はぴテク相談室:ウェルビーイングを陽に考慮したシステムデザイン方法論
最近、職場で新しいサービスや仕組みを作る担当になったんですが、『ウェルビーイングを考慮したデザイン』ってよく聞くものの、実際どうすればいいのか全然わからなくて…。なんか抽象的すぎて、どこから手をつけたらいいのか途方に暮れています。
それは大事な悩みですね!実は慶應義塾大学の前野隆司先生たちが、まさにそのモヤモヤを解消するための方法論を論文にまとめてくれているんです。タイトルは「ウェルビーイングを陽に考慮したシステムデザイン方法論」。2021年にシステムデザイン学会誌に掲載されたものです。
『陽に考慮する』って、どういう意味ですか?なんか難しそうで…
いい質問!『陽に(ように)』というのは『明示的に・意識して・はっきりと』という意味です。つまり、ウェルビーイングのことを『なんとなく良いものを作ろう』と暗にぼんやり考えるのではなく、『これがウェルビーイングの要素だ』と明確に定義して、それを意識しながらデザインしましょう、ということなんです。
なるほど!じゃあ、ウェルビーイングの要素って具体的にどんなものがあるんですか?
この論文では、ウェルビーイングの構成要素をまず整理するところからスタートします。幸せ・健康・福祉といった観点で、何が人の『良い状態』を作るのかを要素に分解するんです。それらをリスト化することで、『この施策はどの要素に効いているか?』を可視化できるようになります。
要素をリスト化するんですね。でも、そこからどうやってアイデアを出すんですか?
論文では、『マトリックス法』と『ブレーンストーミング』という手法が紹介されています。マトリックス法というのは、縦軸にウェルビーイングの構成要素、横軸にデザインの対象(たとえばサービスの機能や職場の仕組みなど)を並べた表を作って、それぞれの交点で『ここにアイデアが出せないか?』と考えていく方法です。
表を埋めていく感じですね!それはやりやすそう。ブレーンストーミングと組み合わせるんですか?
そうです。マトリックスで『考えるべきポイント』を明確にしてから、チームでブレーンストーミングすると、ウェルビーイングの観点が抜け落ちにくくなるんです。『なんとなく良さそうなアイデア』ではなく、『どの幸せの要素を満たすためのアイデアか』が明確になるのが大きな違いですね。
これって、サービス開発だけじゃなくて、社内の施策とかにも使えますか?
それが、この方法論のすごいところで!論文では、この手法の対象を『ものづくり(製品設計)』だけじゃなく、『ことづくり(サービス)』『組織づくり(職場の仕組み)』『街づくり』『人づくり(教育)』『政策づくり』まで幅広く含むと明示しています。つまり、職場の新しい施策づくりにもそのまま使える考え方なんです。
こんなに幅広く使えるんですね!でも、どんな手法を使ってもいいんですか?特定のやり方に縛られますか?
論文にはこんな一文があります。『ウェルビーイングの構成要素を陽に考慮しながら何らかのシステムを新たにデザインするならば、どんな手法を用いても、本研究が目指すウェルビーイング中心デザインに属すると考えられる』。つまり、手法は自由でいいんです。大事なのは『ウェルビーイングの要素を明示的に意識しているかどうか』という姿勢そのものです。
それは気が楽になりました!まず自分たちの施策でウェルビーイングの要素を書き出してみて、マトリックスを作ってみます。最初の一歩としてはそれでいいですかね?
まさにそれがベストな一歩だと思います!『幸せ・健康・福祉』にとって大切な要素を書き出して、それと今考えている施策を表で照らし合わせてみる。そこから『この要素が全然カバーできていない』『ここは強化できそう』という気づきが生まれますよ。アイデアを出す前に『物差し』を作るイメージです。
■ 今日のまとめ
- ウェルビーイングを『陽に(明示的に)』考慮することが大切。なんとなくではなく、構成要素を言語化・可視化してからデザインを始めましょう。
- マトリックス法(ウェルビーイング要素×デザイン対象の表)やブレーンストーミングを組み合わせることで、抜け漏れの少いアイデア出しができます。
- この方法論は製品・サービス・組織施策・教育・政策など幅広い領域に応用可能。特定の手法に縛られず、『意識して考慮する姿勢』が核心です。
■ 出典・注意事項
- 前野隆司・前野マドカ・保井俊之「ウェルビーイングを陽に考慮したシステムデザイン方法論―第1報:設計論の基本概念とその適用領域―」システムデザイン学会誌, 2021. https://takashimaeno.com/wp-content/uploads/2025/04/2021_systemdesign_takashi_madoka_yasui.pdf
- 【注意事項】本論文は方法論の提案(概念設計)を主な内容としており、手法の効果について実験的な因果関係を検証したものではありません。紹介されている適用事例は手法の可能性を示すものであり、あらゆる組織・文脈で同様の結果が得られることを保証するものではありません。
- 【注意事項】ウェルビーイングの構成要素の定義は研究者・文化・文脈によって異なる場合があります。本手法を実践する際は、自組織や対象集団に合わせて要素の定義を検討することが推奨されます。
研究自体の紹介はこちら😊
ウェルビーイングを陽に考慮したシステムデザイン方法論
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2025-04-29-1745970681/