はぴテク相談室:宗教性は理想の幸福度を抑える
最近、幸せになりたいって思えば思うほど、なんか逆にしんどくなってる気がするんです。もっと幸せにならなきゃって焦ってしまって…これって私だけですか?
実はそれ、あなただけじゃないんです!「幸せを強く求めれば求めるほど、かえって不幸に感じやすくなる」という現象は、研究でも確認されていて、『幸福のパラドックス』と呼ばれているんですよ。幸せを重視する人ほど、否定的な感情を多く経験しやすいという報告もあるくらいです。
えっ、そうなんですか!じゃあ幸せを目指すこと自体がよくないってこと?
「幸せを目指すこと自体が悪い」というよりも、「理想の幸せのレベルを高く設定しすぎること」が影響しているようなんです。内田由紀子先生らが43か国・1万1千人以上を対象に行った大規模な調査では、『理想の幸福度』を高く設定しすぎない人のほうが、実際の幸福感が下がりにくい傾向があることが示されています。
理想の幸福度って、具体的にどういうことですか?
たとえば「理想的な人ってどのくらい幸せだと思いますか?」と聞いたとき、『もう完璧に満点の幸せじゃないとダメ!』と答えるのが「理想化が高い」状態です。この研究では、自分自身の人生満足度だけでなく、家族の幸せや、周りとの調和といった『つながりの幸せ(相互依存的幸福)』についても同じように調べました。4種類すべての幸福において、理想を上げすぎないことと、ある文化的な特徴との関連が見られたんです。
その文化的な特徴って何ですか?気になります!
それが『文化的な宗教性』だったんです。宗教的な文化が根付いている国ほど、人々が幸福の理想を高く設定しすぎない傾向があった、という結果です。『足るを知る』という感覚に近いですね。宗教的な価値観が、過度に幸せを追い求めることへのブレーキになっているのかもしれません。ただし、これは国レベルの傾向の話で、個人の宗教への信仰が直接幸福に影響するという話ではないので、注意が必要です。
なるほど。でも日本って宗教的なイメージあんまりないですよね。日本はどうだったんですか?
鋭いですね!実はこの研究の面白いところで、日本は例外的なパターンだったんです。宗教性は低いのに、幸福の理想化も低い、という傾向が見られたんです。本来なら『宗教性が低い=理想が高くなりやすい』はずなのに、日本はそうではなかった。日本独自の文化的な背景が働いているのかもしれませんね。
それは不思議ですね。じゃあ日本人は幸せへの期待値が低いから、幸せを感じにくいってこともあるんですかね…
そこも興味深い点で、同じく理想が低かったオーストラリアと比較すると対照的なんです。オーストラリアは理想は高くないけど実際の幸福度スコアは高い(世界ランク11位あたり)、一方で日本は理想も低いのに実際のスコアも低め(55位あたり)という結果が出ています。理想の高さだけが幸福度を決めているわけじゃなくて、社会的な環境や文化など、他のたくさんの要素も絡んでいることがわかります。
じゃあ、私が今感じている『幸せにならなきゃ』というプレッシャーは、どう考えればいいんでしょう?
この研究からヒントにできることとして、『理想の幸せのハードルをちょっと見直してみる』という視点があると思います。『完璧に幸せじゃないといけない』ではなく、今の自分や家族、周りの人たちとの関係の中で、『今これで十分かも』と感じられる瞬間に目を向けてみる。そういう『足るを知る感覚』が、幸福感にとって大事なヒントになりそうだということが、この研究から見えてきます。
幸せを追いかけすぎないことが大事なんですね。なんか少し楽になった気がします。
よかったです!幸せは「もっと、もっと」と追いかけるものじゃなくて、今ある状態をどう見るか、という視点も大切なんだと思います。自分自身の幸せだけでなく、家族や周りの人との調和やつながりの中にも幸福感を見出せる、そんなゆったりした視点を持ってみてくださいね。
■ 今日のまとめ
- 幸せを高く理想化しすぎることは、幸福感を下げる方向に働く可能性があることが、43か国・1万人超の大規模調査で示されています(ただし相関関係であり、因果関係ではありません)。
- 文化的な宗教性が高い国ほど、幸福の理想化が低い傾向がありましたが、日本は宗教性が低いにもかかわらず理想化も低いという例外的なパターンを示しました。
- 『足るを知る』感覚=今の状態をある程度十分と感じられる視点が、幸福感のあり方を考えるうえでのヒントになりそうです。
■ 出典・注意事項
- 【出典】Uchida, Y., et al. (約40名の共著). 'A Cross-cultural Study On the Association Between Societal Conditions and the Idealization of Happiness.' Applied Research in Quality of Life, 2025/7/5. https://link.springer.com/article/10.1007/s11482-025-10462-w
- 【注意事項①】本研究は相関研究です。『宗教性が高いから理想化が低くなる』という因果関係が証明されたわけではありません。
- 【注意事項②】分析は国レベルの集計データに基づくものが中心です。個人レベルで同じ傾向が当てはまるとは限りません。
- 【注意事項③】43か国が対象ですが、世界全体を代表しているわけではなく、対象国・サンプルの偏りが結果に影響している可能性があります。
- 【関連先行研究】Mauss et al. (2011), Gruber et al. (2011), Ford et al. (2014, 2015):幸福追求のパラドックスに関する研究群。Uchida et al. (2004):幸福の文化差に関する研究。
研究自体の紹介はこちら😊
宗教性は理想の幸福度を抑える
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2025-07-24-1753376814/