はぴテク相談室:人事施策とウェルビーイング~施策の意図を明確に伝えることが大事~
うちの会社、最近ウェルビーイングの取り組みをすごく力入れてるんですよ。健康施策とか、残業削減とか。でも正直、何のためにやってるのかよく分からないし、社員の間でも「会社の見せかけじゃないの?」みたいな声も聞こえてきて…。せっかくの施策なのに、なんかモヤモヤしています。
それ、すごくリアルなお悩みですね。実は組織科学の研究(森永雄太先生, 2025)でも、まさにそこが問題として取り上げられているんです。「HR帰属」という概念があって、これは『なぜこの施策があるのか』について従業員が抱く解釈・認知のことなんです。同じ施策でも、従業員がその意図をどう解釈するかによって、施策の効果が変わってくる、ということが研究で明らかになっています。
へえ、解釈によって効果が違うんですか。それはどういうことですか?
例えば残業削減の取り組み一つとっても、「会社が社員のワークライフバランスを大切にしてくれてる」と思う人もいれば、「メンタル不調が増えて困ってるから対策してるんだろう」と思う人も、「社会的なプレッシャーに仕方なく対応してるだけ」と受け取る人もいるんです。同じ施策なのに、社員によってバラバラな解釈が生まれやすいのが、ウェルビーイング系の施策の特徴なんですよ。
なるほど!だから社員の中でも「本当にやる気あるの?」「見せかけじゃないの?」って疑心暗鬼になる人が出てくるんですね。でもなんでウェルビーイング系の施策だけそうなるんでしょう?
いい着眼点ですね。研究では、安全管理のような施策だと、社員の解釈があまりバラつかない、とも示されています。ウェルビーイング系の施策は「効果の種類が多い」という性質があるんです。健康・仕事のやりがい・人間関係・社会貢献など、さまざまな観点から意味づけができてしまうので、自然と解釈がバラけやすくなるんですね。それに、経営層や人事部門の意図と、実際に働く人たちの解釈がズレてしまうことも多い、ということも研究で明らかになっています。
じゃあ、会社側がいくら良かれと思って施策をやっても、伝わり方が違うと意味が半減しちゃうってことですか?
そうなんです。研究では、施策の意図が従業員にきちんと伝わっているときに、施策の効果が高まる傾向があることが示されています。つまり「何のためにやっているか」を明確に伝えることが、施策そのものの内容と同じくらい大切だということなんです。経営層・人事・管理職が連携して、施策の目的・意図を言葉にして伝えていくことが重要、と研究では提言されています。
確かに、うちも「健康経営を推進します!」って宣言はあるんですけど、「なぜ・何のために」という部分があまり語られていない気がします…。
まさにそこですよね。研究が指摘しているのは、「施策を打つ」だけでなく「なぜその施策をするのか」を丁寧に伝えるプロセスが必要だということです。特に、もし会社の施策の方向性が変わる場合、例えば「病気の予防」から「全員がいきいき働けること」へとシフトするようなときは、以前の解釈が社員に根付いているので、時間をかけて新しい意図をほぐしながら伝えていく、いわば「アンラーニング(学び直し)のプロセス」も大切だと示されています。
アンラーニングって面白い考え方ですね。一度定着した解釈を上書きするってことですよね。それって具体的にはどうすればいいんでしょう?
研究の範囲でお伝えできることとしては、経営層・人事・管理職が一丸となって、一貫したメッセージを繰り返し丁寧に発信していくことが重要だということです。「以前はこういう意図でやっていたけど、これからはこういう意図でやっていきます」と変化の理由も含めて言語化して伝えることで、社員が新しい解釈に更新しやすくなる、というイメージです。一度や二度の説明で終わらず、対話の機会を設けながら浸透させていくことが大事だと考えられます。
なるほど、施策を「やる」だけじゃなく、「なぜやるか」を継続的に伝え続けることが大事なんですね。社員としては、会社の施策に対してどういう目で見ればいいんでしょう?
社員側の視点で言うと、施策の意図が見えないときには「この施策、何のためにやってるんだろう?」と気になること自体は自然なことです。もし機会があれば、上司や人事に「この施策の目的って何ですか?」と直接聞いてみるのも一つの方法ですよ。研究では経営層・人事・管理職が意図を伝えることの重要性が示されていますが、社員側からの問いかけが、組織内の対話を生み出すきっかけになることもあります。また、同じ施策でも自分なりに「これがあることで自分の何が良くなるか」を考えてみると、取り組みへの関わり方が変わってくることもあるかもしれません。
そっか、自分から意味を問いかけていくことも大事なんですね。なんか今日の話を聞いて、モヤモヤの正体が少し分かった気がしました。会社の施策が「なぜ」を伝えていないから、みんながバラバラに解釈してしまって、不信感につながってたんですね。
そうですね、そのモヤモヤはとても自然な反応だったんだと思います。研究が示しているのは、ウェルビーイング施策は「やること」と「伝えること」がセットで初めて効果を発揮しやすい、ということです。会社側も悪意があってやっているわけではないことも多いですし、「なぜ」の部分が丁寧に伝わるようになれば、施策への受け止め方も変わってくる可能性がありますよね。今日の視点を持っておくと、今後の会社の動きも少し違った目で見られるかもしれません。
■ 今日のまとめ
- ウェルビーイング系の人事施策は「なぜやるのか」という意図の解釈が社員によってバラつきやすく、経営層・人事側の意図と社員の解釈がズレることも多い。
- 施策の意図が従業員に伝わっているときに施策の効果が高まる傾向があり、経営層・人事・管理職が連携して施策の目的を明確・継続的に伝えることが重要。
- 施策の方向性が変わる場合は、社員に根付いた以前の解釈を丁寧にほぐしていく「アンラーニングのプロセス」も大切。
■ 出典・注意事項
- 森永雄太「ウェルビーイング志向の人事施策に対する従業員のHR帰属」組織科学, 59(1), 2025. https://www.jstage.jst.go.jp/article/soshikikagaku/59/1/59_20251108-3/_article/-char/ja
- 【注意事項】本研究はA社B事業部の従業員を対象とした調査に基づいており、結果がすべての組織・企業に一般化できるとは限りません。
- 【注意事項】研究で示されているのは施策の意図の伝達と効果の関連性であり、意図を伝えることが効果を直接引き起こすという因果関係が確立されているわけではありません。
研究自体の紹介はこちら😊
人事施策とウェルビーイング
施策の意図を明確に伝えることが大事https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2025-11-13-1763077204/