2026.03.15

はぴテク相談室:教員向け簡易型ウェルビーイング調査の開発と検討

相談者

最近、職場の先生たちがみんな疲れ果てていて…私自身も毎日余裕がなくて。教員って、もっとイキイキ働けないものなのかなって思うんですが、何か手がかりはありますか?

はぴテクさん
はぴテクさん

それは、本当につらい状況ですね。実は最近、早稲田大学・東別院小学校・武蔵野大学の研究チームが、全国20都道府県・29校・323名の小学校教員を対象に「教員のウェルビーイング(心・体・社会的つながりがよい状態のこと)」を調べた研究を発表しているんです。今日はその内容をもとにお話しできればと思います。まず、先生ご自身が感じている「余裕のなさ」って、どんな場面で一番しんどく感じますか?

相談者

やっぱり、とにかく時間がないことですね。授業の準備も、事務仕事も、全部が押し迫っていて…気持ちの余裕もなくなってきます。

はぴテクさん
はぴテクさん

まさに、その「時間のゆとり」が研究の中でも最も重要なポイントとして浮かび上がっているんです。「業務を改善しながら、時間的なゆとりをもって仕事できている」という質問に高い点をつけた先生(全体の約16%)は、ほかのほぼすべての項目——やりがい、職場の雰囲気、子どもへの良い影響——でも高い値を示していました。これはあくまで相関関係(同時に高くなる・低くなる傾向)ですが、時間のゆとりが教員全体のウェルビーイングと非常に密接に結びついていることを示しています。

相談者

なるほど…でも「時間のゆとりを持て」と言われても、どうすればいいか分からなくて。学校全体の問題じゃないですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

おっしゃる通りで、これは個人の努力だけで解決できることではないと研究でも示唆されています。だからこそ、この研究は「業務改善・効率化の必要性」を強く訴えているんです。一方で、時間のゆとりの次に重要な関連要因として挙げられているのが、「自分の強みを理解して発揮できているか」「仕事のなかに喜びややりがいを感じているか」「子どもたちに良い影響を与えていると実感できているか」といった点です。この中で、今の先生に当てはまりそうなものはありますか?

相談者

子どもたちが何かできるようになったとき、それは純粋に嬉しいですね。でも最近はそれを感じる暇もない、という感じで…。あと、自分の強みって、正直よく分からないです。

はぴテクさん
はぴテクさん

「子どもが成長する瞬間が嬉しい」という気持ち、それ自体がすでにウェルビーイングにとって大事な要素です。研究では、「子どもへの肯定的な影響の実感」がウェルビーイングと強く関連する要因として確認されています。忙しい日々の中でも、そういう瞬間をあえて意識して振り返ることは、自分のウェルビーイングを守ることにつながる可能性があります。強みについては、「これが得意・これが好き」という感覚がヒントになりますよ。何か、他の先生より自然にできていることって思い浮かびますか?

相談者

うーん…子どもの話をじっくり聞くのは、わりと苦にならないかもしれないです。でも、それって強みって言えるのかな。

はぴテクさん
はぴテクさん

十分に強みだと思いますよ!研究の中でも「共感的なコミュニケーション——相手の気持ちに寄り添う力」が、ウェルビーイングと強く関連する要因として挙げられています。その力を意識的に「自分の強み」として認識することが、ウェルビーイングを高める方向に働く可能性があると研究は示しています。

相談者

そういえば、職場の雰囲気も気になっていて。管理職の先生と現場の先生の間に温度差があって、なんか話が噛み合わない感じがするんです。

はぴテクさん
はぴテクさん

それも研究で明確に示されていることなんです。管理職(校長・教頭)は一般教員よりウェルビーイングの数値が高い一方、両者の間には意識のギャップが存在しており、「相互理解の強化が課題」と指摘されています。また、職場環境に関する項目——「対話のしやすさ」「建設的な発言が多い」「異なる視点を取り入れる風土」——は互いに強く関連していて(相関係数0.6以上)、職場の雰囲気の質的な側面はひとつが変わると連鎖する可能性も示されています。

相談者

ちなみに、勤務年数によって違いはあるんですか?私は今7年目なんですが。

はぴテクさん
はぴテクさん

実は、この研究で7〜15年目は注目すべき時期として浮かび上がっています。特に女性教員では7〜15年層のウェルビーイングが最も低い傾向が見られました。中堅期に特有の困難がある可能性が示唆されています。男性教員では4〜6年目が最も高く、その後下がる傾向も見られました。もちろんこれは全体の傾向であって、個人差はありますし、相関研究なので「〇〇年目だから低い」と断言できるものではありません。ただ、「今しんどいのは自分だけじゃないかもしれない」という視点は持ちやすくなるかもしれませんね。

相談者

なんか少し、自分だけが弱いわけじゃないんだなって思えてきました。ちなみに、「ウェルビーイングを理解している人ほど幸せ」というのは教員にも当てはまるんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

これが面白いところで、企業の文脈では「ウェルビーイングを知っている人はウェルビーイングも高い」という傾向が知られています。でも、この研究では「自分にとってのウェルビーイングを理解できている」という項目は、ウェルビーイング全体との関連で上位にランクインしませんでした。研究チームは、教員は自分よりも子どもの幸福を優先する傾向があること、また組織的・制度的な制約から「理解はしていても実践できない」というずれが生じている可能性を指摘しています。知識があっても、環境が整っていなければ発揮しにくい——というのが教育現場の特殊性かもしれません。

相談者

そうか…知ることだけじゃなく、環境が大事なんですね。今日話してみて、少し整理できた気がします。ありがとうございました。

はぴテクさん
はぴテクさん

こちらこそ、丁寧に話してくださってありがとうございました。まとめると、「時間のゆとり」「強みの発揮」「職場の対話の質」が教員のウェルビーイングと密接に関わっているという研究知見は、先生ご自身が感じていたことと重なる部分も多かったのではないでしょうか。今日の話が、少しでも自分を大切にするヒントになれば嬉しいです。

■ 今日のまとめ

  • 「時間的ゆとり」が教員のウェルビーイング全体と最も密接に関連しており、業務改善・効率化が現場全体の課題として浮かび上がっています。
  • 自分の強みの発揮・仕事のやりがい・子どもへの肯定的影響の実感・共感的コミュニケーション力も、ウェルビーイングと強く関連する要因として確認されました。
  • 管理職と一般教員の意識ギャップや、中堅期(特に女性の7〜15年目)のウェルビーイング低下傾向など、職場・キャリア段階ごとの特有の課題も明らかになっています。

■ 出典・注意事項

  • 【出典】佐藤明日香・中島清人・浦谷裕樹「教員向け簡易型ウェルビーイング調査の開発と検討」武蔵野大学しあわせ研究所紀要, 2025. https://mu.repo.nii.ac.jp/record/2000804/files/mhi8_pp.23-46.pdf

  • 【注意事項①】本研究は全国20都道府県・29校の小学校教員323名を対象とした調査であり、中学・高校や他職種への直接的な一般化には限界があります。

  • 【注意事項②】報告されている関係はすべて相関関係(同時に高い・低い傾向)であり、「〇〇があるからウェルビーイングが上がる」という因果関係を示すものではありません。

  • 【注意事項③】勤務年数・性別・職位による傾向はグループ全体の平均的な傾向であり、個人差があります。

投稿者によるコメント・補足(1件)
コメント 1

研究自体の紹介はこちら😊
教員向け簡易型ウェルビーイング調査の開発と検討
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2026-03-15-1773593381/

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