はぴテク相談室:達成目標と幸福感
最近、仕事でもっと成果を出したいと思っているんですが、目標の立て方がよくわからなくて。なんとなく「失敗したくない」という気持ちが強くて、それがプレッシャーになっている気がします。
それは多くの人が感じることですね。実は、「どんな気持ちで目標を立てるか」が幸福感に関係しているという研究があるんです。日本・アメリカ・オランダの3カ国を比べた2024年の研究なんですが、目標の種類によって幸福度との関係が変わってくることがわかっています。少し整理してみましょうか?
ぜひ教えてください!目標の「種類」ってどういうことですか?
目標には大きく2つの軸があります。まず「方向性」の軸。「こうなりたい!」という前向きな目標を接近型、「失敗したくない、これを避けたい」という防衛的な目標を回避型と呼びます。もう一つは「基準」の軸で、自分自身の成長を基準にする習熟型と、他の人と比べて評価される遂行型があります。この2つを組み合わせると4種類になるんですよ。
なるほど。じゃあ「失敗したくない」というのは回避型ですね。これって幸福感に良くないんですか?
日本のデータで見ると、「周りから低い評価を受けたくない」という遂行回避型(他者比較+失敗回避)の目標は、幸福度とマイナスの相関があることがわかっています。つまり、この種の目標を持ちやすい人ほど幸福感が低い傾向があったんですね。一方で、「今持っているスキルを失いたくない」という習熟回避型(自分基準+失敗回避)は、日本では幸福度との相関がほぼなかったんです。
じゃあ「人に負けたくない」という気持ちでプレッシャーを感じているのは、幸せにとってあまり良くないパターンなんですね…。では、どんな目標の立て方が幸福感と結びつきやすいんでしょう?
研究によると、日本では「こうなりたい!」という接近型の目標全般が幸福度と正の相関がありました。面白いのは、自分の成長を基準にした「もっとスキルアップしたい(習熟接近型)」だけでなく、「営業成績でトップになりたい」のような他者と比べる「遂行接近型」でも、日本とアメリカでは幸福度との正の相関が見られたんです。
えっ、競争心を持つ目標でも幸せにつながるんですか?それはちょっと意外です。
研究者たちも注目しているポイントです。日本は競争心の指標(ホフステッドの文化指標)が95点と非常に高い国なので、競争的な目標が必ずしも幸福感を損なわない文化的な背景があるのかもしれません。ただしこれはあくまで相関の話なので、「競争目標を持てば幸せになる」という因果関係が証明されたわけではない点は大事なポイントです。
なるほど、文化によっても違うんですね。他の国と比べるとどうなんですか?
面白い違いがあります。たとえばオランダは競争よりも協調を重視する文化で、「他者比較で上を目指す(遂行接近型)」目標は幸福度と相関がありませんでした。逆にアメリカでは、「今持っているスキルを失いたくない(習熟回避型)」目標が幸福度と正の相関があったんです。日本とオランダにはその相関がなかった。文化的な価値観によって、同じ目標でも幸福感との関係が変わってくるんですね。
じゃあ私も、「失敗したくない」という気持ちより「こうなりたい!」という前向きな目標に意識を向けた方がいいかもしれませんね。
この研究の結果から見ると、日本では「前向きな接近型の目標」を持っている人ほど幸福感が高い傾向がありました。「失敗を避けたい」という気持ちを完全に消す必要はありませんが、意識の重心を「何を得たいか・どうなりたいか」に置いてみるのは一つのヒントになるかもしれません。
具体的にどう意識を変えればいいか、少しイメージできてきました。「〇〇を失敗したくない」じゃなくて「〇〇ができるようになりたい」って言い換えてみるところから始めてみます!
いいですね!「失敗を避けたい」を「成長したい・達成したい」という言葉に置き換えてみるだけでも、目標への向き合い方が少し変わってくるかもしれません。この研究はあくまで相関関係の話ですが、日本という文化の中で生きている私たちにとって、参考になる視点だと思いますよ。
■ 今日のまとめ
- 「こうなりたい!」という前向きな接近型の目標は、日本では幸福感と正の相関がある傾向が見られました(他者比較の有無にかかわらず)。
- 「失敗したくない・低く評価されたくない」という他者比較の回避型目標は、日本では幸福感と負の相関があることがわかりました。
- 目標と幸福感の関係は文化によって異なります。日本・アメリカ・オランダで同じパターンが当てはまるわけではありません。
■ 出典・注意事項
- 【出典】Thriving and Striving Around the World: A Cross-Cultural Examination of the Relationship Between Achievement Goals and Flourishing / Journal of Happiness Studies, 2024年11月25日 / https://link.springer.com/article/10.1007/s10902-024-00828-6
- 【注意事項①】本研究は相関研究です。「前向きな目標を持てば幸せになれる」という因果関係を証明したものではありません。
- 【注意事項②】各国の成人919名のサンプルを使用した研究です。年齢層・職業・個人の状況などによって結果が異なる可能性があります。
- 【注意事項③】幸福感(繁栄)は感情的・社会的・心理的な複数の側面から測定されており、単純な「幸せかどうか」とは異なる指標です。
研究自体の紹介はこちら😊
達成目標と幸福感
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2024-12-04-1733347087/