教員向け簡易型ウェルビーイング調査の開発と検討
早稲田大学 佐藤先生、東別院小学校 中島先生、武蔵野大学 ロッキー先生の最近の論文😍
教員向けの簡易ウェルビーイング調査と、
その調査結果の整理😊
日本語なので、是非、本文を❗
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▼ この研究は何を目的としているか
日本では教員不足が深刻な問題となっており、2021年時点で全国の公立学校に2,558名の欠員があることが明らかになっています(文部科学省、2021)。長時間労働・業務負担の増加・低い待遇などが原因で、若者の教職離れが進んでいます。
この問題を解決するヒントとして、著者らは「教職員のウェルビーイングを高めること」に注目しました。
・ウェルビーイングとは:こころ・からだ・社会的なつながりがよい状態のこと。単なる「幸福感」よりも広く、長期的・多面的な健全さを指します。
幸福度が高い従業員は、そうでない従業員に比べ、創造性が約3倍、生産性が約30%高く、欠勤率・離職率・事故率も大幅に低いことが知られています(ハーバード・ビジネス・レビュー、2012)。教員に当てはめれば、ウェルビーイングを高めることが、業務改善や教職の魅力向上にもつながると考えられます。
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▼ 既存の調査の課題
これまでにも教員の幸福度調査はありました。たとえばパーソル総研による調査(2023)では42問、露口(2024)の調査は30問程度ですが、回答の選択肢が3〜11段階まで項目によって異なります。いずれも回答負担が大きく、研究者なしでは分析が難しいという問題がありました。また、ICT活用・業務改善・子どもへの影響といった著者らが重視する視点が含まれていませんでした。
そこで本研究では、忙しい教員でも「5分でできる」簡易型ウェルビーイング調査を独自に開発しました。
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▼ 調査の概要
・対象:全国20都道府県・29校の小学校に所属する教職員323名
・質問数:25項目(7段階評価、1=全くそう思わない〜7=とてもそう思う)
・質問の観点:「個人」「職場」「子ども」「学校」の4つ
主な質問例としては、「私は仕事に喜びややりがいを感じている」「職場には助け合いの雰囲気がある」「子どもたちは前向きにやってみようという気持ちにあふれている」などがあります。
・7段階評価を採用した理由:信頼性・妥当性・判別力の観点から5〜7段階が最適とされているため(Preston & Colman、2000)
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▼ 分析の3つの視点
研究チームは以下の3つの角度からデータを分析しました。
・① 勤務年数・性別・職位別の回答傾向
・② 質問項目どうしの相関関係(※相関関係=2つの項目が同時に高くなる・低くなる関係)
・③ 特定項目に高得点をつけた人が、他の項目にどう答えているか
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▼ 分析①:勤務年数・性別・職位による違い
全教員を見ると、勤務年数「4〜6年」と「25年以上」の教員のウェルビーイングが特に高い傾向が見られました。
・25年以上の教員:長年の職場経験がウェルビーイングに寄与している可能性があります。
・4〜6年の教員:職場環境やキャリア形成がポジティブに作用していると考えられます。
男性教員では「4〜6年」層が突出して高く、年数が増えるにつれてウェルビーイングが低下する傾向が見られました。理想と現実のギャップが影響している可能性があります。
女性教員では「7〜15年」層が最も低く、「25年以上」が最も高い結果でした。中堅期に特有の困難がある可能性が示唆されます。
管理職(校長・教頭)は教員全体より高い値を示しましたが、管理職と一般教員の間には意識のギャップが存在しており、相互理解の強化が課題として浮かび上がりました。
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▼ 分析②:質問項目どうしの相関関係
相関係数0.6以上(強い関連)を示したペアは9組ありました。そのうち7組が「職場の雰囲気」「コミュニケーションのしやすさ」「建設的な発言の多さ」に関するものでした。
・相関係数とは:2つの項目がどれだけ連動して変化するかを示す指標。1に近いほど強い正の関連があります。
最も強い相関(0.747)は「子どもたちの前向きさ」と「子どもたちの再チャレンジ意欲」の間でした。次いで「職場での対話の建設性」と「異なる視点を取り入れる風土」(0.731)が続きます。
この結果は、職場環境の質的な側面は互いに密接につながっており、一つを改善することで連鎖的な改善が期待できる可能性を示しています。
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▼ 分析③:高得点者の回答パターン——「時間的ゆとり」の重要性
「私は、業務を改善しながら、時間的なゆとりをもって業務を行えている」という項目に高評価(6または7)をつけた51名(全体の16%)は、他のほぼすべての項目でも高い平均値を示しました。
これは、日本の小学校教員にとって「時間的ゆとり」がウェルビーイング全体と最も密接に関連する要因である可能性を示しており、業務改善・効率化の必要性を強く示唆する結果です。
2位以降では以下の要素がウェルビーイングと強い相関を示しました。
・自己の強みの理解と発揮
・共感的コミュニケーション能力(相手の気持ちに寄り添う力)
・職務における喜びややりがい
・子どもへの肯定的影響の実感
・学校経営方針の理解と自己の役割認識
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▼ 興味深い発見:「ウェルビーイングを理解していること」の順位
一般的な企業の文脈では、「ウェルビーイングとは何かを知っている人はウェルビーイングも高い」という傾向が知られています。これは「ウェルビーイング・コンシャス・プレミアム(意識することによる上乗せ効果)」と呼ばれています(伊藤邦雄、日経BizGate、2023)。
しかし本研究では、「私は、私にとってのウェルビーイングを理解できている」という項目は上位にランクインしませんでした。
これは教育現場の特殊性を反映していると考えられます。教員は自分自身のウェルビーイングよりも子どもの幸福を優先する傾向があり、また組織的・制度的な制約から、理解していても実践できないという乖離(かいり=ずれ)が生じている可能性があります。
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▼ まとめ:本研究から得られた主な知見
・勤務年数・性別によってウェルビーイングのパターンは異なり、中堅層(特に女性)での低下傾向が課題として浮かび上がった。
・管理職と一般教員の間に意識のギャップが存在する。
・「時間的ゆとり」が教員ウェルビーイングと最も密接な関連を持つ要因である。
・自己の強みの発揮・やりがい・子どもへの影響の実感・役割認識なども重要な関連要因である。
・ウェルビーイングの理解と実践の間には、教育現場特有の乖離が存在する可能性がある。
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▼ 今後の展望
本研究は小学校教員を対象としたものですが、今後は中学・高校にも調査を拡大し、より汎用性の高いウェルビーイングチェックツールの開発を目指すとしています。また、教師のウェルビーイングが子どものウェルビーイングにもつながるという先行研究(Emily et al.、2022)を踏まえ、両者を包括的にとらえたアプローチの開発が今後の重要な課題とされています。
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教員向け簡易型ウェルビーイング調査の開発と検討
佐藤明日香, 中島清人, 浦谷裕樹 - 武蔵野大学しあわせ研究所紀要, 2025
https://mu.repo.nii.ac.jp/record/2000804/files/mhi8_pp.23-46.pdf
本研究は教育現場におけるウェルビーイングの可視化を目指し、学校環境のウェルビーイング評価に関する新たな指標を提供するために、29 校の小学校に所属する 323 名の教員を対象に、「5分でできる学校ウェルビーイングチェック 2024」と題したアンケート調査を実施し、初等教育機関における教員のウェルビーイングの現状把握と分析を行った。
アンケートの質問は 25 項目あり、個人、職場、社会、および子どもの4観点から既存の評価尺度と独自項目を組み合わせたものとなっている。
データ分析は、1)勤務年数・性別・職位別の回答傾向、2)項目間の相関関係、3)特定項目高得点者の他項目回答パターンの3視点から行った。分析結果から、教員のウェルビーイングは職場環境の質的側面が相互に密接に関連しており、勤務年数「4~6年」と「25 年以上」の教員ならびに校長 ・教頭が高く、ウェルビーイングが高い教員の共通項として「時間的ゆとり」が挙げられる点が明らかになった。