2024.12.11

はぴテク相談室:仏教的ウェルビーイング学と科学的ウェルビーイング学の響創の可能性

相談者

最近、自分の幸せって何だろうってすごく考えるんです。科学的に「これをすれば幸せになれる」みたいな情報はよく見かけるんですが、なんか表面的な感じがして…もっと深いところで納得できるものが欲しいんですよね。

はぴテクさん
はぴテクさん

その感覚、すごく大事だと思います!実は、武蔵野大学しあわせ研究所の前野隆司先生が2024年に発表した論文で、まさにそのテーマを深く掘り下げているんです。「科学的なウェルビーイング研究」と「仏教の幸福観」を組み合わせることで、より深い幸せの理解に近づけるんじゃないか、という内容なんですよ。

相談者

仏教と科学が組み合わさるんですか?なんかイメージがつかないですね。仏教ってお寺とかお葬式のイメージで…

はぴテクさん
はぴテクさん

よくあるイメージですよね(笑)。でも仏教には「三法印(さんぼういん)」という根本的な考え方があって、①すべては変わり続ける(諸行無常)、②固定した「自分」というものはない(諸法非我)、③すべての執着が苦しみのもと(一切皆苦)という3つの真理を説いています。この論文では、これらが現代の幸福研究ともとても共鳴する部分があると指摘しているんです。

相談者

「すべてが苦しみのもと」って、なんか暗くないですか…?幸せの話なのに。

はぴテクさん
はぴテクさん

鋭いです!でもここがポイントで、「苦しみがある」と認めることが出発点で、そこから解放された状態を「涅槃寂静(ねはんじゃくじょう)」と呼びます。執着を手放した穏やかな幸せの境地ですね。科学的なウェルビーイング研究でも、物やお金への過度な執着が幸福感を下げる傾向があることが示されていて、この点がとても似ているとこの論文では述べられています。

相談者

なるほど…。じゃあ仏教的な幸せって、具体的にどういうものなんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

仏教の幸福観の核にあるのが「慈悲(じひ)」です。自分だけでなく、他のすべての存在が幸せであってほしいと願う心のことですね。特に大乗仏教では「自分が幸せになるためだけでなく、すべての生き物の幸せのために」という考え方が強調されます。ブッダが説いた「こよなき幸せ」も、慈悲に基づいた生き方の中にあるとされています。

相談者

他者の幸せを願うことが自分の幸せにもつながる、ということですか?それって科学的にも言えることなんでしょうか?

はぴテクさん
はぴテクさん

科学的なウェルビーイング研究でも、他者への親切や思いやりが主観的な幸福感と関連しているという研究結果は複数あります。この論文でも、仏教の「慈悲」と科学の「愛・つながり」の研究は重なる部分が多いと指摘しています。ただ、因果関係(どちらが原因でどちらが結果か)はまだ研究途上の部分もありますので、「必ずこうなる」とは言えないですけどね。

相談者

そうなんですね。じゃあ「科学」と「仏教」は、どこか違う点もあるんですか?

はぴテクさん
はぴテクさん

はい、論文では違いもきちんと整理されています。科学は「データや実験から積み上げて結論を出す(帰納的)」アプローチなのに対して、仏教は「真理から演繹して人の生き方を導く」アプローチです。また、仏教には「凡夫(ぼんぷ)の自覚」——自分は完璧じゃないと知ること——と「他力」——自分の力だけに頼らず大きなものに委ねること——という考え方があって、これは科学的ウェルビーイングではあまり扱われていない視点だとされています。

相談者

「自分は完璧じゃないと知ること」が幸せにつながるというのは、なんか意外ですね。

はぴテクさん
はぴテクさん

直感に反しますよね。でも「自分は何でもできる、しなければならない」というプレッシャーから解放されることで、かえって楽になるという感覚、経験ありませんか?仏教はその「力を抜く」部分を2500年かけて体系化してきたとも言えます。この論文では、そういった仏教の知恵を科学が取り込み、お互いに「響き合いながら創る(響創)」ことで、より豊かな幸福の理解が生まれる可能性を述べているんです。

相談者

「響創」って素敵な言葉ですね。じゃあ私が日常でできることって、何かありますか?

はぴテクさん
はぴテクさん

この論文が示す方向性からすると、まず「すべては変わる、執着しすぎない」という視点を日常に持ち込むこと。次に、自分だけでなく周りの人の幸せも意識してみること。そして、「自分は不完全でいい」と許可を自分に出してみること。この3つは、仏教的な知恵と科学的なウェルビーイングの研究が重なり合う部分として論文の中で語られているエッセンスです。一気にやろうとせず、「感性を育てる」感覚で少しずつが良いと思いますよ。

相談者

なんか、幸せって競争じゃないんだなって気がしてきました。もうちょっとゆっくり、自分と向き合ってみようと思います。ありがとうございました!

はぴテクさん
はぴテクさん

その気づき、すごく大切だと思います。この論文では、農耕革命・産業革命に次ぐ「ウェルビーイング革命」とも言えるような人類史の大きな転換を、仏教と科学の響創が先導する可能性まで述べています。あなたが「幸せってなんだろう」と立ち止まって考えることも、その大きな流れの一部かもしれませんね。

■ 今日のまとめ

  • 仏教の「諸行無常・諸法非我・一切皆苦」という三法印は、執着を手放すことで穏やかな幸せ(涅槃寂静)に至るという考え方であり、科学的なウェルビーイング研究の知見と重なる部分がある。
  • 仏教の「慈悲」(すべての存在の幸せを願う心)は、科学的研究における他者へのつながりや思いやりと関連する幸福感の知見と共鳴する。
  • 科学(データからの帰納)と仏教(真理からの演繹)はアプローチが異なるが、互いに「響き合いながら創る(響創)」ことで、より豊かな幸福の理解が生まれる可能性が論じられている。

■ 出典・注意事項

  • 前野隆司「仏教的ウェルビーイング学と科学的ウェルビーイング学の響創の可能性」武蔵野大学しあわせ研究所紀要 第7号, pp.1-24, 2024年10月 https://www.musashino-u.ac.jp/research/武蔵野大学しあわせ研究所紀要第7号_pp.1-24_前野様.pdf

  • 【注意事項】本稿は理論的・思想的考察を中心とした論考であり、仏教的ウェルビーイングと科学的ウェルビーイングの統合によって特定の効果が生じるという因果関係を実証したものではありません。

  • 【注意事項】科学的ウェルビーイング研究との比較・類似点の指摘は、あくまで概念的・思想的な観点からのものであり、個々の研究知見の直接的な検証を行ったものではありません。

  • 【注意事項】仏教には多様な宗派・解釈があり、本論文が述べる仏教観がすべての仏教の立場を代表するものではない点にご留意ください。

投稿者によるコメント・補足(1件)
コメント 1

研究自体の紹介はこちら😊
仏教的ウェルビーイング学と科学的ウェルビーイング学の響創の可能性
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2024-12-11-1733954402/

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