フィンランドでは働くことは幸せにつながるが、今の日本では働くことは不幸せにつなが
ー労働時間と主観的ウェルビーイングの関係性:フィンランドと日本の比較ー
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今回の組織科学がウェルビーイング特集😍
の内の1本です。日本語なので是非❗
労働時間と幸せを、日本と、ワールドハピネスレポート世界1位のフィンランドで比較。
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●フィンランドは働くと幸せ、日本は働くと不幸せの理由
前提として、どちらの国でも働く幸せと最も相関が高いのは、圧倒的に職場の人間関係だった。なので、職場の仲が良いということが、めちゃめちゃ大事。(収入はほぼ影響なし)
▼ なぜフィンランドは働きながら幸福なのか
この研究から示唆される要因:
適切な労働時間(7〜8時間)で最も幸福度が高まる働き方が実現できている
通勤環境のストレスが少ない(自然が豊かな中を移動できる)
課外活動の時間が確保できている(仕事後の充実した時間)
子育てがしやすい環境
職場の人間関係が良好
▼ なぜ日本は働くことが幸福度を下げるのか
考えられる要因:
フルタイム労働(7時間以上)で「働くこと自体」がマイナスに
長時間労働による健康問題(メンタルヘルス)
仕事と家庭の両立の難しさ(特に女性)
課外活動の時間が極端に少ない
通勤環境のストレス
子育ての負担が大きい
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●労働時間
⇒働き過ぎは国に寄らず、不幸せにつながる。
短時間勤務は、働かないより幸福度が高い傾向にある。
フルタイム労働が日本人男性では不幸せにつながる、フィンランド人男性では幸せにつながる。
(職場が不幸せな所が多いんでしょうね、、、)
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・日本人男性
短時間労働(0-4時間)では働くこと自体が幸福度を高めるが、フルタイム労働(7時間以上)では常にマイナス。
特に9時間を超えるとマイナスが拡大
・日本人女性
6時間までは働くこと自体が幸福度を高める(3時間程度が最大)。
7時間以降は単調にマイナスが拡大し、男性より減少が顕著
・フィンランド男性
5-10時間の範囲で働くこと自体が幸福度を高める。特に7-8時間程度のフルタイム労働で最も高い。
10時間以降はマイナス。
・フィンランド女性
短時間労働(2-3時間)、7時間程度で、幸福度が高い。
4時間程度、9.5時間以降はマイナス。
※働くことによる所得や人間関係の変化等の影響を除いている。
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●課外活動
フィンランドのサンプル平均が
男性1.36 時間,女性 0.90 時間
日本のサンプル平均が
男性 0.26 時間,女性 0.23 時間
・課外活動(課外活動:サークル活動/地域活動/ソーシャルコミュニティ活動/ボランティア活動)は、
フィンランド人では幸福度を高める。日本では高めも下げもしない。
(うーん、GFS調査とかでは、日本人は職場以外のコミュニティに所属すると幸福度がめっちゃ高まったり、
スポーツ庁では、運動すると大幅に幸福度向上とかもあるんですが、何でですかね・・・)
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労働時間と主観的ウェルビーイングの関係性:フィンランドと日本の比較
鶴見 哲也先生, 馬奈木 俊介先生
組織科学,2025/11
[[https://www.jstage.jst.go.jp/article/soshikikagaku/59/1/59_20251108-2/_article/-char/ja](https://www.jstage.jst.go.jp/article/soshikikagaku/59/1/59_20251108-2/_article/-char/ja)](https://www.jstage.jst.go.jp/article/soshikikagaku/59/1/59_20251108-2/_article/-char/ja)
本稿では主観的ウェルビーイングの主たる決定要因として「仕事の幸福」に着目し,「労働時間と主観的ウェルビーイングの関係性」について,2019年3月にフィンランドと日本で行った独自のアンケートデータを用いた分析を行った.分析の結果,フィンランドでは日本と比較して高い主観的ウェルビーイングを維持しながら働くことができていることが示された.
【背景と先行研究】
■ 主観的ウェルビーイング(幸福度)の測り方
この研究では、人々の幸福度を測る「主観的ウェルビーイング」という概念が中心になります。OECD(2013)によれば、主観的ウェルビーイングは大きく2種類に分けられます:
▼ 1. 人生の評価(長期的な視点)
・生活満足度:全体としてどの程度生活に満足しているか(1〜5段階など)
・カントリルラダー:最高の人生を10、最低を0とした時、今の自分はどこにいるか
▼ 2. 感情の幸せ(短期的な視点)
・肯定的感情:喜び、楽しさなど
・否定的感情:悲しみ、憂鬱など
・優位な感情:肯定的と否定的のどちらが強いか
この研究では、前者の「人生の評価」の指標である生活満足度を使用しています。
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■ 「仕事の幸福」の重要性
ダニエル・カーネマン(ノーベル賞受賞心理学者)は、人生の評価を高めるために3つの要素が重要だと指摘しています:
・時間は究極の有限な資源であり、そのように扱うべき
・人生を悪くするものではなく、良くするものに注意を向ける
・継続して関心を持てる活動に時間を投資する
Clifton & Harter(2021)やRath & Harter(2010)も、「仕事の幸福」が人生の評価の決定要因として最も重要で基盤となるものだと述べています。仕事は多くの人にとって一日で最も長く時間を費やす活動だからです。
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■ 働くことの所得以外の効果
多くの研究が、働くことには給料をもらう以外にも重要な意味があることを実証しています。
▼ 失業から就業することの効果
Carroll(2007)、Clark(2001)、Frey & Stutzer(2000)、Winkelmann(2009)など多数の研究が、失業していた人が職を得ると、所得の増加による効果を取り除いても、生活満足度がさらに上昇することを示しています。
つまり、働くこと自体に、お金以外の価値があるということです。
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■ 「仕事の幸福」の理論的基盤
では、働くことの「所得以外の効果」とは何でしょうか?この論文では3つの主要な理論を紹介しています。
▼ 1. Ryff(1989)の心理的ウェルビーイング理論
心理的ウェルビーイングを構成する6つの領域のうち、特に仕事に関係するのは:
・自律性(Autonomy):自分で決定できる自由
・環境制御力(Environmental mastery):状況をコントロールできる感覚
・積極的な他者関係(Positive relations with others):良好な人間関係
・人格的成長(Personal growth):成長している実感
・人生における目的(Purpose in life):仕事の意義ややりがい
・自己受容(Self-acceptance):自分を受け入れられること
▼ 2. 自己決定理論(Reis et al., 2000; Thompson et al., 2006)
Reis et al.(2000)は、以下の3要素が主観的ウェルビーイングに寄与すると示しました:
・自律性(Autonomy)
・有能感(Competence):自分の強みを活かせること
・関係性(Relatedness):上司や同僚との良好な関係
Thompson et al.(2006)も、自律性、知覚コントロール(環境制御力と同様の意味)、上司や同僚の支援が重要だと示しています。
▼ 3. PERMA理論(Seligman et al., 2006)
マーティン・セリグマンが提唱したウェルビーイングを高める5つの要素:
・ポジティブ感情(Positive emotions):前向きな気持ち
・関与(Engagement):仕事への情熱や没頭
・関係性(Relationships):積極的な他者関係
・人生の意味(Meaning):仕事の意義ややりがい
・達成(Accomplishment):成果を出せること
【研究内容詳細】
■ なぜフィンランドと日本を比較するのか
▼ 幸福度の国際比較における位置づけ
World Happiness Report(世界幸福度レポート)という国際的な調査があります。これは毎年各国1000人にアンケートを実施し、カントリルラダー(最高の人生を10、最低を0とした時の自己評価)の平均値で国をランキングしています。
・フィンランド:2018年から2025年まで8年連続1位
・日本:先進国の中で最低水準の順位
この2カ国を比較することで、何が幸福度の違いを生んでいるのか、特に「働き方」の観点から明らかにできると考えられました。
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■ データの詳細
▼ 調査の実施方法
・実施時期:2019年3月
・実施国:フィンランドと日本
・調査会社:株式会社日経リサーチおよび提携調査会社の登録モニター
・サンプリング:両国とも全国の地理的な人口分布・男女比・年代比に合わせて回収
▼ 有効回答数
不正回答者を除いた有効回答数:
・フィンランド:4,392サンプル
・日本:10,249サンプル
▼ 分析対象
この研究では、以下の条件を満たす人だけを分析対象としました:
・アンケート回答時に仕事を有している人
(会社員、契約社員、派遣社員、パートタイム、経営者、公務員、専門職、自営業、第1次産業など)
・世帯所得について回答した人
最終的な分析サンプル数:
・フィンランド:2,101サンプル(男性1,051、女性1,050)
・日本:6,195サンプル(男性4,079、女性2,116)
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■ 基本統計量の比較
▼ 生活満足度(1〜5の5段階評価)
・フィンランド:男性3.95、女性3.85
・日本:男性3.21、女性3.24
→ フィンランドの方が平均的に約0.6〜0.7ポイント高い
▼ 就業時間(平日1日あたり、単位:時間)
・フィンランド:男性6.39時間、女性7.04時間
・日本:男性6.86時間、女性5.69時間
注意:フルタイム労働者とは限らないため、平均値は比較的短めです
▼ 通勤時間(平日1日あたり、単位:時間)
・フィンランド:男性1.02時間、女性0.86時間
・日本:男性1.00時間、女性0.85時間
→ 両国で大きな違いはない
▼ 課外活動の時間(平日1日あたり、単位:時間)
課外活動とは:サークル活動、地域活動、ソーシャルコミュニティ活動、ボランティア活動など
・フィンランド:男性1.36時間、女性0.90時間
・日本:男性0.26時間、女性0.23時間
→ フィンランドの方が平均的に長い時間を課外活動に充てている(日本の約4〜6倍)
▼ 職場の人間関係満足度(1〜5の5段階評価)
・フィンランド:男性3.89、女性4.00
・日本:男性3.34、女性3.51
→ フィンランドの方が平均的に約0.5ポイント高い
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■ 分析方法
▼ 一般化加法モデル(GAM)の使用
この研究では「一般化加法モデル」という統計手法を使っています。これは通常の回帰分析と違い、労働時間と生活満足度の関係を「柔軟な曲線」で表現できる方法です。
通常の回帰分析:直線的な関係を仮定(労働時間が1時間増えると幸福度が○ポイント変化、という形)
一般化加法モデル:曲線的な関係を表現可能(労働時間が短い時はプラス、長くなるとマイナス、といった複雑な関係)
▼ 分析式
生活満足度 = 定数 + 労働時間の影響(柔軟な曲線)+ その他の要因
「その他の要因」として以下をコントロール(影響を取り除く):
・通勤時間
・課外活動の時間
・職場の人間関係満足度
・税込み個人年収
・自宅周辺の自然満足度
・個人属性(年齢、結婚、未就学児の有無、学歴)
重要なポイント:健康状態は意図的にコントロール変数に含めていません。なぜなら、長時間労働が健康に影響し、それが幸福度に影響するという経路も「労働時間の効果」として捉えたいからです。
▼ 「所得以外の働くことの効果」を見る
この分析の最大の特徴は、所得や人間関係などの影響を取り除いた後の「労働時間の純粋な効果」を見ていることです。つまり、お金がもらえるから幸せ、という効果を除いた「働くこと自体の効果」を明らかにしています。