45幸福の最適レベル〜ほどほどの幸せが、良いのか?〜
ウェルビーイングハンドブック_第七章:結果
幸せであればあるほど、良いと思われがちだが、
幸せ過ぎる弊害もあるよ!というお話。
この議論は結構ずっとありますし、言っていることは正しいのですが、
あえて、私は幸せであればあるほど、良いと考えています。
以下、論文での主な主張4つに個人的に反論するならば、
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①幸せだと挑戦しない(Affect As Information Theory)
幸せだと、今に満足してしまって、挑戦しない、という話があります。
が、これは幸せを小さな視点で見ているだけです。
今に満足しているだけの人よりも、
今に満足しつつも、志を持って挑戦している人の方が幸福度が高いためです。
足るを知るという言葉がありますが、
「足るを知る者は富み、強めて行なう者は志有り。」と続きます。
足るを知った上で、志を持って挑戦していくことが、"幸せ"です。
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②幸せを目指すと不幸せになる(Valuing Happiness)
幸せに価値を置き、幸せを重視している人は、不幸せ、という話があります。
しかし、これは幸せの因子や幸せを高める方法を知らない人での話です。
確かに、幸福度を高める方法を知らないのに、幸せになろうとすると、
世間一般に出ている誤った認識で進めてしまうことでしょう。
(お金があれば幸せ!結婚すれば幸せ!など)
実際に、幸福度を高める方法での研究では、取り組めば幸せになることは山ほど分かっていますし、
行っている人は幸福度が高まります。
なので、幸せを目指すこと自体が不幸せを招くのではなく、
どうしていいか分かっていないものを目指す事で不幸せを招いてしまっている。
と解釈しています。
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③楽観的過ぎると有害である(Affectiive Forecasting)
楽観的過ぎると、未来を誤って予測してしまうという話があります。
これはその通りで、楽観性だけが高まってしまうと、よろしくない場合があります。
(ただし、人間はそもそも悲観的になりがちなので、過剰な楽観性を持っている人はごく僅か。
基本的には楽観性を高めていく方が良いです。)
ただし、楽観性を鍛えたからといって悲観的に物事を見ることが出来なくなる訳ではありません。
楽観的に構想し、悲観的に計画を立て、楽観的に実行する。
私もとても大切にしている、稲盛和夫先生の言葉ですが、
上手く使い分けていけば良いだけです。
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④文化によって幸せのあり方は違うのではないか?
西洋と東洋の幸福感は異なっており、東洋では西洋の幸福度の高め方は合わない、という話があります。
確かにそうなんですが、
実際に西洋的な幸福度と、東洋的な幸福度は測ってみると、相関しています。
どちらかが高いと、もう一方も高い。
個人主義的幸福、集団主義的幸福という話もありますが、
個人が幸せである為には、周りとのつながりが不可欠であり、
集団が幸せである為には、そこに集う一人一人の幸せが不可欠です。
この2つは切り離せるものではなく、どの観点から見るかという話と捉えています。
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なので、長くなってしまいましたが、
人類は幸せであればあるほど、良い。ただし、幸せの測り方は注意が必要。
と思います😊
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■ 幸福の最適レベル——「幸せすぎる」ことはあるのか?Biswas-Diener & Wiese, 2018
■ この論文が問う問い
現代は「幸福追求の時代」です。
ポジティブ心理学の台頭、自己啓発本の爆発的な売れ行き、そして脳深部刺激などの技術的介入によって、幸福はかつてなく「手に入れやすいもの」になりつつあります。
しかし著者たちはここで立ち止まり、こう問います。
「幸せであればあるほどよい、というのは本当に正しいのか?」
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■ 幸福とは何か?
論文では主に2つの幸福観が紹介されています。
▼ ヘドニック幸福(hedonic well-being)
・感情面に注目した概念
・ポジティブ感情が多く、ネガティブ感情が少なく、人生への満足感が高い状態
・代表的な枠組み:主観的ウェルビーイング(SWB)(Diener, 1984)
▼ ユーダイモニック幸福(eudaimonic well-being)
・「よく生きること」に注目した概念
・自律性・成長・他者との関係・意味・自己受容などを含む
・代表的な枠組み:心理的ウェルビーイング(PWB)(Ryff & Singer, 1998)
本論文では主にヘドニック側面、特に感情と人生満足度に焦点を当てて議論が進みます。
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■ 幸福が「有益である」という前提の確認
まず著者たちは、「幸福が良いものである」という豊富な証拠を認めます。
・複数の研究デザイン(横断研究・実験・縦断研究)を通じて、ポジティブ感情の多い人は健康で長生きし、仕事や人間関係でも良い結果を出しやすい(Lyubomirsky, King, & Diener, 2005)
・ユーダイモニック幸福も同様に身体的健康と関連する(Ryan & Deci, 2001)
つまり「幸福が有益である」という結論自体は否定しません。
問題は、その関係が「直線的(多ければ多いほどよい)」かどうか、です。
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■ 関係の形:直線か、それとも逆U字か?
ここが本論文の核心です。
▼ 直線関係
・幸福度が上がれば上がるほど、結果も良くなる
・従来の研究の多くはこれを前提にしていた
▼ 逆U字曲線(inverted-U curve)
・幸福はある程度まで有益だが、それを超えると有害になる
・「良いものでも多すぎると逆効果」仮説
▼ 逓減収益曲線(diminishing returns curve)
・一定レベルを超えた幸福は、さらなる恩恵をもたらさない(害にはならないが、得もない)
著者たちは「幸福と成果の関係は、必ずしも直線ではない可能性がある」と主張します。
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■ 幸福が「悪く働く」3つのメカニズム
▼ ① 感情の情報価値(Affect-as-Information Theory)
・感情は環境に対する「情報」として機能する(Schwarz & Clore, 1983)
・怒りは「脅威がある」サイン、幸福は「安全だ、リラックスしていい」サイン(Fredrickson, 2001)
・過度に幸福を人工的に高める介入は、この「感情からの信号」を遮断する恐れがある
・「幸せすぎる人」は重要な情報を見落とし、個人的・社会的機能が損なわれる可能性がある
▼ ② 幸福を過度に重視すること(Valuing Happiness)
・幸福に過剰な価値を置く人は、非現実的に高い幸福目標を設定しがち
・その目標を達成できないとき、失望や悲しみを経験する(Mauss et al., 2011)
・さらに、幸福を「個人的な利得」として追求しすぎると、社会的つながりが壊れ、孤独感が高まる(Mauss et al., 2012)
▼ ③ 感情予測の誤り(Affective Forecasting)
・人は将来の感情状態を予測するとき、ネガティブな出来事の影響を過小評価しがちで、楽観的な見通しを持つ(Sharot, 2012)
・この楽観性は困難を乗り越える力になる一方、「良い未来」が来なかったとき、大きな失望を招く(O'Brien, 2013)
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■ 最適レベルの証拠:3つのテーマ
▼ ① 気分の調節不全(Mood Dysregulation)
・双極性障害(bipolar disorder)の躁状態では、文脈に関わらず強いポジティブ感情が持続し、無謀なリスク行動につながることがある(Gruber, Mauss, & Tamir, 2011)
・健常者においても、ポジティブ感情を意図的に増幅しようとすると、ネガティブ感情も同時に増幅される「スピルオーバー効果」が確認されている(Diener et al., 1991)
・つまり感情の調整は「ピンポイントにはできない」という可能性がある
▼ ② 高すぎる幸福の非線形効果(Unbridled Happiness)
・Oishi, Diener, & Lucas(2007)は、幸福と収入・学業成績の関係を大規模データで分析
・人生満足度が「5点満点中4点」の人は、「5点満点」の人よりも収入が高く、学業成績も優れていた
・「最も幸福なグループ」は社交性・自信・友人関係に優れる一方、「次に幸福なグループ」はGPA・勤勉さ・人生の出来事のバランスで優っていた
・起業家においても、過度なポジティブ感情は企業業績の低下と関連する(Baron, Tang, & Hmieleski, 2011)
・職場の向社会行動(人のために動く行動)についても、ポジティブ感情と逆U字の関係が確認されている(Lam, Spreitzer, & Fritz, 2014)
→「幸せすぎると、現状に満足して努力しなくなる(complacency:現状満足・怠慢)」という解釈
▼ ③ 感情バランス(Affective Balance)
・ポジティブとネガティブの感情の「比率」が重要という視点
・創造性においては、ポジティブ感情が過剰だと創造性が低下する(Rego et al., 2012)
・大学生の研究では、「最もポジティブな学生」もネガティブ感情をある程度経験した学期にGPAが高かった(Barker et al., 2016)
→ ネガティブ感情のゼロが最善ではなく、適度な混在がパフォーマンスを支える
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■ 実践・政策への4つの考慮点
▼ ① 人生領域による違い(Life Domain)
・達成・成果領域(収入・学業など)では非線形効果が見られやすい
・社会的関係領域では非線形効果が確認されにくい(Oishi et al., 2007)
・ポジティブ感情は認知処理にも影響し、リスク知覚の低下(Haase & Silbereisen, 2011)や虚偽記憶の増加(Storbeck & Clore, 2005)、道徳的推論の低下(Zarinpoush et al., 2000)が報告されている
▼ ② 短期 vs 長期の幸福(Short- vs. Long-term Happiness)
・現在の高い満足感が、将来の努力を抑制することがある
・短期的には喜びを、長期的には意味を求める傾向がある(Kim, Kang, & Choi, 2014)
▼ ③ 強度 vs 頻度(Intensity vs. Frequency)
・ポジティブ感情の「頻度(どれくらい頻繁か)」は幸福度の高さと関連するが、「強度(どれくらい強いか)」は必ずしもそうではない(Diener et al., 1991)
・高覚醒のポジティブ感情(興奮・高揚など)は身体的健康に悪影響を与える可能性もある(Pressman & Cohen, 2005)
▼ ④ 文化的背景(Culture)
・個人主義文化(西洋)vs 集団主義文化(東アジア)では、幸福の追求方法や感情の機能が異なる
・アメリカ人では「幸福を強く望むこと」がウェルビーイングの低下と関連したが、東アジア人ではその傾向が見られなかった(Ford et al., 2015)
・東アジア人は幸福を「社会的つながり」を通じて追求する傾向があり、これが違いを生む可能性がある
・日本人では怒りの表出が健康リスクを下げるが、アメリカ人では逆の結果が出ている(Kitayama et al., 2015)
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■ 結論
著者たちの主張は、「幸福は有害だ」ではありません。
▼ 主なメッセージ
・幸福と成果の関係は、必ずしも直線的ではない
・特に達成志向の領域では、「最も幸福な人」よりも「幸福な人」の方が優れた成果を出すことがある
・感情の情報としての価値を無視した「幸福の追求」には注意が必要
・文化・領域・時間軸・感情の強度と頻度という文脈を踏まえた、より繊細な幸福支援が求められる
▼ 実践者・政策立案者へのメッセージ
・「もっと幸せになりなさい」という一方的なアプローチには慎重であるべき
・最適な幸福レベルは、個人・文化・領域によって異なりうる
・ネガティブ感情も重要な情報であり、単に排除すべきものではない
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Optimal Levels of Happiness
By Robert Biswas-Diener, Portland State University and Noba, & Christopher W. Wiese, Purdue University
物質主義を超えた現代において、人々はますます幸福の追求に目を向けるようになっている。こうした世間の関心に応えるかのように、幸福への道筋を提示する著者や実践家が増えている。こうした「良い人生」への道筋の多くは、科学的研究の結果に基づいている。そこで我々は、幸福にも「最適な水準」が存在し得るという点に注意を促したい。幸福が広く有益であることは事実だが、すべての人にとって常に有益であるとは限らないことを示唆する研究も増えている。本章では、幸福を定義し、より微妙な議論が必要であることを示唆する文献を概観する。我々は、幸福が最適ではない可能性のある3つの側面、すなわち気分調節障害(状況にかかわらず幸福であること)、自己満足(努力の抑制)、および感情の不均衡に焦点を当てる。結論として、幸福を促進する際に介入者や政策立案者が考慮すべき3つの文脈について論じる。これには、特定の人生領域における幸福への配慮、短期的幸福と長期的幸福の区別、そして文化的要因が幸福の追求や体験にどのように影響するかについてのより深い理解が含まれる。
キーワード:最適水準;幸福;ウェルビーイング;介入