はぴテク相談室:人事プロフェッショナルは人事管理に関わる概念をどこまで知っており,どこまで使って
最近、会社の人事担当になったんですが、上司から『心理的資本を活用しよう』って言われても、正直ピンとこなくて…。人事って専門用語が多すぎて、何を勉強すればいいか全然わからないんです。
それは戸惑いますよね!実は、その「ピンとこない」という感覚、あなただけじゃないんです。神戸大学の服部先生らが2025年に発表した研究で、230名の人事プロフェッショナルを対象に「どんな人事用語を知っていて、実際に使っているか」を調べたんです。その結果がとても面白くて、『心理的資本』は人事のプロでも知らない人が多く、しかも活用もされていない概念の一つに分類されたんですよ。
え、人事のプロでも知らないんですか!それは少し安心しました(笑)。でも、心理的資本って何なんでしょう?
心理的資本は「HERO」という頭文字で覚えられることが多くて、Hope(希望)・Efficacy(自己効力感)・Resilience(回復力)・Optimism(楽観性)の4つを指します。ウェルビーイングとも関連が深い概念なんですね。ただ、この研究では「知られていない=使われていない」という状況が実証されたわけです。名前を聞いたことがないと、当然使いようもないですよね。
なるほど。じゃあ逆に、人事の人たちがよく知っていてちゃんと使っている概念って何があるんですか?
この研究では「知られていて、活用もされている」グループに、パーパス経営やMBO(目標管理)、リアルタイムフィードバックなどが入っていました。ウェルビーイング的な観点では、パーパス経営―つまり会社の存在意義や目的を大切にする経営―は現場でも意識されているようです。一方で「知られているのに使われていない」概念として心理的エンパワーメント(自分の仕事に意味や裁量を感じること)があって、これも面白い発見でした。
知ってるのに使われていない、というのが不思議ですね。なんでそういうことが起きるんでしょう?
この研究では直接の原因まではわかっていないのですが、「知っている」と「実際に職場で使う」の間には大きなギャップがあることが示されました。概念を言葉として知っていても、どう実践に落とし込むかイメージできないと動けない、ということかもしれません。これはあくまで調査データから見えた相関的なパターンで、因果関係まではこの研究では言えないんですが、示唆としては面白いですよね。
確かに…。では、そういう知識ってどうやって身につけていけばいいんでしょう?
この研究では、概念の獲得ルートとして人事キャリアの年数・大学院卒・ビジネス系メーリングリストへの登録・オピニオンリーダーの存在が重要だと示されました。特に面白いのは「オピニオンリーダー」、つまり周りに知識を積極的に広めてくれる人がいるかどうかが、知識の普及に関わっていたという点です。あなたの上司が『心理的資本を活用しよう』と言っているなら、その上司がまさにそういう役割を担っている可能性がありますよ!
あ、上司がオピニオンリーダーなのかも(笑)。でも、知識を学んでも「現場でちゃんと使えているか」の判断って難しくないですか?
鋭いですね!この研究では「しろうと理論」という概念も出てきます。これは、経験や勘から自然に形成された自分なりの人事観のことです。それが学術的なエビデンスと一致しているかどうかを調べたら、マネジャー職位・大企業所属・人事キャリア年数が関わっていることがわかりました。つまり、経験を積むほど直感と科学的知見が近づいていく傾向があるということです。ただ、これも相関のデータなので、経験を積めば必ずそうなるとは言い切れません。
経験と学びを重ねていくことが大事なんですね。あと、さっき出てきた「ピアボーナス」って何ですか?初めて聞きました。
ピアボーナスは、同僚同士が互いの貢献を評価して小さな報酬を贈り合う仕組みのことです。チームワークや感謝の文化を育てる効果が期待されていて、ウェルビーイングとも関連します。ただ、この研究では「知られていない、活用もされていない」グループに入っていて、日本の人事現場ではまだほとんど浸透していないことが示されました。新しい人事担当のあなたが知っておくと、ちょっと差がつくかもしれませんよ!
面白いですね!知らなかったことがいっぱいあって、勉強になりました。人事の仕事、もう少し前向きに取り組めそうです。
それは嬉しいです!この研究が教えてくれているのは、「人事のプロでも知らない概念はたくさんある」ということ。だから焦らず、キャリアを積みながら少しずつ学んでいけば大丈夫です。そして周りのオピニオンリーダーや勉強できるメディアを上手に活用することも、知識を広げるヒントになりそうですね。
■ 今日のまとめ
- 人事プロフェッショナル230名を対象にした研究で、『心理的資本(HERO)』や『ピアボーナス』はウェルビーイングに関連しながらも、人事の現場で「知られていない・使われていない」概念であることが示されました。
- 一方、『パーパス経営』は「知られていて活用もされている」概念として位置づけられ、『心理的エンパワーメント』は知られているのに活用されないギャップがあることがわかりました。
- 知識の獲得には人事キャリアの年数・大学院卒・オピニオンリーダーの存在などが関わっており、経験と学びを重ねることが自分の直感と科学的知見を近づけていく可能性があります(ただし因果関係は不明)。
■ 出典・注意事項
- 岩本慧悟・服部泰宏・伊達洋駆・江夏幾多郎「人事プロフェッショナルは人事管理に関わる概念をどこまで知っており,どこまで使っているのか?」『組織科学』58巻2号, 2025年2月. https://www.jstage.jst.go.jp/article/soshikikagaku/58/2/58_20250207-3/_article/-char/ja
- 【注意事項】本研究は230名の人事プロフェッショナルへの調査に基づく相関研究であり、概念の認知・活用と成果の間の因果関係を示すものではありません。
- 【注意事項】調査対象は日本の人事プロフェッショナルに限られており、他の職種・国・業界への一般化には限界があります。
- 【注意事項】認知度・活用度は自己報告による測定であり、実際の行動と異なる可能性があります。
研究自体の紹介はこちら😊
人事プロフェッショナルは人事管理に関わる概念をどこまで知っており,どこまで使って
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2025-02-26-1740607507/