2025.06.27

はぴテク相談室:母性神話と幸福度

相談者

最近、育児のことで悩んでいて…。「子供のためにすべてを捧げなきゃいけない」って思うと、すごくしんどいんです。でも一方で、「母親ってそういうものでしょ」って自分でも思ってたりして。この気持ちをどう整理したらいいか分からなくて。

はぴテクさん
はぴテクさん

それは本当につらいですね。「全部やらなきゃ」と「でもしんどい」の間で板挟みになっている感じ、すごくよく分かります。実は最近、まさにそういった育児への考え方と、お母さんの幸福度の関係を調べた研究が出たんです。横浜市立大学のegami先生が2025年に発表した研究で、日本の専業主婦とパートタイムで働くお母さんたちを対象にしたものです。一緒に見ていきましょうか。

相談者

はい、ぜひ聞かせてください。どんなことが分かったんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

この研究では、育児への態度を5つの考え方に分けて調べました。①「子育ては本来お母さんの役割」という考え方、②「子育ては充実した経験だ」、③「子育ては厳しいものだ」、④「子供にたくさん刺激を与えるべき」、⑤「生活は全部子供中心にすべき」の5つです。で、それぞれが幸福感やストレスとどう関連しているかを調べたんですね。

相談者

なるほど。で、結果はどうだったんですか?私が感じている「子供中心にしなきゃ」とか「育児って大変」という気持ちはどうでしたか?

はぴテクさん
はぴテクさん

実はそこが重要なポイントで。「子育ては厳しいものだ」という考え方と、「生活を全部子供中心にすべき」という考え方、この2つが幸福感とマイナスの関連があったんです。つまり、この考え方が強いお母さんほど、幸福感が低く、ストレスが高い傾向があったということです。ただし、これは相関関係なので「この考え方のせいで不幸になる」と断言はできないんですが、関連はあったということです。

相談者

えっ、そうなんですね。「大変だって思っちゃいけないのかな」って逆に不安になりそうですが…。一方で、プラスに働いた考え方もあったんですよね?

はぴテクさん
はぴテクさん

そうなんです。「子育ては充実した経験だ」という考え方は幸福感とプラスの関連がありました。これは直感的に分かりやすいですよね。そして一番驚きだったのが、「子育ては本来お母さんの役割」という考え方も、幸福感にプラスの関連があったことです。ストレスが低く、自己効力感、つまり「自分はできる」という感覚が高い傾向があったんです。

相談者

えっ、それって意外ですね。「母親がやるのが当たり前」って考え方は、むしろ女性を縛るものじゃないの?って思っていたので…。

はぴテクさん
はぴテクさん

おっしゃる通り、欧米の研究では「子育ては母親の役割」という考え方はむしろ幸福感にマイナスに働くという結果が出ていたんです。でも今回の日本のお母さんたちのデータでは逆だった。研究者は、日本という性別による役割分担が比較的はっきりしている社会の中では、「育児は自分の役割だ」という考え方が誇りや目的意識、そして自己効力感につながる可能性があるのかもしれない、と考察しています。あくまで可能性の話ですが。

相談者

じゃあ、「子供中心にしなきゃ」と「母親らしくしなきゃ」って、一見似てるように思えても、心への影響が全然違うんですね。

はぴテクさん
はぴテクさん

まさにそこが面白いポイントなんです。「生活のすべてを子供中心に」という考え方は、自分自身を消してしまうような感覚に近いかもしれません。一方で「育児は自分の大切な役割だ」という感覚は、アイデンティティや誇りとつながる可能性があります。ただ、これはあくまで今回の調査対象、専業主婦とパートタイムのお母さんたちのデータからの話なので、すべての人に当てはまるわけではありません。

相談者

なるほど…。でも、「子育ては厳しいものだ」って思ってたら幸福感が低いとなると、「大変だって感じちゃいけないの?」って思えてきて、また別のプレッシャーになりそうで。

はぴテクさん
はぴテクさん

大切な視点ですね。「大変と感じること」自体が問題なのではなく、「育児とは本来このくらい大変で過酷なものだ」という信念として強く持っている状態が、ストレスと関連していた、ということなんです。ちょっと似たたとえで言うと、仕事を「仕事ってつらくて当然」と信じて始めるのと、「やりがいもある」と思って始めるのとでは、同じ大変さでも受け取り方が違いますよね。信念の枠組みが影響しているということかもしれません。

相談者

なんか、考え方って大事なんですね。じゃあ、どういう風に考えるのが一番いいんでしょう?

はぴテクさん
はぴテクさん

研究者もこう言っています。「多様な考え方があって、それぞれに良いところがある。でも、どれかを押しつけるのは良くない」と。育児観って本当に人それぞれで、その人の置かれた環境や文化によっても変わります。あなた自身が「これは自分にとって意味がある」と感じられる育児への向き合い方が、一番大切なんだと思います。「全部子供のためにしなきゃ」というプレッシャーから少し自由になって、「充実感を感じられる部分を見つける」方向に目を向けてみるのも、一つのヒントかもしれません。

相談者

なんか少し楽になりました。「こうあるべき」って思いすぎていたのかもしれないですね。ありがとうございました。

はぴテクさん
はぴテクさん

お気持ちを話してくださってありがとうございます。「こうあるべき」という枠が少し緩むだけで、ずいぶん楽になることってありますよね。この研究が教えてくれているのは、育児への考え方と幸福感は関連しているけれど、正解は一つじゃないということです。あなた自身のペースで、自分にとって意味を感じられる育て方を探していってください。

■ 今日のまとめ

  • 「子育ては大変なものだ」「生活は全部子供中心に」という考え方は、日本の専業主婦・パートタイムのお母さんたちの幸福感と**マイナスの関連**があることが研究で示されました(因果ではなく相関です)。
  • 意外なことに、「子育ては母親の役割だ」という考え方は、この研究対象では幸福感・自己効力感とプラスの関連がありました。ただし欧米の研究では逆の結果が出ており、文化や社会環境によって異なることが示唆されています。
  • 育児への考え方に「これが正解」はなく、多様な価値観それぞれに良い面があります。大切なのは、他者から押しつけられるのではなく、自分自身が充実感や意味を感じられる向き合い方を見つけることです。

■ 出典・注意事項

  • 【出典】Egami et al.(2025)「Effect of Intensive Parenting Attitude on Maternal Well-Being and Self-Efficacy Among Japanese Housewives and Part-Time Working Mothers」Psychology International, 2025/6/4. https://www.mdpi.com/2813-9844/7/2/47

  • 【注意事項①:相関について】本研究は質問票調査による相関研究です。「この考え方が幸福感を下げる(または上げる)」という因果関係は示されていません。

  • 【注意事項②:対象集団の限界】調査対象は日本の専業主婦(n=467)とパートタイム勤務の母親(n=148)に限定されています。フルタイム勤務の母親や父親、他の文化・国の結果には当てはまらない可能性があります。

  • 【注意事項③:文化差】「子育ては母親の役割」という考え方(本質主義)については、欧米の先行研究では幸福感にマイナスの関連が示されており、今回の日本での結果とは逆です。結果は社会・文化的背景に強く依存することが示唆されています。

投稿者によるコメント・補足(1件)
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研究自体の紹介はこちら😊
母性神話と幸福度
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2025-06-27-1751056078/

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