はぴテク相談室:世界中の生きとし生けるものの幸せを願うには。に関する一研究。
最近、世界で起きている色々なニュースを見ていると、なんだか人って自分のことや身近な人のことしか考えられないんじゃないかって思えてきて。もっと遠くの人や動物のことも大切にできたらいいなと思うんですけど、そもそも人間ってそういう生き物じゃないのかなって…。
その気持ち、すごくよく分かります。でも実は最近、とても興味深い研究が出たんですよ。ブラウン大学のジュリア・マーシャル先生たちがNature Human Behaviourという科学誌に発表した研究なんですが、「人は生まれつき自己中心的」という前提を揺さぶる内容なんです。
え、そうなんですか?どういうことですか?
この研究では5歳くらいから大人まで、幅広い年齢の人たちを調べました。そして分かったのが、5歳〜7歳くらいの小さな子どもたちは実は「道徳の輪」がとても広いんです。「道徳の輪」というのは、自分が幸せを願う範囲のこと。遠くに住む知らない人、動物、地球の裏側の子どもたち…そういった存在にも自然と思いやりを向ける傾向が、幼い子どもにはあるという結果が出たんです。
へえ!子どもの方が広いんですね。じゃあ大人になるとどうなるんですか?
8歳くらいを境に、その輪がだんだん小さくなっていく傾向が見られたんです。具体的には、年少の子どもは食べ物やおもちゃを遠くの子にも平等に分けたいと思うのに対し、年長になるほど近くにいる人を優先するようになる。また、見知らぬ人を助ける義務があると感じる気持ちも、子どもの方が大人より強かったりします。
それって、大人になると冷たくなっていくってこと…?なんだか悲しいですね。
研究者たちも「冷たくなる」というより、理由を3つ挙げています。一つ目は「社会的学習」――周りの大人から『家族や身近な人を優先するのが当たり前』という暗黙のルールを学んでいくこと。二つ目は「認知の発達」――リソース(時間やお金)には限りがあると分かってきて、優先順位をつけるようになること。三つ目は「文化的な価値観」――特にグループの仲間を大切にする文化では、身内への忠誠心が強まること。これらは「冷たさ」というより、社会の中で生きるための学習の結果とも言えます。
なるほど…。でも、それって西洋の国だけの話じゃないですよね?
良い点に気づきましたね!この研究は西洋・非西洋の両方の文化圏でデータを集めていて、どちらでも同じパターンが見られたんです。つまり、幼い頃の広い思いやりと、成長による輪の縮小は、特定の文化だけの現象ではないことが示されています。
じゃあ、一度小さくなった道徳の輪って、また広げることはできるんでしょうか?
研究者たちが指摘している面白い視点がここにあります。「道徳の輪を広げる」という考え方は、ゼロから積み上げるのではなく、もともと持っていた広い思いやりを『取り戻す』ことに近いかもしれない、というんです。私たちは最初から広い思いやりを持って生まれてきて、社会の中でそれを選択的に向けることを学ぶ。だとすれば、再び広げることも不可能ではないという含意があります。ただし、これはあくまで研究者たちの考察であって、「どうすれば広げられるか」という方法については、この研究では直接検証されていない点はご注意を。
子どもたちを見ていると、確かに動物にも虫にもすごく優しかったりしますよね。あれって本物だったんだ。
そうなんですよ!研究の中でも、幼い子どもは動物への危害を年上の子どもより厳しく評価する傾向があったことが示されています。農業のように「社会的に当たり前」とされる場面でも、幼い子どもはより敏感に反応する。あの無邪気に見える感受性には、ちゃんとした道徳的な広がりが裏付けられていたわけです。
なんだか、広い思いやりを持つことって、頑張って手に入れるものじゃなくて、元々あるものに気づき直すことなのかもしれませんね。
まさにそのとおりです。研究者たちもこの発見をもとに、「道徳教育は偏見を克服させるだけでなく、子どもたちがすでに持っている広い思いやりを維持し、育てることを目指すべきかもしれない」と述べています。私たちが遠くの誰かや動物のことを気にかけるとき、それはとても自然なことで、むしろ人間の原点に近いのかもしれません。
今日話を聞いて、なんだか自分の中のそういう気持ちを大切にしていいんだと思えてきました。ありがとうございます。
その気持ち、ぜひ大切にしてください。遠くの誰かや動物のことを気にかけるあなたの感覚は、研究が示す意味でも、とても人間らしい、自然なことですから。
■ 今日のまとめ
- 5〜7歳の子どもは、知らない人・遠くの人・動物にも広く思いやりを向ける傾向があり、道徳の輪は成長とともに小さくなる傾向が研究で示されました。
- この縮小は、社会的学習・認知発達・文化的価値観によるものと研究者たちは考えており、西洋・非西洋の両方で同様のパターンが見られました。
- 「道徳の輪を広げる」ことは、ゼロから積み上げるのではなく、幼い頃から持っていた広い思いやりを維持・取り戻すことに近い可能性があると研究者たちは示唆しています(ただしこれは考察の域です)。
■ 出典・注意事項
- Julia Marshall, Matti Wilks, Lucius Caviola & Karri Neldner, 'When development constricts our moral circle', Nature Human Behaviour, 2025年5月28日掲載。https://www.nature.com/articles/s41562-025-02212-7
- Lucius Caviola, 'When Development Constricts Our Moral Circle'(著者ブログ), Outpaced Substack, 2025年6月1日。https://outpaced.substack.com/p/when-development-constricts-our-moral
- 【注意事項】本研究は発達的な傾向(相関・パターン)を示すものであり、「成長が道徳の輪を狭める原因」という因果関係を直接証明したものではありません。
- 【注意事項】道徳の輪が縮小する理由(社会的学習・認知発達・文化的価値観)については研究者による仮説・考察の段階であり、確定的な結論ではないと論文著者自身も述べています。
- 【注意事項】「どうすれば道徳の輪を広げ直せるか」という具体的な方法については、本研究では検証されていません。
研究自体の紹介はこちら😊
世界中の生きとし生けるものの幸せを願うには。に関する一研究。
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2025-06-01-1748808847/