するのではなく、日々の関係や自分自身の心がけも大切にしていくことが、幸福感につながっているようです。今感じているプレッシャーは、少し横に置いておいてもいいんじゃないかと思いますよ。
■ 今日のまとめ
- 子どもを持つことは、パートナーの有無を考慮すると幸福度をほとんど高めない。「子どもがいれば幸せになれる」という信念は広く浸透しているが、大規模データではその信念ほどの差は見られなかった。
- 唯一比較的安定して見られた差は『人生の意義・意味の感覚』で、子どもがいる人(特に女性)でわずかに高い傾向があった。一方でパートナーとの関係満足度はわずかに低い傾向も見られた。
- 幸福度は「子どもがいるかどうか」という単一の条件よりも、パートナーとの関係や日々の心がけなど複合的な要因と関連している可能性が示唆される。
■ 出典・注意事項
- 出典:Menelaos Apostolou et al.(ニコシア大学・東京大学ほか), 'Is Parenthood Contributing to Emotional Wellbeing? The Neutrality Paradox and a Possible Resolution', Evolutionary Psychology, 2026/3/23. https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/14747049261436325
- 注意事項①:本研究は横断的な調査データによる分析であり、相関関係を示すものです。子どもを持つことが幸福度の変化を引き起こすという因果関係を証明するものではありません。
- 注意事項②:パートナーがいることと幸福度の関連についても同様に、因果の方向性(パートナーがいるから幸せなのか、幸せだからパートナーができるのか)はこの研究では特定できないと研究者自身が明記しています。
- 注意事項③:対象は10カ国5556名ですが、国や文化によって子育てをめぐる環境・規範は大きく異なるため、結果の解釈には文化的文脈への注意が必要です。
研究自体の紹介はこちら😊
子供を持つことは、幸福度を高めない
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2026-04-22-1776877973/