はぴテク相談室:フィンランドでは働くことは幸せにつながるが、今の日本では働くことは不幸せにつなが
最近、仕事がしんどくて…。毎日9時間以上働いていて、帰ったら何もやる気が出ないんです。『日本人は働きすぎ』ってよく言いますけど、働くこと自体が幸せを下げてるんでしょうか?
それはつらいですね。実は、日本とフィンランドで労働時間と幸福度の関係を比べた研究があるんですが、その結果がとても興味深くて。日本人男性の場合、フルタイム(7時間以上)の労働は、所得や人間関係などの影響を除いた『働くこと自体』の効果として、幸福度をマイナスに引き下げる傾向があると示されているんです。特に9時間を超えるとそのマイナスがさらに大きくなると。
え、所得や人間関係を除いた『働くこと自体』の効果、ですか?それってどういう意味ですか?
たとえば『給料が増えたから幸せ』とか『職場に友達ができたから幸せ』という部分を取り除いて、純粋に『何時間働くか』だけが幸福度にどう影響するかを見た、ということです。その上で、日本のフルタイム労働はマイナスに働いている、という結果なんですね。一方、フィンランドでは7〜8時間働くことで幸福度が最も高くなる、という真逆の結果が出ていました。
同じフルタイムなのに、なぜそんなに違うんですか?
この研究ではいくつかの要因が示唆されています。たとえばフィンランドでは、仕事後に課外活動——サークルや地域活動、ボランティアなど——に使える時間が平均で男性1.4時間ほどあるんです。日本は男性でも平均0.26時間と、約5分の1以下。仕事後に自分の時間がほとんど取れない状態ですよね。また、通勤のストレスや子育ての負担感なども違いとして挙げられています。
確かに、仕事が終わってもヘトヘトで何もできないです。でも、じゃあ働かないほうがいいってことですか?
そういうわけでもないんです。この研究では、短時間でも働いている人は、まったく働いていない人より幸福度が高い傾向があると示されています。日本人男性でも、短時間労働(0〜4時間程度)では、働くこと自体が幸福度をプラスに引き上げていました。問題は『働きすぎ』の部分で、ゼロより少し働くほうがよい、でも長すぎるとマイナスになる、という形です。
じゃあ、どのくらいが理想なんでしょう?
この研究のデータで見ると、フィンランドでは7〜8時間が最も幸福度が高い。日本の女性は3時間程度が幸福度のピークで、6時間まではプラス、7時間以降はマイナスに転じる。日本男性はフルタイムに入った途端にマイナスになる傾向があります。ただ、これはあくまで『働くこと自体』の効果の話で、実際の生活は収入も人間関係も含めて成り立っていますから、単純に時間を減らせばすべて解決、とも言い切れません。
そういえば、人間関係の話も気になりました。職場の人間関係はどのくらい大事なんですか?
この研究で特に印象的だったのがその点で、日本でもフィンランドでも、働く幸せと最も強く関係していたのが職場の人間関係だったんです。収入の影響はほぼなかったのに対して、職場の仲間との関係は圧倒的に重要だという結果でした。どんな環境で働くかと同じくらい、誰と働くかが幸福度に関わっているということですね。
それは意外でした。お金より人間関係なんですね。でも、職場の人間関係ってそう簡単に変えられないですよね…。
確かにすぐには変えにくいですよね。ただ、今日の研究が示しているもうひとつのヒントとして、仕事後の時間の使い方があります。フィンランドでは課外活動が幸福度を高める結果が出ていました。日本ではこの研究では効果がはっきり出なかったものの、まず9時間を超える働き方を見直して、帰宅後に少しでも自分の活動時間を確保することが、幸福度に関わってくる可能性はありそうです。
なるほど。仕事の長さを見直して、職場の人間関係も大切にして、帰ってからの時間も意識してみる、ということですね。今日話を聞いて、少し整理できた気がします。
そうですね。「働くことが幸せを下げている」のではなく、「働きすぎ+仕事後の時間のなさ」が組み合わさっているのが今の日本の状況かもしれない、というのがこの研究の示唆です。あなたが感じているしんどさは、個人の問題というより、構造的な背景が関わっている部分も大きいと思いますよ。
■ 今日のまとめ
- 日本ではフルタイム労働(特に9時間超)が『働くこと自体』の効果として幸福度をマイナスに引き下げる傾向があり、フィンランドでは7〜8時間のフルタイムが最も幸福度を高めるという対照的な結果が示されました。
- 両国共通して、職場の人間関係が働く幸せと最も強く関係しており、収入の影響はほぼ見られませんでした。誰と働くかが幸福度に大きく関わっています。
- 仕事後の課外活動時間はフィンランドが日本の約5倍。フィンランドでは課外活動が幸福度を高める結果が出ており、仕事後の自分の時間の確保が重要な要素として示唆されています。
■ 出典・注意事項
- 鶴見哲也・馬奈木俊介「労働時間と主観的ウェルビーイングの関係性:フィンランドと日本の比較」『組織科学』59巻1号, 2025年, J-STAGE: https://www.jstage.jst.go.jp/article/soshikikagaku/59/1/59_20251108-2/_article/-char/ja
- 【注意事項】本研究は2019年3月にフィンランドと日本で実施したアンケート調査に基づくものであり、特定の時点・サンプルのデータです。結果は相関関係を示すものであり、労働時間の長短が幸福度を直接引き起こすという因果関係を証明するものではありません。
- 【注意事項】課外活動については、フィンランドでは幸福度との正の関係が見られましたが、日本のサンプルでは統計的に有意な効果が確認されなかったため、日本における課外活動の効果については本研究からは結論づけられません。
- 【注意事項】分析上、所得・人間関係などの影響を除いた『働くこと自体』の効果を推計していますが、実際の生活はこれらの要素が複合的に絡み合っており、労働時間の調整だけで幸福度が変化するとは限りません。
研究自体の紹介はこちら😊
フィンランドでは働くことは幸せにつながるが、今の日本では働くことは不幸せにつなが
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2025-11-12-1762986595/