2026.03.14

はぴテク相談室:38職務要求-資源理論の多重レベル:従業員の幸福とパフォーマンスへの示唆

相談者

最近、仕事がしんどくて…。毎日タスクが山積みで、残業も多くて、なんか疲れがとれないんです。このまま続けていたら燃え尽きそうで不安なんですよね。

はぴテクさん
はぴテクさん

それは本当につらいですね。毎日エネルギーを使い続けているのに、回復できていない感じですよね。実は、その状態をきちんと説明してくれる研究があるんですよ。「JD-R理論」という仕事のウェルビーイング理論なんですが、聞いてみますか?

相談者

ぜひ聞かせてください。なんか、自分の状況を整理できそうな気がして。

はぴテクさん
はぴテクさん

JD-R理論では、仕事のあらゆる要素を「職務要求」と「職務資源」の2種類に分けて考えます。「職務要求」は業務量の多さや難しいタスク、人間関係のストレスなど、エネルギーを消費するもの。「職務資源」は上司や同僚のサポート、フィードバック、仕事の裁量などの、要求に対処する助けになるものです。今のあなたは、要求がすごく多い状態ですよね?

相談者

そうです、まさに。しかも、上司からのフィードバックも少ないし、なんか一人で抱えてる感じで…。

はぴテクさん
はぴテクさん

それは「職務要求が高くて、職務資源が少ない」という、理論的にいちばんしんどい状態かもしれません。この理論では、慢性的に要求が高い状態が続くと「健康障害プロセス」が始まるとされています。疲弊から燃え尽きへつながるルートです。さらに気になるのが「ロスサイクル」と呼ばれる悪循環で…。

相談者

ロスサイクル?どういうことですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

疲れが積み重なると、無意識に「自己妨害行動」というものが起きやすくなるんです。たとえば、うっかりミスが増えたり、周りとの衝突が増えたりして、それがさらに自分の仕事を難しくしてしまう。すると要求がさらに増え、もっと疲れる…という悪循環です。燃え尽き症状を抱えた医師を追跡した研究では、5年後により多くのトラブルに見舞われていたことも確認されています。

相談者

うわ、怖いですね…。じゃあ逆に、良い方向に転換することもできるんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

できます!それが「ゲインサイクル」です。職務資源が増えると、仕事への活力や熱意が高まります。その状態になると、自分から仕事を少しずつ自分好みに変えていく「ジョブ・クラフティング」という行動が自然と生まれる。新しい課題に挑んだり、同僚にフィードバックをもらいに行ったりすることがこれにあたります。すると資源がさらに増えて、活力がまた高まる、という好循環です。歯科医師の3年間の追跡研究でも、この好循環が実際に確認されています。

相談者

なんか、今の自分にはそのジョブ・クラフティングってかなりハードルが高い気がして…。そもそも資源がない状態だから、余裕がないというか。

はぴテクさん
はぴテクさん

おっしゃる通りで、それはとても正直な感覚だと思います。ただ一つ面白いのが、資源は外部からも来るということ。上司のリーダーシップや、チームの雰囲気、会社の方針なども資源に影響するんです。たとえば「変革型リーダーシップ」と呼ばれる、部下に自律性を与え、成長機会を作ってくれるリーダーのもとでは、エンゲージメントが高まりやすいという研究があります。また、上司が権限を委ねてくれる環境では、部下がジョブ・クラフティングをしやすくなることも示されています。

相談者

なるほど。でも上司を変えるのは難しいし、自分にできることって何かありますか?

はぴテクさん
はぴテクさん

個人レベルでできることとして、この理論では「個人資源」にも注目しています。楽観性や自己効力感(「自分にはできる」という感覚)といったものです。たとえば、高い自己効力感を持つ看護師が、感情的に消耗する患者との関わりを「チャレンジ」として捉えてエンゲージしやすかったという研究があります。ただ、これも「今すぐ楽観的になれ」という話ではなくて、少し視点を変えてみる余地があるかな、という話として受け取っていただければ。あとは、ジョブ・クラフティングの小さな一歩として、同僚に話を聞いてもらったり、フィードバックをちょっとお願いしてみるだけでも、社会的な資源を自分で増やす行動になりますよ。

相談者

なんか、大きく変えようとしなくていいんですね。小さなことから資源を増やしていく、みたいなイメージで考えてみます。今日はいろいろ整理できてよかったです!

■ 今日のまとめ

  • 仕事の特性は「エネルギーを消費する職務要求」と「対処を助ける職務資源」に分けられ、要求が高く資源が少ない状態が続くと疲弊・燃え尽きにつながりやすいとされています。
  • 疲弊が深まると無意識に「自己妨害行動」が起き、さらに要求が増えるロスサイクルが形成されることがある一方、資源が充実するとジョブ・クラフティングによってさらに資源が増えるゲインサイクルも生まれます。
  • 資源は上司のリーダーシップ・チームの雰囲気・組織の方針など外部からも来ます。個人レベルでは、同僚へのフィードバックのお願いなど小さな一歩がジョブ・クラフティングの始まりになりえます。

■ 出典・注意事項

  • 出典:Bakker, A. B., & Demerouti, E. (2018). Multiple levels of the job demands-resources theory: Implications for employee well-being and performance. In E. Diener, S. Oishi, & L. Tay (Eds.), Handbook of Well-Being. DEF Publishers.

  • 注意事項①:本研究で紹介されている多くの知見は相関研究や縦断研究に基づいており、「要求が増えたから燃え尽きた」という直接の因果関係が証明されているわけではありません。

  • 注意事項②:引用されている研究の対象は教師・歯科医師・看護師・ファストフード従業員など特定の職種や地域に限られており、すべての仕事や文化に同様の結果が当てはまるとは限りません。

  • 注意事項③:ロスサイクルを抜け出せないメカニズムやゲインサイクルの維持条件については、著者たち自身が「未解明の課題」として挙げており、研究が現在進行中です。

投稿者によるコメント・補足(1件)
コメント 1

研究自体の紹介はこちら😊
38職務要求-資源理論の多重レベル:従業員の幸福とパフォーマンスへの示唆
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2026-03-14-1773529202/

はぴテクさんのウェルビーイング相談室 やってみようなんとかなる 職場・働く幸せウェルビーイング経営・人的資本

← 検索にもどる