2026.01.23

はぴテク相談室:人的資本経営:戦略的人的資源管理論とウェルビーイング視点からの考察

相談者

うちの会社、人事部がいろいろな研修や制度を作ってくれているんですけど、現場では全然浸透していない気がして…。なんで上と下でこんなにズレるんでしょう?

はぴテクさん
はぴテクさん

それ、すごくよくある悩みですよね。実は経営学の研究でも、まさにそのズレが注目されているんです。早稲田大学の森永雄太先生の論文によると、人事施策には大きく3つの段階があるとされています。①人事部や経営層が設計した「意図された施策」、②現場の管理職が日々実践する「実際の施策」、③従業員が最終的に受け止める「知覚された施策」、この3つです。あなたが感じているズレは、①と③の間に②という大きなフィルターがある、ということから来ているかもしれません。

相談者

なるほど!管理職がフィルターになっているんですね。じゃあ管理職の人がちゃんと伝えてくれれば解決するんでしょうか?

はぴテクさん
はぴテクさん

管理職の役割はとても重要なポイントです。ただ、管理職が「伝えよう」と思うためには、人事部や経営層が施策の「意図」をきちんと管理職に届けることが先決、と研究では示唆されています。つまり「この制度はなぜあるのか、どんな想いで作ったのか」を管理職に伝え続けることが、②の実践の質を高める鍵になりそうなんです。

相談者

「意図を伝え続ける」というのが大事なんですね。でも、それって具体的にどういうことですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

たとえば、新しい研修制度を導入するときに「やってください」と案内するだけでなく、「これは従業員のキャリア自律を支援するためで、長期的に組織の力を高めたいんです」という背景まで管理職に説明する、ということです。意図がわかると、管理職も自分の言葉で部下に伝えやすくなりますよね。一度伝えて終わりではなく、折に触れて繰り返すことが「伝え続ける」ということです。

相談者

確かに、「とにかくやれ」って言われても腑に落ちないですもんね。ところで、「ウェルビーイング志向の人事施策」という言葉も気になりました。これはどういう意味ですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

従来の「戦略的人的資源管理」は、組織のパフォーマンスを上げることを主な目的としていました。一方、ウェルビーイング志向というのは、従業員の幸福感や健康・働きがいにも焦点を当てた人事の考え方です。論文では、この両方を組み合わせることが重要だと述べられています。会社の成果だけでなく、働く人の豊かさも同時に大切にしようという視点ですね。

相談者

会社の利益と従業員の幸せって、両立するものなんですか?トレードオフな気がして…。

はぴテクさん
はぴテクさん

そう感じる方は多いと思います。ただ、この研究が示唆しているのは、ウェルビーイングを「コスト」として切り捨てるのではなく、人事施策の設計に組み込むことが大切だということです。ただし、論文はこの関係を「相関」として示しているもので、「ウェルビーイングを高めれば必ず業績が上がる」という因果関係を断言しているわけではない点は押さえておきたいですね。

相談者

なるほど、断言はできないけど、切り捨てるよりは両方考えた方がよさそう、という感じですね。では、産業保健職(保健師さんや産業医さんなど)はこの流れにどう関われるんでしょう?

はぴテクさん
はぴテクさん

論文では、産業保健職がウェルビーイング志向の人事施策に貢献できる可能性が示唆されています。従業員の健康や幸福感に関するデータや現場感覚を持っている産業保健職が、人事部と連携することで、③の「従業員が実際に受け止める施策」をより豊かにするヒントが得られるかもしれない、ということです。

相談者

人事と保健職が連携するって、あまりイメージがなかったですが、確かにお互いの情報を持ち寄れますね。では、自分たちの職場で何かできることはありますか?

はぴテクさん
はぴテクさん

まず意識してみてほしいのは、「今の施策が、従業員にどう受け止められているか」を定期的に確かめることです。アンケートでも雑談でもいいです。次に、管理職に対して施策の「なぜ」を丁寧に、繰り返し伝えること。そして、ウェルビーイングの視点を人事の議論に少しずつ持ち込んでみること。この3つが、研究の知見から見えてくる現実的な一歩だと思います。

相談者

すごくクリアになりました!「意図を伝え続ける」ことが、3つの段階をつなぐカギなんですね。ありがとうございます!

はぴテクさん
はぴテクさん

そうです!①→②→③のバトンをしっかりつなぐイメージですね。制度を作るだけでなく、「なぜ作ったのか」を丁寧に届け続けること。それがウェルビーイング志向の人的資本経営の出発点だと、この研究は教えてくれています。ぜひ職場で試してみてください!

■ 今日のまとめ

  • 人事施策には「意図された施策」→「実際の施策」→「知覚された施策」の3段階があり、上と現場のズレはこの段階の間で生じやすい。
  • 管理職を通じて従業員に施策の意図が届くよう、人事部・経営層が『なぜこの施策を作ったか』を繰り返し伝え続けることが重要とされている。
  • 従来の業績重視の人事管理に加え、従業員のウェルビーイング(幸福感・健康・働きがい)を組み込む視点が、これからの人的資本経営には求められている。

■ 出典・注意事項

  • 【出典】森永雄太「人的資本経営:戦略的人的資源管理論とウェルビーイング視点からの考察」産業医学レビュー, 38(3), 144, 2026. https://www.jstage.jst.go.jp/article/ohpfrev/38/3/38_144/_article/-char/ja

  • 【注意事項①】本研究はレビュー論文(先行研究の整理・考察)であり、独自の実験や縦断調査による因果関係の証明ではありません。施策とウェルビーイング・業績の関係は『相関』として示唆されるものです。

  • 【注意事項②】紹介されている知見は主に経営学・人的資源管理論の研究蓄積に基づくものであり、業種・組織規模・文化的背景によって効果や適用可能性が異なる場合があります。

  • 【注意事項③】産業保健職の貢献に関する記述は論文における示唆・展望であり、効果を保証するものではありません。

投稿者によるコメント・補足(1件)
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研究自体の紹介はこちら😊
人的資本経営:戦略的人的資源管理論とウェルビーイング視点からの考察
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2026-01-23-1769150114/

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