はぴテク相談室:組織論のポジティブアプローチ
最近、職場の雰囲気がどんよりしていて、チーム全体のモチベーションが上がらないんです。上司に相談しても『もっと前向きに』って言われるだけで、具体的にどうすればいいのか分からなくて…。
それは辛いですね。「前向きに」って言われても、どうすればいいか分からないですよね。実は、組織をポジティブにしていくことを学問として研究している分野があるんですよ。今日は、その研究の整理をした西川耕平先生の論文をもとにお話ししてみますね。
組織をポジティブにする学問、ですか?なんか壮大ですね。でも、私みたいな一般社員にも関係ある話なんでしょうか?
はい、むしろ個人レベルから組織レベルまでをつなげて考えるのがその研究の特徴なんです。「Positive Organizational Scholarship(ポジティブ組織研究)」と呼ばれる考え方で、個人のポジティブな状態と、組織がうまく機能することには関わりがあるとされています。たとえば、チームの中で『筋の通った勇気ある行動』が起きやすい環境かどうか、というのも研究テーマのひとつなんです。
『筋の通った勇気ある行動』って、具体的にはどういうことですか?
たとえば、みんなが見て見ぬふりをしている問題に対して、誰かが「これはおかしい」と声を上げるような行動です。それが組織の中で起こりやすいかどうか、というのが組織のポジティブさと関わっているということですね。また、この研究では『質の高い人間関係(High-Quality Connections)』も重要な要素として挙げられています。
質の高い人間関係、ですか。うちのチームはどうも表面的なやり取りが多くて、本音で話せる感じじゃないんです…。
それは職場では珍しくない悩みだと思います。研究では、ポジティブな感情には『上向きのらせん(Upward Spirals)』という性質があるとされています。ポジティブな感情や関係が少しずつ積み重なると、それがまた次のポジティブを生みやすくなる、という考え方です。逆に言うと、小さなポジティブな出来事を大切にすることが、じわじわとチーム全体に影響する可能性があるということですね。
なるほど、小さなことからでもいいんですね。でも、雰囲気を変えるのってリーダーの役割じゃないですか?私には難しい気がして…。
確かに、この研究では『Authentic Leadership(オーセンティック・リーダーシップ)』、つまり自分らしさを大切にした誠実なリーダーシップが、個人がポジティブになりやすい組織の環境づくりに関わっていると整理されています。ただ同時に、個人レベルのポジティブな状態も組織に影響するという視点もあるんです。
じゃあ、リーダーじゃない私でも、何かできることはあるんでしょうか?
この研究では『Positive Deviance(ポジティブな逸脱)』という概念も紹介されています。これは、同じ環境にいながら、なぜか特別にうまくやっている人や小集団がいる、という現象のことです。つまり、組織全体が変わらなくても、個人や小さなグループが少し違う行動をとることで、まわりに良い影響を与える可能性があるということです。
『ポジティブな逸脱』って面白い言葉ですね。悪い意味じゃなくて、いい意味でちょっと違う、ってことか。
まさにそうです。この研究はもともと、組織論という少し抽象的な学問の枠組みを整理したものなので、「こうすれば必ずこうなる」という話ではありません。ただ、組織がポジティブであろうとする背景には、徳(virtuousness)や誠実さ、勇気ある行動といった価値観が、古くから東西の組織を問わず大切にされてきた、という視点は面白いと思いませんか?
確かに、うちの会社にも経営理念とかあるんですけど、普段全然意識してなかったです。それがポジティブな組織づくりと関係しているんですね。
そうなんです。研究でも、経営理念や信条に込められたポジティブな言葉が、組織の在り方と切り離せないと整理されています。日々の小さな関わり方を少し変えてみること、そして自分自身が誠実に行動することが、チームの雰囲気に関わっている可能性はありますよね。すぐに大きな変化は期待できなくても、『上向きのらせん』のように、積み重なっていくかもしれません。
■ 今日のまとめ
- ポジティブな感情や関係には『上向きのらせん(Upward Spirals)』の性質があるとされており、小さなポジティブな出来事の積み重ねがチーム全体に関わる可能性があります。
- 同じ環境でもうまくやっている人や集団がいる『ポジティブな逸脱(Positive Deviance)』という現象があり、組織全体が変わらなくても個人や小集団の行動が影響を与える可能性があります。
- 誠実なリーダーシップ(Authentic Leadership)や質の高い人間関係(High-Quality Connections)が、個人がポジティブになりやすい組織の環境と関わりがあると整理されています。
■ 出典・注意事項
- 出典:西川耕平「組織論のポジティブアプローチ」甲南経営研究, 2008, 甲南大学リポジトリ(https://konan-u.repo.nii.ac.jp/record/1980/files/K01848.pdf)
- 注意事項①:本論文は新たな実証研究ではなく、既存の研究を整理・体系化したレビュー論文です。紹介されている知見には相関関係を示すものが含まれており、因果関係を直接示すものではありません。
- 注意事項②:紹介されている研究は主に欧米の組織・企業を対象としたものが多く、日本の職場環境にそのまま当てはまるとは限りません。
- 注意事項③:『ポジティブ組織研究(POS)』はまだ発展途上の分野であり、本論文(2008年)以降も研究が進んでいます。
研究自体の紹介はこちら😊
組織論のポジティブアプローチ
https://wellbeing-archive.pages.dev/posts/2024-11-25-1732577024/